前回は、そのときどきの「市況」に応じて、柔軟に不動産投資の戦略を変えていくことの重要性を解説しました。今回は、各種指標から「レバレッジ効果」を判定して投資判断をする方法を見ていきます。

FCR、DCRなどを計算して投資を判断

前回述べたように、不動産投資では、「何が一番いい」ではなく、今の市況で「いかに有利に進めていくのか」を考え、常に状況に応じた手法をとることが大事です。

 

実際に事例で計算してみましょう。

 

①まずはFCRを計算します。FCRとは、フリーアンドクリアリティリターンの略で、「真実の利回り」のことです。

 

②次にDCR(借入償還余裕率)の計算です。ADS(年間ローン返済額)に対するNOI(営業純収益)の比率です。DCRが大きいほど借入返済の確実性を増し、デフォルトが起きる可能性が低くなります。

 

③BE%(損益分岐点)はGPI(年間満室賃料)をOPex(運営費)とADSで割ったもので計算します。目安となる数値は物件により異なりますが、損益分岐となる入居率がBE%となります。

 

④K%(ローン定数)とはADSのローン借入数に対する割合です。K%はコストですので、低いほど有利な融資が獲得できているということです。K%を下げるためには「融資期間を延ばす」「金利を下げる」のどちらかを行います。

 

⑤CCR(自己資本利益率)ではキャッシュオンキャッシュリターンの略で、自己資本に対する利益率を指します。いくら投資をしていくらの利益があるのかを表します。

 

⑥で前回紹介したイールドギャップを計算します。

 

⑦レバレッジ判定をします。K%よりFCRが高ければ、レバレッジが効いています。その状態であれば、銀行融資を借りれば借りるほどCCRが上昇します。

 

K%は、先述した通り年数と金利で決まります。そこも非常に大事だと思います。「金利1%、ローン15年」というパターンと、「金利3%、ローン30年」というケースで考えてみましょう。

 

同じ金額を借りて、どちらがいいか簡単に計算してみると、1%で15年の場合、K%(ローン定)数は7.18です。今度は3%で30年の場合、K%(ローン定数)は5.06です。金利は高くても明らかに、後者で借りた方がいいということです。

 

要は、金利が安くても年数が短いとFCRとK%の利鞘が稼げていないのでキャッシュフローが出てこない、つまり手元に残るお金が少なくなります。期間が長いと、ある程度高金利でも手元に残ります。

 

投資判断ではスナップショットとビデオで見るのですが、スナップショットではFCRとK%、ビデオでは金利が低い高いかで出口時の残債(残りの借入額)が変わるため、両方を把握する必要があります。

レバレッジが効いていないときは自己資本を入れて対応

また、K%とFCRを比較することによって、レバレッジ効果が働いているかどうかの判断ができます。基本、このK%よりもそのFCRの数値が大きいときはレバレッジが効いているということです。だから他人から資本を借りれば借りるほどCCRがよくなるのです。

 

しかし、都内の物件は、おそらくこれが逆転しています。というのも、利回りが低いのでレバレッジが効かない状態なのです。

 

例えば、4.74というK%(ローン定数)がありますが、都内の一等地で利回りが5%、そこから経費などを引いてFCRが4%になった場合、4.74%で借りて4%で回すということになり、明らかなマイナスの投資です。これを逆レバレッジといいます。

 

とはいえ「レバレッジが効いてないから投資をしない」ということではないのです。レバレッジが効いていないときは、自己資本をなるべく入れることで目標の収支が合うようになります。このような判断をするために計算を行います。

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    本連載は、2016年6月30日刊行の書籍『不動産投資の嘘』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

    不動産投資の嘘

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    大村 昌慶

    幻冬舎メディアコンサルティング

    融資のこと、業者のこと、出口戦略のこと…不動産投資において知っておくべき情報は数多く存在する。 これから投資を行おうと思っている人、実際に投資を行っている人の多くは、本やセミナーから多くの情報を得る。しかし、そ…

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