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連載人口動態リスクとチャイナショックの真相【第2回】

アジアの経済成長の鍵を握る「人口ボーナス」とは?

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アジアの経済成長の鍵を握る「人口ボーナス」とは?

今回は、アジアの経済成長の鍵を握る「人口ボーナス」について見ていきます。 ※本連載は、タイの政府系金融機関の顧問として数々の実績をあげた、アジア・ビジネスのプロである越純一郎氏の代表編著、杉田浩一氏、福谷尚久氏編著の書籍『チャイナショックで荒れ狂う アジアのビジネス・リスク』(日刊工業新聞社)の内容を再編集したものです。中国が抱える人口動態リスクをもとに、中国のみならずアジア全体の経済失速の原因を探っていきます。

「人口ボーナス」は出生率の低下で始まる

総人口増加率よりも生産年齢人口増加率が大きいことを、「人口ボーナス」と言う。つまり「人口ボーナス期」とは、生産年齢人口の比率が上昇する時期である。

 

所得を生み出す人口を生産年齢人口といい、それ以外を従属人口という(従属人口=年少人口+老齢人口)。生産年齢人口の増加は国民所得を増加させ、生産年齢人口比率の増加は「一人あたりの国民所得」を増加させる。(※1)人口ボーナス期には経済成長が加速され、高度経済成長になりやすい。(※2)

 

(※1)1人あたりの国民所得は国の豊かさを示す代表的な指標で、それが12000ドル以上であることが先進国の目安とされることが多い。

(※2)ただし、戦争や内戦、国内混乱(文化大革命など)で、人口ボーナス期が無駄に過ぎ去ってしまうこともある。

 

人口ボーナスは、出生率の低下で始まる。産児制限や家族計画によって出生率が低下すると、幼児数が減少する一方で、年少人口が生産年齢に達して若い労働力が急増し、経済成長が加速する。これによって「東アジアの奇蹟」(※3)が生じた。

 

(※3)1994年発表・世界銀行著(白鳥正喜監訳)『東アジアの奇跡―経済成長と政府の役割(東洋経済新報社)』より。

半永久的に継続する「高齢化状態」と「経済停滞」

人口ボーナスで生じる高度成長は、医療水準の向上、年金の充実などをもたらすので、国民が長生きできるようになり、高齢者の比率は高まる。その後、高度経済成長は終了する。

 

重要なのは、高齢化した人口は元には戻らないので、高齢化状態は半永久的に継続するということだ。そのため、技術革新による経済成長がない限り、経済停滞も半永久的に継続する。

 

経済が停滞するまでの流れを、以下のようにまとめた。

 

●人口ボーナスの到来

●高度経済成長

●医療水準が向上し、医療を受ける余裕も増す

●高齢者が長生きになり人口が高齢化

●高齢化すると元に戻らないので半永久的に高齢化が続く

●半永久的に経済停滞が続く(技術革新の効果を除けば)

 

人類はこの問題に対して、未だ解決策を持てずにいる。

国の命運は人口ボーナス終了時点の「GDP」で決まる

高齢化した人口は元に戻らないので、人口ボーナスは終わってしまうと二度目はない。従って、人口ボーナスによる高度成長も一回きりである。

 

つまり、現在のアジアの景気後退は一時的なものでも循環的なものでもなく、それは(技術進歩による経済成長を除けば)半永久的に継続するものである。資本の追加投入や若い移民による高度成長の再来は非現実的である。

 

従って、人口ボーナスが終了したあとは、高度経済成長の誘因となり得るのは技術進歩、技術革新だけである。

 

人口ボーナスが終了して高度成長が終わると、GDPも人口の増加が鈍る。だから、一人あたりのGDPも大きくは増えなくなる。

 

つまり、人口ボーナス終了までに、どのくらいの豊かさ(1人当たりGDP)に到達できるかにより、その国のその後の豊かさの水準は固定される。ニューズウィークが特集「先進国になれない中国」で述べたのもこれが理由だった。

 

次回は、アジア諸国の人口ボーナス期は具体的にいつ頃なのかを説明する。

越 純一郎

株式会社せおん 代表取締役
株式会社テイク・グッド・ケア 代表取締役 

1978年東京大学法学部卒業。日本興業銀行にて東京、ニューヨークの国際金融、投資銀行業務に20数年間従事。タイの政府系銀行であるバンクタイのシニア・アドバイザー、外国弁護士制度研究会委員(法務省)等を歴任。
現在、Eラーニング企業、コンサルティングを経営しつつ、日本ほめる達人協会、Eパートナー(メンタルヘルス)等の役員・顧問。
これまで、企業再生の現場型として著名であるとともに、JR東日本、東京高検ほかの役員研修など、経営者の指導にも注力。著書・講演多数。

著者紹介

連載人口動態リスクとチャイナショックの真相

チャイナショックで荒れ狂うアジアのビジネス・リスク

チャイナショックで荒れ狂うアジアのビジネス・リスク

越 純一郎

日刊工業新聞社

ビジネス・リスクに無防備な日本企業の実情を明かし、対応策を提案する本の第2弾。中国経済失速やアセアンの景気後退などの現実を背景に、もはや警鐘レベルではなくなった実際のリスクにどのように対処するかを解説している。…

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