前回は、「自筆証書遺言」の作成でミスが起こりやすい理由を紹介しました。今回は、「遺言がない」ことから発生した相続トラブルの事例を見ていきます。

内縁関係の夫が亡くなり・・・

内縁関係の夫婦を長く続けてきて内夫が、病気により死去しました。

 

内縁関係の場合、内妻は相続人になることができないため、相続人は内夫の母親一人です。夫婦は、内夫名義の持ち家に住んでいましたが、内夫の死亡によって団体信用生命保険から保険金が下り、住宅ローンは消滅しました。

 

そんな折、相続人である内夫の母親から内妻に対して、「あなたにはこの家の相続権はないのだから、明け渡すように」との要求があり、内妻は激しく動揺しました。

「遺言」があればトラブルは起こらなかった!?

どんなに事実上の婚姻関係にある期間が長かったとしても、法律上の内縁関係では、相続人になることができません。内夫・内妻共に、そのことに留意していないと、この事例のようなトラブルに発展してしまいます。

 

また、この事例では、夫の死亡により、団体信用生命保険(以下、「団信」と表記)から死亡保険金が給付され、住宅ローンが消滅するということを、内夫・内妻・内夫の母親の誰も認識していなかったことも、トラブルにつながりました。

 

内妻は「夫亡き後、どうやってローンを払っていったらいいのだろうか」ということで頭がいっぱいで、そんな内妻を、内夫の母親も思いやっていました。もともと2人の関係は良好だったのです。

 

ところが、思いがけないことに、団信からの死亡保険金で住宅ローンが消滅しました。安堵のあまり、内妻は、内夫の母親に「自宅の相続権を放棄してほしい」と求めてしまったのです。

 

内夫の母親は烈火のごとく怒り、2人の仲はこじれにこじれ、内妻は内夫の財産を何ひとつもらえないまま、自宅を追い出されてしまいました。

 

これらはみな、内夫が遺言書に、「内妻には自宅を、預貯金は母親に相続させる」などと、ひと言書いておきさえすれば防ぐことができたトラブルです。内夫が健在なうちは、内妻と内夫の母親の仲は良好でした。それにも拘らず、遺言がないことでせっかく築かれていた人間関係までこわれてしまったことを、非常に残念に感じました。

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    本連載は、2015年11月25日刊行の書籍『老後の財産は「任意後見」で守りなさい』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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    眞鍋 淳也

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