前回は、相続対策で活用するプライベートカンパニーの4類型のうち「管理方式」「サブリース方式」について解説しました。今回も、その4類型のうち、資産の移転効果が高い「建物所有方式」について見ていきます。

資産の移転効果が高い「建物所有方式」

第三は、「建物所有方式」です(下図表)。土地は被相続人(親)が所有しますが、その土地をプライベートカンパニーが借りてアパートや賃貸マンションを建てたり、あるいはすでにある建物をプライベートカンパニーが取得するのです。

      [図表] 建物所有方式

そして、プライベートカンパニーが入居者やテナントに建物を貸し、賃料収入から役員である相続人(子など)に給与を支払います。賃料の100%がプライベートカンパニーに入るので資産の移転効果が高いといえます。

 

ただし、問題は土地は個人のものなので、ただで借りる「使用貸借」か、地代を支払って「借地」にするかという選択があります。使用貸借であれば地代の支払いはなく、一見いいように見えますが、土地に借地権が発生せず、相続税評価額は自用地でかつ更地のままとなります。

 

それなら借地権を発生させた方がいいと思うかもしれませんが、残念ながら同族の法人と個人の間の借地では評価減は20%しかありません(非同族間の借地であれば住宅地で60〜70%、商業地では80〜90%のことも)。

「土地の無償返還に関する届出書」で課税を避ける!?

それでも土地の評価が20%落ちるのはメリットです。そのためには通常の地代を支払う必要があり、通常の地代の相場は現在、固定資産税の3倍が目安です。少なくとも固定資産税の2倍は支払うべきでしょう。それでもかなり低いはずです。財務上の「相当地代」では、土地価格の6%相当といわれています。

 

もうひとつ注意しなければならないのは、固定資産税の2〜3倍の地代を支払って借地にすることはできますが、その際に権利金の認定課税の問題が出てくることです。新規に借地権を設定する場合、法定更新があり実質上土地は戻ってこないので、権利金を支払う慣習があります。エリアにもよりますが、土地価格の50%もの権利金を支払うこともあるのです。

 

ところが、新設したプライベートカンパニーには通常、そんな資金はありません。そこでよく利用されるのが「土地の無償返還に関する届出書」です。これは、地主と借地人が連名で地元の税務署長に提出し、将来、借地を返す場合には無償で返すこととし、権利金相当額の贈与があったものとしての課税を避けるのです。

 

この場合、プライベートカンパニーと個人との間の土地の賃貸借契約書にも、必ず将来無償で土地を返す旨の特約を入れておくようにしてください。

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    本連載は、2015年9月19日刊行の書籍『余命一カ月の相続税対策』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。
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    余命一カ月の相続税対策

    余命一カ月の相続税対策

    福田 郁雄,木村 祐司

    幻冬舎メディアコンサルティング

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