賃貸用の不動産(収益物件)を活用することで、会社を守り、個人資産を守ることができます。本連載では、収益物件の活用で得られる節税効果を紹介します。

収益物件を活用した「節税装置2種類

収益物件の活用方法として、特にオーナー社長の皆さんにご紹介したいのが、節税装置としての活用方法です。節税装置としての活用方法は大きく分けて2種類あります。

 

ひとつ目は「フローの節税」装置です。個人であれば所得税、法人であれば法人税の節税効果が得られます。

 

2つ目は、「ストックの節税」装置です。ストック、つまり資産にかかる部分で、個人であれば相続税対策の手法として、法人であれば株価(自社株)の評価減の手法として活用することができます。いずれにしても、収益物件が節税に利用できる有効なツールであるということを解説していきます。

会計上の赤字を所得と損益通算する「フローの節税」

では、フローの節税装置としての活用方法から見ていきます。フローの節税ですので、個人でこの手法を活用すれば所得税等の、法人で活用すれば法人税等の節税スキームが構築できます。より厳密にいえば、税の先送り(繰り延べ)を利用した節税スキームです。スキームの概要を説明します。図表1をご覧ください。

 

【図表1】フローの節税スキーム

物件価格1億円、築23年の木造アパートを、全額の借り入れで取得した場合の事例です。1億円の内訳は、土地5000万円、建物5000万円とします。このスキームの大きなポイントは、現金支出(キャッシュアウト)せずに、会計上の赤字を計上できることです。

 

まずキャッシュフローをご覧ください。1000万円の賃料収入に、経費と借入金の返済を合わせて700万円の支出があり、税引前のキャッシュフローは300万円となっています。

 

次に損益計算書をご覧ください。1000万円の売上で諸経費が200万円かかるところまでは同じです。元利金の返済のうち元金は経費になりませんので借入金利の200万円だけが費用として計上されます。そして損益計算書には減価償却費というものが出てきます。

 

築23年の木造アパートの場合、建物価格5000万円を4年間で減価償却することになりますので、1年間あたりの償却額は1250万円です(土地は減価償却できません)。これによって、会計上は差し引き650万円の赤字を計上することになります。

 

この650万円の赤字を、法人はもとより個人でも他の所得と損益通算できるという点が何よりも大きなメリットとなります。例えば本業で2000万円の所得の方の場合、この650万円の赤字(キャッシュフロー上は黒字!)を損益通算することで、会計上の黒字額は1350万円に減ります。その分、所得にかかる税金が安くなるというわけです。

 

税引後のキャッシュフローは税引前のキャッシュフローに税効果を合計した金額となります。税効果が加わることによって投資回収の速度が上がり、投資回収線が急激に右下に下がることになるのです。そして、この赤字は減価償却がなくなるまでの期間、継続して計上することになります。この物件の場合は、4年間にわたってキャッシュフローはプラスでありながら650万円の会計上の赤字を所得と損益通算し、節税できるのです。

 

【図表2】損益通算による所得圧縮のイメージ

個人でも法人でも節税メリットを出せる理由

先に紹介した物件を個人で取得すれば、最高税率の人であれば約50%(地方税含む。平成27年以降は55%)、つまり650万円の半分の325万円近くが、その年の所得と通算され還付されることになります。この還付額はその人の税率によって変わってきますので、高所得者、つまり税率の高い人ほど有効であるといえます。実際、筆者の会社のお客様では年収(役員報酬)が5000万円を超える方も多くいらっしゃいますが、そのような方々にはこの手法は大変有効であると好評を得ています。

 

また、法人であれば、650万円分の税引前利益がゼロになるという効果があります。これは、本来払うべき税金(法人税)の650万円×40%(法人税の実効税率)=260万円を、圧縮できていることになります。つまり、収益物件は、本業の利益にかかる法人税のコントロール装置として活用できるのです。これが収益物件を活用したフローの節税の概略となります。次回より効果的に活用するためのポイントを解説していきます。

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    本連載は、2014年8月30日刊行の書籍『会社の経営安定 個人資産を防衛 オーナー社長のための収益物件活用術』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

    本連載は情報の提供及び学習を主な目的としたものであり、著者独自の調査に基づいて執筆されています。実際の投資・経営(管理運営)の成功を保証するものではなく、本連載を参考にしたアパート事業は必ずご自身の責任と判断によって行ってください。本連載の内容に基づいて経営した結果については、著者および幻冬舎グループはいかなる責任も負いかねます。なお、本連載に記載されているデータや法令等は、いずれも執筆当時のものであり、今後、変更されることがあります。

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    大谷 義武

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