相続・事業承継 相続対策
連載相続対策の切り札「プライベートカンパニー」の活用術【第3回】

相続対策のためのプライベートカンパニーの設立事例

賃貸経営

相続対策のためのプライベートカンパニーの設立事例

前回はプライベートカンパニー設立への課題と対策を実例とともに説明しました。今回は、より具体的なプライベートカンパニーの設立&活用法を見ていきます。

未利用地の売却等で出資金を捻出

新たなBプライベートカンパニーの設立とその株価対策、そして次男への生前贈与が今回
のコンサルティングの大きな山場です。順を追って説明しましょう。まず、低利用地・未利用地の売却で得た資金1億円を出資して、Bプライベートカンパニーを設立しました。

 

次に、このBプライベートカンパニーが2億円で中古の賃貸マンションを購入しました。出資金1億円との差額(不足分)は金融機関から借り入れました。設立したばかりの法人には通常、金融機関は融資してくれませんが、出資者であるEさんの個人的な資産背景を説明し、1億円の借り入れは問題なくできました。

 

購入した賃貸マンションは、立地と収益性はまずまずなのですが、築20年を超えて修繕コストがかかるようになってきており、また不良入居者がいたり、デザインがいまひとつなど改善点がたくさんありました。そこで、そうした問題点を解決してから、賃貸経営の経験のない次男にBプライベートカンパニーを贈与しようという計画を立てました。

 

例えば、管理会社を代えて不良入居者と交渉してもらい、また賃貸マンションに詳しい設計事務所を入れて建物設備の修繕やエントランスのデザインの見直しなどを行いました。これによって、2〜3年すると正常に賃貸経営が回り出してきました。

 

次はいよいよBプライベートカンパニーを次男に贈与する段階です。贈与税を計算したところ、なんとゼロになりました。理由は、時価2億円に対し、相続税評価が7000万円、一方、ローンが8000万円残っていたので、株価がゼロになっているからです。

 

全株を次男の名義に書き換えましたが、贈与税の申告も不要で、4年目からは次男の会社となりました。ただし、次男は賃貸経営の経験がなく、現在は会社勤めなので、引き続きEさんが社長を務め、役員報酬もEさんが受け取っています。オーナーは次男、経営はEさんというように、所有と経営を分離しているのです。

資産を個人から切り離すメリットとは?

Eさんとしては、やがて次男が賃貸経営ができるような環境が整えば社長の座を譲り、役員報酬も次男のものにしたいと考えています。このように、相続財産を個人から法人へ切り離すことにより、次男に資産と所得が移せることになったわけです。贈与税がかからなかったことはオマケといっていいでしょう。

 

これで将来、次男としては面倒臭い屋敷などの資産管理は長男に任せながら、そこそこ安定した所得が得られ、不自由はしないはずです。次男のケースでうまくいったので、さらにEさんは今、Cプライベートカンパニー、Dプライベートカンパニーをつくり、もう少し小ぶりの収益不動産を購入した上で、同じように生前に長女、次女に株式を贈与しようと計画しています。

 

一方、もともとあるAプライベートカンパニーは長男に相続させる予定です。今のうちに個人名義の他の資産も切り離してAプライベートカンパニーに移しつつ、同時にAプライベートカンパニーの株の持ち分を少しずつ長男に移しています。このように、資産を個人から切り離し、プライベートカンパニーへ移しておくといろいろな面で相続対策がしやすくなります。

 

ある程度、贈与税や譲渡税はかかるかもしれませんが、分割対策の道筋が立ちやすく、資産全体の収益性をアップすることも可能になってきます。なお、Eさんはこうして相続対策にめどが立ち、今では多少の余裕も生まれ、海外不動産に興味が出てきました。

 

そこで、プライベートカンパニーの事業の一環として、海外不動産の見学ツアーにちょくちょく参加しています。旅費や滞在費は経費で落ちるので、喜んでいらっしゃいます。

本連載は、2015年9月19日刊行の書籍『余命一カ月の相続税対策』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。
〈税務の取扱に関する留意点〉
本連載の内容は、平成28年7月現在の税制・関係法令等に基づき記載しております。今後の税制改正等により税務の取扱等が変わる場合もありますので、記載の内容につきましては将来にわたって保証されるものではないことにご注意ください。個別の税務取扱い等については、税理士や所轄税務署等にご確認されることをお勧めします。

福田 郁雄

株式会社福田財産コンサル 代表取締役

1959年生まれ。ミサワホームの資産活用部門責任者、アパマンショップの不動産投資会社の責任者を経験後、2004 年に独立系資産経営コンサルティング会社として、株式会社福田コンサルを設立。特に不動産を活用した相続税対策のコンサルティングに絶大な強みを持ち、17億円も相続税を減らすなど同業他社の追随を許さない専門力を持つ。コンサルティングしてきた資産は総額1200億円超。ファイナンシャルプランナー、公認不動産コンサルティングマスターおよび相続対策専門士統括講師、相続アドバイザー養成講座講師。相続税対策や不動産投資に関する複数の著書あり。

著者紹介

木村 祐司

木村祐司税理士事務所 代表

1967年生まれ。中学卒業後、タンカーの甲板員から始まりブルーカラーの仕事にいくつか従事する中で、給料から天引きされる税金に疑問と興味を持ち税理士を志す。1998年12月税理士試験に合格。当初はコンサルティングファームでファイナンシャルディレクターとしての経験を積み、企業会計実務の知見を得た後に木村祐司税理士事務所を開設、現在に至る。経営者や資産家の財務・税務コンサルティングを強みとし、絶対的な信頼感のもと企業の資金調達、経営管理、節税対策や資産管理、事業承継までを任されている。資産税という枠組みだけでなく、全ての税等(相続税、贈与税、法人税、消費税、所得税、固定資産税、社会保険料等)に関して最適なタックスプランニングを立案し、実行することを最重要視している。

著者紹介

連載相続対策の切り札「プライベートカンパニー」の活用術

余命一カ月の相続税対策

余命一カ月の相続税対策

福田 郁雄,木村 祐司

幻冬舎メディアコンサルティング

突然やってくる“その時”、わずかな時間でできる対策は限られています。しかし、正しいノウハウをもってすれば、相続税対策は2週間程度で完了、相続税をゼロにでき、それどころか、子孫に受け継いだ資産がその後も増え続けて…

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