なかなか書けない!? 「遺言書」を実際に書く方法

故人が遺言書を残していなかったり、その内容が不十分であることが原因で起こる相続トラブルが多数発生しています。本連載ではそのようなトラブルを避けるため、残された家族に正しく意思を伝えるための遺言書の書き方を、具体例を挙げて紹介します。

自分や家族の人生を見つめ直すための機会に

以前の連載「相続争いを防ぐための「遺言書」のつくり方」、の中でも触れてきたように、故人の生前の意思を尊重する基本理念と優先原則の内容をよく理解して適切に活用すれば、遺言書は相続開始後のトラブルを避けるうえで最も有効な対策になることは間違いありません。

 

ただ、残念なことに、これまで日本人はあまり遺言書を書く習慣がなかったこともあり、注目されている割にはいま一つ定着していないというのが実情です。近年、「遺言ビジネス」と呼ばれる金融機関などのサービス業務が好調と聞きますが、まだまだ自分とは無関係なものとして、遠くから眺めている方も多いのではないでしょうか。

 

実際、遺言書は難しくて、簡単に書けないという声をよく耳にします。

 

いざ始めてみようと決心しても、所有財産の調査が面倒でつい先延ばしにしてしまったり、変な孤独感に襲われて中断したままになっていたり、緊張してよそ行きの気分になってしまい筆が進まないなど、いろいろ理由はあるようです。中には、どう考えても家族が争うような問題が思い浮かばないから書けないという方もいます。

 

遺言書を書くのは難しいという方には、思い切って発想を変えてみることをお勧めします。遺言書は自分自身と家族がテーマとなりますので、それを文章化するということは、改めて冷静に自分や家族の人生を見つめ直すための機会を、自らに与えることです。

 

これはめったにないチャンスです。これを積極的に生かすために、マイナス思考でくよくよ悩まず、「遺言書を書くということは、自身の遺作となる『感動シナリオ』を執筆すること」と考えてみてはいかがでしょうか。

 

ある方の教えですが、「思い詰めるのではなく、思い切ること。それが迷いから抜け出し、壁に立ち向かう方法」と、改めて考えてみてはいかがでしょう。

 

恐らく、真剣に考えている遺言書が「感動シナリオ」とは不謹慎、と感じる方もいらっしゃると思います。しかし、遺言書を書くきっかけとして、まずイメージをつかむことが大事です。家族といえど、性格や価値観はそれぞれ違います。自分はどう生きてきたか、家族はどう生きているのか、将来どう生きようとしているのか、一人一人の顔を思い浮かべながら具体的にイメージしてみるのです。そのうえで、自分は家族に何を望んでいるのか、何をしてやるのがベストなのかをシナリオとして組み立てていきます。

 

もちろん、最終的には法律の形式にそった遺言書を作成しなければなりませんが、単にそれだけでは、読む側が最後の願いとするメッセージから全く愛情を感じとれず、むしろ他人行儀と反発してしまうかもしれません。そうならないためにも、いろいろと思いをめぐらし、これはというシナリオを考えてみてください。

「自問自答」をすることで新たな発見がある

そのためにお勧めしたいのが、セルフインタビューです。これは、自分自身に問いかけ、自分自身で答えることです。長い人生の中で自問自答することや頭に浮かんだことが、すべて自分にとって有益なものとは限りません。自問自答すべきではないことも多々あり、意外と間違った方向に進むこともあります。そんな時は、質問の趣旨や方向性を変えることで新たな発見があるでしょう。

 

セルフインタビューをする際に使える手法として、「クローズド・クエスチョン」「オープン・クエスチョン」があります。

 

クローズド・クエスチョンとは、答えが「はい」か「いいえ」しかない質問のことです。例えば、「あなたはコーヒーが好きですか?」と質問されると、答えは「はい」か「いいえ」しか返せません。答えが「はい」だとまだ会話が続くこともありますが、「いいえ」だとそれで終わってしまいます。

 

一方、オープン・クエスチョンというのは、多様な答えを引き出す問いのことです。例えば、「あなたはどんな飲み物が好きですか?」と問われた場合、「私はオレンジジュースです」「紅茶が好きです」など様々な答えが期待できます。すると、「そうなんですね。実は私も紅茶が好きなんですよ」などと会話が弾むきっかけになったりもします。

 

自分の人生を振り返りながら、自分自身に対して、様々な質問を投げかけてみてください。

本連載は、2014年3月20日刊行の書籍『相続争いは遺言書で防ぎなさい』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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連載残された家族にきちんと「意思を伝える」遺言書の書き方

大坪正典税理士事務所 所長 税理士

神奈川県横浜市出身。相続、事業承継、都市開発、企業再生支援業務などを中心に携わる。他士業とのコラボレーションによるワンストップサービスを提供。著書に『もめない相続ABC』(共著、日本相続新聞社)、『はじめての相続・贈与』(共著、明日香出版社)などがある。

著者紹介

相続争いは遺言書で防ぎなさい

相続争いは遺言書で防ぎなさい

大坪 正典

幻冬舎メディアコンサルティング

相続をきっかけに家族がバラバラになり、互いに憎しみ合い、ののしり合う――。 故人が遺言書を用意していない、あるいはその内容が不十分であったために、相続に関するトラブルが起こってしまうケースは数多く存在しています…

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