今回は、「自己資金の増加」が不動産投資の収益性に及ぼす影響を見ていきます。※本連載は、株式会社アセットビルドの代表取締役・猪俣淳氏の著書、『誰も書かなかった不動産投資の出口戦略・組合せ戦略』(住宅新報社)の中から一部を抜粋し、不動産投資をどのような方向性で組み立てるかを紹介していきます。

自己資金を増やす方法は大きく分けて2つ

(1)投資する資本(現金・土地など)・・・・1000万円

(2)目標キャッシュフロー額・・・・・・・・(税引前)1200万円

(3)それは何年後に実現したいのか・・・・・5年後

上記の例をもとに、自己資金を増やすことによってゴールに近づけることを検討します。また、「実現時期の先送り」については、この中で触れていきたいと思います。

 

「自己資金を増やす」うえで考えられる代表的な方法は、大きく分けて以下の3つのうち、(1)(2)があります。(最初に、1000万円を使って物件を現金買いして、それを担保に、それ以降の物件をフルローンないし、オーバーローンで購入というパターンは、投資の内容によって(1)と(2)どちらにも分類できます)

 

(1)キャッシュフローを累積する

●投資資本の1000万円を使ってできる「最もキャッシュフローが出る投資」をスタート

●各投資から得られるキャッシュフローを再投資して、同様の追加投資を行う

 

・・・実現条件:レバレッジ・追加購入の融資(低利・長期間・高LTV)

 

(2)キャピタルゲインで自己資本を増やす

●投資資本の1000万円を使ってできる「最も売却益が出る投資」をスタート

●目標時期に売却益を確定させて、投資資本を最大化したうえで「最もキャッシュフローが出る投資」をスタート

 

・・・実現条件:キャピタルゲイン+レバレッジ

 

(3)単純に自己資金を増やす。または、給与収入から毎年追加投資を行う。

キャッシュフローの再投資では自己資金は足りない

では、それぞれの選択肢を検証してみましょう。

 

(1)キャッシュフロー累積型での検証

 

仮定条件:E=1000万円・購入経費率7%・FCR=6%・K%=4%・LTV=90%


【公式】E ÷((1−LTV)+購入経費率)=購入可能物件価格


例:1000万円÷((1−90%)+7%)=5882万円≒5880万円


【公式】物件価格×(1+購入経費率)=総投資額


例: 5880万円×(1+7%)=6292万円≒6290万円

【公式】E×FCR+LB×YG=税引前キャッシュフロー(BTCF)


※LB=総投資額−E

※YG=FCR−K%

例:1000万円×6%+(6290万円−1000万円)×(6%− 4%)≒165万円

CCR=CF÷E 16.5%・・・・・・16.5%

 

キャッシュフローを再投資していくという複利的な運用を行った場合、5年間でどこまでキャッシュフローを拡大できるかというと、

 

     E     BTCCR  BTCF
1年目 1000万円  16.5%  165万円

2年目 165万円  16.5%  165万円+27.2万円

3年目 192.2万円 16.5%  165万円+27.2万円+31.7万円

4年目 223.9万円 16.5%  165万円+27.2万円+31.7万円+36.9万円

5年目 260.8万円 16.5%  165万円+27.2万円+31.7万円+36.9万円
              +43万円

 

ここでは、キャッシュフローの再投資において所得税の課税を考慮していませんので、その分、自己負担をするという前提になりますが、それでもこの段階でのBTCFは303.8万円と、目標の1200万円には遠く及びません。

本連載は、2016年3月31日刊行の書籍『誰も書かなかった不動産投資の出口戦略・組合せ戦略』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

誰も書かなかった不動産投資の 出口戦略・組合せ戦略

誰も書かなかった不動産投資の 出口戦略・組合せ戦略

猪俣 淳

住宅新報社

本書は、不動産投資において想定される“あらゆるスタイルの投資家”が、ご自身の投資を定量化し、方向性を検討したり、強みと弱みを把握したり、最適化を図る…といった視点で使える「ツール」としての機能を重視して、ほぼ全…

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