前回は、変動金利型国債と固定金利型国債の違いと、実際に国債を購入する際の流れを説明しました。今回は、投資対象として軽視できない「地方債」の種類と購入方法を見ていきます。

「地方債」の多くは銀行で購入可能

国債を購入することができたなら、次はほかの債券で投資の練習をしてみるとよいでしょう。日本国債以外の債券といえば、外国債券、公債(日本の地方自治体などの債券)、社債(民間企業の債券)などが考えられます。

 

このうち外国債券は、そのなかにそれぞれ国債、公債、社債がありますが、いずれも似たようなものなので一緒に扱います。というのも、これまでの連載で述べたように、外国債券には為替リスクがつきものだからです。

 

もちろんなかには円建て債券といって、円で購入して円で償還する外国債券もないわけではありません。連載第4回で紹介したアルゼンチン国債などは、円建て債券であったために、日本でも被害者が多かったと聞きます。円建てであれば為替リスクはなくなるので、あとは発行体の信用度をチェックするだけでいいでしょう。

 

しかし、一般的には外国債券は外国の通貨で起債されています。そのため、どうしても為替リスクがつきものなので、初心者にはハードルが高くなります。裸で買うことは、お勧めできません。そこで、外国債券については外貨預金と投信のところで再び触れることにします。

 

では、公債(公共債)とはどのようなものでしょうか。公共債とは広い意味では国債も含む、公的機関が発行する債券のことです。代表的なものは東京都などの地方自治体の発行する地方債、首都高速道路や国民生活金融公庫などの政府関係機関が発行する政府保証債、財投機関債があります。

 

ここではより身近な地方債について詳しく見てみましょう。

 

例えば東京都の債券(都債)を購入したければ、インターネットで「都債」と調べれば、東京都のウェブサイトに詳しい説明が載っています。あなたが、自分の住んでいる地域を応援したいと思えば、埼玉県債でも、横浜市債でも、たいていは見つけることができます。

 

購入場所もそこに書いてあると思いますが、多くは銀行で扱っていると思います。このような地方債には共同債と個別債と住民参加型債券の3種類があります。

 

共同債は地方自治体が共同で起債するもので、分散投資型になっているので、どこか一つの自治体が破綻しても返済してもらえそうです。

 

個別債はそれぞれの自治体が個別に起債しているものです。東京都や神奈川県などの巨大自治体は毎月発行していますが、小さい自治体になると2カ月に1回とか3カ月に1回とかになるので、時期によっては購入できないかもしれません。

 

住民参加型債券とは、目的が明確になっていて、そのために住民からの投資を募るものです。例えば2013年4月に石川県が発行した「ふるさといしかわ債」は、「北陸新幹線建設及び県立学校整備」のための資金を集めるためのものでした。

 

発行総額は20億円で、金利は0.13%の5年満期債券でした。金利の面からいえば、決して満足できるようなものではなかったかもしれませんが、利害関係のある地域住民にとってみれば、興味のわくような内容です。

5年満期で金利1%の地方債もかつては存在

このように、投資には、投資家の金儲けだけでなく、社会の役に立つ事業への協力といった側面もあります。北陸新幹線が建設されれば、沿線の住民には多大な利益があるでしょう。

 

しかし、そのためのお金は誰が出すのでしょうか。JRでしょうか。投資に見合わないから中止するなどと言われそうです。国でしょうか。他府県民から税金の無駄遣いだとクレームをつけられそうです。では、石川県が出せばいいのでしょうか。あいにく、今の地方自治体にはそこまでの財政力がありません。

 

そこで地方債の発行です。北陸の企業と県民が力をあわせて資金を拠出すれば、20億円くらいすぐに集まるでしょう。なにしろ、このお金は募金ではありません。れっきとした債券ですから、金利もつきますし、5年後には投資金額がすべて戻ってくるのです。社会の役に立って小遣い稼ぎまでできるなんて、投資とはなんと素晴らしいものでしょう。

 

投資には、社会のお金の巡りをよくする、という意味があります。家の中のたんすに現金を貯めこんでいるだけでは、それこそお金の無駄で、必要な人にお金が届きません。ことわざに「金は天下の回りもの」とあるように、余っているお金があるのであれば、必要な人に融資してこそ生きるものです。

 

もちろん銀行に預金をすることで、銀行があなたの代わりに必要なところに融資してくれるといったことはあるでしょう。

 

しかし、銀行は本当に必要なところにお金を回しているのでしょうか。テレビドラマで有名になった銀行員の「半沢直樹」ではありませんが、誰もが応援したいと思うような中小企業には担保がないからと融資をせず、大企業にばかりお金を融通しているということはないでしょうか。あなたの大切なお金の融資先を、本当に銀行任せにしていいのでしょうか。

 

地方債は何も低金利のものばかりというわけではありません。同じく2013年4月に長野県軽井沢町が起債した「さわやか軽井沢債」は、「風越公園カーリングホール棟整備事業」のために1億円を発行したものですが、5年満期で金利は1%もついていました。銀行の定期預金ではとうてい太刀打ちできないほどの高金利です。

 

同じお金を預けるのであれば、使い道の分かっている事業に投資したいとは思いませんか。自分のお金がどのように働いているかを実感し、意味のある使い方をすること、それが「投資」への第一歩なのです。

 

なお、債券の場合は投資先が破綻しないかどうかの信用度をチェックすることが必要ですが、これは一般には格付け会社による格付けで判断されることが多いようです。確かに財務諸表(バランスシート)をチェックするのは素人の手には余るでしょうから、格付け会社が代行してくれるのであれば助かります。

本連載は、2014年7月29日刊行の書籍『インフレ時代の投資入門』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

インフレ時代の投資入門

インフレ時代の投資入門

杉浦 和也・前野 達志

幻冬舎メディアコンサルティング

仮に今、あなたに1000万円の預金があるとしましょう。安倍内閣が掲げるインフレ目標2%が今後毎年達成された場合、その預金の価値は毎年2%、つまり20万円ずつ目減りしていくことになります。預金の金利はもちろんつきますが、現…

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