その他 経営戦略 事業承継
連載有名企業の「お家騒動」から学ぶ事業承継対策【第1回】

低価格&オシャレな商品で成功した家具販売会社の遺産相続裁判

新連載遺産相続遺産分割

低価格&オシャレな商品で成功した家具販売会社の遺産相続裁判

本連載では、弁護士・税理士で東京永田町法律事務所代表の長谷川裕雅氏の著書、『実例に学ぶ経営戦略 あの企業のお家騒動』(リベラル社)の中から一部を抜粋し、有名企業の「お家騒動」をもとに、事業承継対策の勘どころをご紹介します。

一家総出で家業を切り盛りしていたが・・・

「お、ねだん以上。ニトリ」のCMでおなじみの家具販売会社。低価格ながら高品質でオシャレな家具を製造販売し、札幌の家具店から家具販売会社の最大手にまで成長した。商品の企画から原材料の仕入れ、生産、販売、配送まで一貫してグループ内で行うことで、他社との差別化を図っている。

 

ニトリの前身は、1967年に札幌市内に創業した「似鳥家具店」。当時は義雄氏が、妻みつ子氏、長男昭雄氏、長女筒井(旧姓似鳥)和子氏、二女洋子氏、二男幹雄氏と共に、一家総出で家業を切り盛りした。

 

その後、1972年に似鳥家具卸センター株式会社を設立し、法人化(1985年に「株式会社ニトリ」に社名変更)。設立当時は義雄氏が社長だったが、その後昭雄氏が社長に就任。

 

1989年7月に義雄氏が死去。義雄氏が所有していたニトリ株9万2500株は全て社長の昭雄氏が相続した。

「200億円」相当の株をめぐり骨肉の争いが勃発

1990年1月、義雄氏の遺産に関し、「遺産分割協議書(※1)」が作成された。協議内容に基づき、みつ子氏が不動産を、和子氏と洋子氏、幹雄氏の3名は現金1000万円をそれぞれ相続。義雄氏が所有していたニトリ株9万2500株と関連株は全て、長男昭雄氏が相続した。昭雄氏が相続した株式は、現在価値で総額200億円は下らないといわれている。

 

(※1)遺産分割協議書・・・相続人の間で遺産を具体的に誰にどのように分けるか協議し、合意した結果を書面化したもの。

 

2007年4月、みつ子氏と和子氏、洋子氏、幹雄氏の4名(原告)が昭雄氏(被告)に対し、義雄氏の遺産が遺産分割未了だとして、札幌地裁に訴えを起こした。

 

争点は、遺産分割協議書に押印された実印の有効性。原告は、実印が勝手に使われた可能性があり、偽造された協議書は無効であるから、遺産分割は未了であり、遺産であるニトリ株は未だ全相続人の共有状態にあると主張した。

 

しかし、第一審の札幌地裁は、遺族間で遺産分割に極端な偏りがあることは認めたが、遺産分割手続きに不備があると認める証拠はないと判断。協議書にある原告の押印は各人の意思に基づくものとし、原告の請求を退けた。

 

後継者に資産を「一括承継」させる判断は間違っていない

創業家による事業承継の場合、事業会社の株を後継者のみに引き継がせることは決して不自然なことではなく、経営安定化の観点からは正しい判断といえる。「被相続人(※2)」である先代の株が相続人の間で分散して相続されると、のちにトラブルになるからだ。

 

(※2)被相続人・・・相続される人、つまり相続される財産、権利の元の所有者のこと。

 

例えば、創業者である父親が亡くなった場合、その創業者が、相続人である妻(母親)、後継者である社長の長男、そして二男の3人に平等に財産を相続させたいと考え、遺言によって株を3人に等分に分配したとする。するとどうだろう。将来、妻と二男が結託して3分の2の株をもって、後継者である長男を社長の座から引きずり降ろし、会社を乗っ取ってしまうことも可能なのだ。

 

「会社は生き物」というが、経営者はまさにその頭脳。無能な者が会社を乗っ取ると、本業がうまくいかなくなることがある。だからこそ経営者は、会社をつぶさないためにも、経営を託せると判断した後継者に対して、株を含めた事業用資産を一括承継させることが大切だ。

 

次回は、どうすれば争続を防げたのか、2つのポイントを説明する。

長谷川 裕雅

東京永田町法律事務所代表 

弁護士・税理士。早稲田大学政治経済学部卒業。朝日新聞社入社。その後弁護士に転身。大手渉外法律事務所や外資法律事務所を経て独立。事業承継や相続問題を戦略的に解決できる数少ない専門家として活躍。

著者紹介

連載有名企業の「お家騒動」から学ぶ事業承継対策

実例に学ぶ経営戦略あの企業のお家騒動

実例に学ぶ経営戦略あの企業のお家騒動

長谷川 裕雅

リベラル社

大塚家具、ロッテ、大王製紙、日舞花柳流、三越など18社のお家騒動のポイントと対策を徹底解説! ! 「家族が経営権を巡って対立したら?」 「創業者が遺言を残さずに他界したら?」 「正反対の内容の遺言が出てきたら?」 「第…

Special Feature

2016.12

「法人保険」活用バイブル<書籍刊行>

決算対策、相続・事業承継、財産移転・・・企業とオーナー社長のさまざまな課題解決に、絶大な効果を発揮する「法人保険」の活用…

GGO編集部(保険取材班)

[連載]オーナー社長のための「法人保険」活用バイブル~決算対策編

【第19回】保険のための医的診査 結果が「少し悪い」ほうが社長が喜ぶ理由

GTAC(吉永 秀史)

[連載]法人保険を活用した資産移転の節税スキーム

【第15回】「逆ハーフタックスプラン」活用時の留意点

Seminar information

不動産活用セミナーのご案内

償却メリットを狙った「京都の町家」投資の魅力

~建物比率5割超&4年で減価償却も可能!独自の不動産マーケットを形成する京町家だから実現する投資法

日時 2016年12月10日(土)
講師 平野準

海外不動産セミナーのご案内

償却メリットにフォーカスした「ハワイ不動産」投資の最新事情

~築古木造のタウンハウスで建物比率80%以上。「ハワイの償却物件」の実際と活用法

日時 2016年12月10日(土)
講師 大橋 登

海外活用セミナーのご案内

国際金融都市「香港」で始めるグローバル資産防衛

~本格的な海外投資環境を整えるメリットと現地の最新金融事情

日時 2016年12月10日(土)
講師 長谷川建一

The Latest