今回は、リスク・リターンから見た不動産投資の「スタンス」の分類について見ていきます。※本連載は、株式会社アセットビルドの代表取締役・猪俣淳氏の著書、『誰も書かなかった不動産投資の出口戦略・組合せ戦略』(住宅新報社)の中から一部を抜粋し、不動産投資で「自分に合ったスタイル」を導き出し、成功するためのノウハウをご紹介します。

ローリスク×ローリターンの「コア」

前回の続きです。不動産投資ではずせない需要ポイントの一つである「効率性と安全性の判断」について見ていきます。

 

リスク・リターンから見た投資スタンスは次のように分類されます。投資スタンスは、あくまでも投資家固有のものですから、個人差があって当たり前。どれが良いとか悪いとかではないということを強調したいと思います。

 

●コア(ローリスク×ローリターン)

 

投資の安全性を最も重視し、収益性は二の次という投資スタンスの投資家を「コア」な投資家と呼びます。

 

大企業が、都心のAクラス立地に土地を取得したうえで、ハイグレードなビルを建築し長期運用するというのは、典型的な「コア」投資家の手法です。地主が先祖伝来の土地に、収益性よりも相続税の節税効果を優先し、十分な予算をかけた高品質で立派なアパート・マンションを建てて子供たちに引き継ぐというのも、やはりコアなスタンスといえます。

 

コアな投資家のなかでも、多少は収益性にも目を向けて若干のリスクは背負っても構わないと考える場合は、「コアプラス」という分類をする場合もあります。

ミドルリスク×ミドルリターンの「バリューアド」

●バリューアド(ミドルリスク×ミドルリターン)

 

大きなリスクは負担したくないが、それなりのリターンも求めたいというスタンスです。例えば、運営上の問題があって空室が目立つとか、維持管理が適正に行われていないため建物の老朽化・陳腐化が激しいといったリスクを抱えた物件を取得し、運営の改善や大規模修繕・リノベーションといった資本改善を行うことによって、価値を付加(Value-add)して保有時・売却時のキャッシュフローの増加を図るという投資家を「バリューアド」な投資家と呼びます。「物件を再生」するという意味では「ターンアラウンダー」と呼ばれることもあります。

 

●オポチュニスティック(ハイリスク×ハイリターン)

 

高いリスクを負う代わりに高いリターンを求める投資家を「オポチュニスティック」な投資家と呼びます。キャピタルゲインを求めて短期の転売を繰り返す、いわゆる「土地転がし」のような投資手法もこれに含まれます。場合によっては手付金だけ打って、残代金決済までの短い期間の間により高値で買う次の買い手を見つけるといった綱渡りをするリスクも厭いません。

 

あるいは、多くの投資家が手を出さない、土壌汚染・災害危険・再建築不可・要注意テナントの入居など、解決が困難な問題のある物件を安く買いたたき、その問題を取り除いたうえで、適正な価格で売り抜けるという手法をあえて選択するという、「機会追求的」でチャレンジングな投資スタンスを持つのがこのタイプの投資家です。

 

 

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本連載は、2016年3月31日刊行の書籍『誰も書かなかった不動産投資の出口戦略・組合せ戦略』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

誰も書かなかった不動産投資の 出口戦略・組合せ戦略

誰も書かなかった不動産投資の 出口戦略・組合せ戦略

猪俣 淳

住宅新報社

本書は、不動産投資において想定される“あらゆるスタイルの投資家”が、ご自身の投資を定量化し、方向性を検討したり、強みと弱みを把握したり、最適化を図る…といった視点で使える「ツール」としての機能を重視して、ほぼ全…

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