特定の人物に多くの財産を与えつつ、「争族」を防ぐ方法

前回に引き続き、有名家具販売店で勃発した遺産相続争いをもとに、どうすれば「争族」を防げたのかを見ていきます。※本連載では、東京永田町法律事務所代表・長谷川裕雅氏の著書、『実例に学ぶ経営戦略 あの企業のお家騒動』(リベラル社)の中から一部を抜粋し、有名企業のお家騒動をもとにした会社経営や事業承継のイロハを説明します。

「一括相続」させる旨を遺言で残すだけでは不十分

前回に引き続き、有名家具販売店の遺産相続争いについて紹介する。今回は、どうすれば争族を防げたのか、2つ目のポイントを見ていく。

 

ポイント② 不平等な分け方の時こそ遺言を活用しよう

 

裁判所も昭雄氏へ極端に偏って遺産分割されたことを認めているが、後継者に株式を集中させる場合のように、「法定相続人(※1)」の間で相続分に偏りが出る時こそ、遺言が必要となる。

 

(※1)法定相続人・・・被相続人の財産を相続する権利があると民法で定められた人のこと。

 

前回説明したような生前贈与をしないのであれば、株式全てを昭雄氏に一括相続させる旨の遺言の作成が必須だ。遺言があれば、遺産分割協議を経ることなく遺産分割をすることができ、昭雄氏がみつ子氏らから裁判を起こされることもなかったであろう。

 

遺言がないと、ニトリ株が昭雄氏以外の相続人に相続されて離散し、会社の承継がうまくいかなくなったり、将来相続人同士でニトリの経営権争いが起こったりすることもあり得る。

 

特定の相続人に対して多くの財産を与える内容の遺言を書く際には、「遺留分(※2)」に気を付ける必要がある。多くの財産をもらった相続人は、遺留分を侵害された相続人から裁判を起こされる可能性があるからだ。

 

(※2)遺留分・・・遺言の内容によっても奪われることがない法定相続人の最低限の権利のこと。ただし、兄弟姉妹には遺留分は認められない。

 

ニトリのように創業者が後継者に株式を一括集中して相続させることにより、他の相続人の遺留分を侵害することが避けられない場合はどうしたらよいか。そのためには遺留分を少なくすることが有効だ。

 

[図表1]法定相続人と遺留分の割合

生前に「遺留分」をできるだけ小さくしておく

遺留分トラブルを封じるためには、遺留分をできるだけ小さくするよう、生前に対策を講じておく必要がある。具体的な遺留分の額は、シンプルに説明すると下の計算式で算出される。

 

[図表2]遺留分額の計算方法

 

生前対策の一つは、相続財産の部分を小さくすること。例えば後継者を受取人とする生命保険に加入し、相続財産を小さくしておく。この方法は、後継者に二重のメリットがあるので一般的によく使う手だ。

 

相続財産は、支払った保険料の分だけ減ることになる。また、生命保険金は相続財産ではないので、受取人が相続財産を受け取ったことにはならず、遺留分に影響しない。他の相続人の遺留分を減らしつつ、後継者の受け取る金銭を増やせるので、後継者以外の相続人がいる経営者の方にはおすすめの方法だ。

 

もう一つは、法定相続分を小さくすること。法定相続分を小さくすることは、相続人を増やせば実現できる。養子をとればよいのだ。長男の嫁や孫などを養子にとって相続人を増やせば、法定相続分はどんどん小さくなり、遺留分を減らせる。

 

養子は子どもがいる場合に1人までと制限があるのでは、という質問を受けるが、それは例えば基礎控除額を計算する際など、相続税の計算をする時の話。遺産分割で遺留分を計算する時には、特に人数制限はない。

東京永田町法律事務所代表 

弁護士・税理士。早稲田大学政治経済学部卒業。朝日新聞社入社。その後弁護士に転身。大手渉外法律事務所や外資法律事務所を経て独立。事業承継や相続問題を戦略的に解決できる数少ない専門家として活躍。

著者紹介

連載有名企業の「お家騒動」から学ぶ事業承継対策

実例に学ぶ経営戦略 あの企業のお家騒動

実例に学ぶ経営戦略 あの企業のお家騒動

長谷川 裕雅

リベラル社

大塚家具、ロッテ、大王製紙、日舞花柳流、三越など18社のお家騒動のポイントと対策を徹底解説! ! 「家族が経営権を巡って対立したら?」 「創業者が遺言を残さずに他界したら?」 「正反対の内容の遺言が出てきたら?」 …

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