前回は、私募リートの投資対象が「転貸」された場合のリスクを紹介しました。今回は、売主が倒産した場合のリスクを見ていきます。

返還されるべき金額が全額戻らない事態もある

(21)売主の倒産等の影響に関するリスク

投資法人が不動産等を取得した後に、売主について破産手続、民事再生手続、会社更生手続等の倒産手続が開始された場合、不動産等の売買契約やその対抗要件具備行為が、倒産した売主の管財人等により否認される可能性があります。

 

この場合、不動産等は、破産財団等に取り戻される一方で、投資法人が売主に支払った売買代金等の返還請求権は、倒産手続における平等弁済の対象となり、著しく低い金額しか回収できないことがあります。

 

倒産手続が開始されない場合であっても、売主の財務状況が劣悪である場合には、不動産等に関する売買契約が売主の債権者により詐害行為を理由に取り消される可能性があります。

投資法人の担保権の行使に制約が生ずるケースも

また、いわゆる真正売買の問題として、裁判所や管財人等が、投資法人を買主とする売買取引を、担保付融資取引の性質をもつ取引であると法的に評価し、その結果、不動産等がなおも売主(倒産手続であればその財団等)に属すると判断することがあります。この場合には、投資法人は、あたかもその不動産等についての担保権者であるかのように取り扱われ、担保権(とみなされた権利)の行使に対する制約を受けることとなります。

 

特に、会社更生手続では、担保権の実行は会社更生手続にしたがって行われ、弁済金額が切り下げられることになるなど、担保権の実行を手続き外で行える破産手続等に比較して、投資法人はより大きな損害を受けるおそれがあります。

 

また、先に述べた否認の問題は、売主の前所有者(投資法人から見て前々所有者等)が倒産した場合にも生じえます。すなわち、投資法人が、不動産等を取得した際に、前所有者である売主が前々所有者から否認を主張される原因があることを認識していた場合には、そうした否認の効力が転得者である投資法人にも及ぶことになります。

 

以上に述べたような形で、投資法人やその売主の売買契約が否認されたり、詐害行為取消権の行使を受けたり、真正売買性が否定された場合には、投資法人に損害が生じるおそれがあります。

本連載は、2016年1月25日刊行の書籍『世界一わかりやすい私募REITの教科書』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

世界一わかりやすい私募REITの教科書

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初村 美宏

幻冬舎メディアコンサルティング

取引所に上場せず、オープンエンドで運用される不動産投資ファンド「私募REIT」。 1990年代にアメリカで人気となり日本でも2001年から発売が開始、不動産投資市場でも急成長を遂げている人気の投資商品である。主な投資者は機…

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