親が亡くなった後、自分で賃貸不動産が管理できない障害のある子どものために、信託会社に託すことができます。ここではその具体例をご紹介します。

家族の課題

今回の事例となる家族の課題は次のとおりです。

 

Aさんは障害を持つ子ども、Cさんの先行きが心配でなりません。配偶者Bさんは昨年他界し、もう一人の子どもDさんはすでに独立しているため、Aさんが亡くなると、Cさんは1人で生活していかなければなりません。

 

日常の世話はこれまで同様、外部のサービスなどを利用するとしても、そもそもCさん1人でAさんの行っている不動産の経営、管理を続けることはできません。

 

そこで、Aさんは所有している賃貸用不動産を信託会社に信託し、自分亡き後はCさんが受益権を取得し、それによって生活ができるようにしたいと考えています。ただ、そのためには、Dさんの納得を得る必要があります。

 

Aさんは、Cさん亡き後の受益権をDさんに取得してもらうこととし、それで納得してもらおうと考えています。

このケースで信託を利用するメリット

①Aさんが生存している間は不動産の管理を信託会社に任せることで、自分はCさんとの時間を大事にしながら、その面倒を見ることができるようになります。

 

②Aさんが死亡しても不動産の管理は信託会社が継続して担当するので、Cさんは管理その他について関与する必要はなく、従来通りの生活を送れます。

 

③Cさん亡き後はDさんが受益権を取得するので、CさんとDさんの間でトラブルが発生する可能性が低くなります。もし、Cさん、Dさんの年齢があまり変わらないなどの事情があるようであれば、Dさんの子どもにも受益権を与えておいてもよいかもしれません。

信託を実行すると・・・

①信託契約締結時

委託者であり、第一受益者であるAさんと信託会社T社で契約を締結します。
信託財産の所有権移転登記、所有権の信託登記をし、委託者から受託者へ不動産の管理を委ねます。
その結果、AさんはCさんと過ごす時間も増え、Cさんの監護に専念することができるようになります。

 

②Aさんの死亡後
第一受益者であるAさんの死亡後、子どものCさんが受益権を取得し、T社が不動産の管理を続け、Cさんが収益を受け取ります。
なお、Cさんが取得した受益権は相続税の課税対象になります。

 

③Cさんの死亡後
受益者は子どものDさんとなります。信託不動産からの収益はDさんに払われることになります。なお、Dさんが取得した受益権は相続税の課税対象になります。

 

本連載は、2013年12月2日刊行の書籍『資産運用と相続対策を両立する不動産信託入門』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

資産運用と相続対策を両立する 不動産信託入門

資産運用と相続対策を両立する 不動産信託入門

編著 千賀 修一

幻冬舎メディアコンサルティング

高齢の不動産オーナーなどは、老後の不動産管理や賃貸経営、そして相続に関して、さまざまな不安要素が生じてくるものです。不動産管理に関する知識がなかったり、あるいは財産を目当てとした思わぬトラブルなどが発生したりし…

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