今回は、相続発生後、複数の遺言書が出てきた場合の対応法について見ていきます。※本連載は、弁護士・山下江氏の著書、『相続・遺言のポイント50』南々社)の中から一部を抜粋し、相続・遺言書の意外に知られていない、財産分与に関連のある法律についてわかりやすく解説します。

遺言書が2通以上ある場合は「新しいもの」が優先

甲野太郎さんが亡くなって、相続人として太郎さんの子である甲野花子さん、甲野一郎さんがいた場合を考えてみます。遺言書が2通発見された場合、どちらの遺言書が有効なのでしょうか?

 

このような場合、遺言書の日付が一番新しいものが優先することになっています。そのため、まずは遺言書の日付を確認することが大事です。これは遺言書の種類(自筆証書遺言か公正証書遺言かなど)にかかわりません。

 

それでは、常に日付が新しい遺言書が優先し、日付が古い遺言書は常に無効なのでしょうか? これについては、内容が矛盾しないのであれば、古い遺言書も新しい遺言書に矛盾しない限りで有効になります。

 

イラスト/momonga

 

それでは、下記図表の遺言書について見てみましょう。まず、遺言書の作成日付を見てみると、右側の遺言書は左側の遺言書の1年後に作成されています。そうすると、右側の遺言書が優先することになります。


[図表]遺言書が2通以上ある場合

 

 

第1条を見ると、甲土地について相続する者が異なっているので内容が矛盾しています。そうすると、新しい右側の遺言書の内容が優先し、古い左側の遺言書の内容は無効となります。そこで、甲土地については花子さんが相続することになります。

 

これに対して、第2条について見ると、左側の遺言書では乙建物を甲野花子に相続させるとし、右側の遺言書では丙建物を甲野一郎に相続させるとしています。乙建物と丙建物は別の不動産なので、それぞれを別人が相続しても矛盾しません。

 

そうすると、左側の遺言書は日付が古いものの、第2条に関しては、内容が矛盾していない以上、有効です。したがって、乙建物については花子さんが、丙建物については一郎さんが相続することになります。

遺言書は発見してもらえるように保管する

なお、せっかく遺言書を書いても、後で相続人が発見してくれなければ全く意味がありません。

 

そこで、遺言書を作成したら、弁護士などの専門家に保管を依頼し、このことを将来の相続人にも伝えておくとよいでしょう。

 

◆まとめ◆

遺言書が2通以上ある場合、遺言書の形式にかかわらず、日付が新しいものが優先します。しかし、内容が矛盾しない場合は、矛盾しない範囲で日付が古い遺言書も有効になります。また、死後きちんと遺言書を相続人に発見してもらえるよう、弁護士に預けるなどしていると安心です。

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    本連載は、2016年5月20日刊行の書籍『相続・遺言のポイント50』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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