前回は、私募リートの運用で「不動産取得直後に売主が倒産」した場合のリスクを紹介しました。今回は、私募リート投資における減損処理発生のリスクを見ていきます。

契約から決済・物件引渡しまでタイムラグがあると・・・

(22)フォワード・コミットメント等に関するリスク

投資法人は、不動産等を取得するにあたり、いわゆるフォワード・コミットメント(先日付の売買契約であって、契約締結から一定期間経過した後に決済・物件引渡しを行うことを約する契約)等を行うことがあります。不動産売買契約が、買主の事情により解約された場合には、買主は債務不履行による損害賠償義務を負担することとなります。

 

また、損害額等の立証にかかわらず、不動産等売買価格に対して一定の割合の違約金が発生する旨の合意がなされることも少なくありません。フォワード・コミットメントなどの場合には、契約締結後、決済・物件引渡しまでに一定の期間があるため、その期間における市場環境の変化等により投資法人が不動産取得資金を調達できないような場合のように、売買契約を解約せざるを得なくなったときには、違約金等の支払いにより、投資法人の財務状態が悪化する可能性があります。

不動産の減損処理で財務状況が悪化する可能性も

(23)固定資産の減損に係る会計基準の適用に関するリスク

固定資産の減損に係る会計基準や固定資産の減損に係る会計基準の適用指針にしたがって、収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった不動産等について、一定の条件の下で回収可能額を反映させるように固定資産の帳簿価額を減額する会計処理(減損処理)を行うことが必要となる場合があります。その結果、投資法人の財務状態や収益が悪化する可能性があります。

本連載は、2016年1月25日刊行の書籍『世界一わかりやすい私募REITの教科書』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

世界一わかりやすい私募REITの教科書

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初村 美宏

幻冬舎メディアコンサルティング

取引所に上場せず、オープンエンドで運用される不動産投資ファンド「私募REIT」。 1990年代にアメリカで人気となり日本でも2001年から発売が開始、不動産投資市場でも急成長を遂げている人気の投資商品である。主な投資者は機…

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