今回は、一部の相続人に認められる「遺留分」の概要を見ていきます。※本連載は、弁護士・山下江氏の著書、『相続・遺言のポイント50』南々社)の中から一部を抜粋し、相続・遺言書の意外に知られていない、財産分与に関連のある法律についてわかりやすく解説します。

被相続人から見て「完全には自由にできない」部分

被相続人は、遺言や生前贈与などによって自分の財産を誰にどのように引き継がせるかを自分で決められます。

 

例えば、被相続人X(相続人は配偶者P、子A、子Bの3人とします)が「全ての遺産をAに相続させる」という遺言書を残していたとします。

 

PとBは、被相続人の遺産に関して何も権利がないのでしょうか。遺言がなければ、Pは2分1、Bは4分の1の法定相続分があるわけですから、PやBはXの遺産を相続できると期待していたはずです。

 

これに対処するため、法は、「遺留分」という権利を認め、PやBの利益を一定の範囲で保障しています。遺留分は、被相続人の財産における一定の割合として認められています。被相続人から見れば自分の財産なのに完全には自由にできないもの、相続人から見れば被相続人が死んだ後にはこれだけは最低限取得し得るもの、それが「遺留分」です。遺留分以外の部分、つまり被相続人が完全に自由にできる部分のことを「自由分」といいます。

 

遺言を作成する際、遺留分を念頭に置いておくことは重要です。誰かの遺留分を侵害する遺言も有効ですが、その場合、後で述べる遺留分減殺請求の形で、相続人間の紛争に発展する可能性があるからです。

遺留分の有無・割合は、相続人の組み合わせで変わる

遺留分は全ての相続人に認められるわけではありません。遺留分が認められるのは、相続人のうち、被相続人の配偶者、直系卑属(子、孫など)、直系尊属(父母、祖父母など)のみです。被相続人の兄弟姉妹が相続人になる場合の兄弟姉妹には遺留分はありません。

 

また、各相続人に遺留分がどれだけ認められるかは、相続人の組み合わせによって異なります。まず、相続人全員に合計として認められる遺留分(「総体的遺留分」といいます)は、直系尊属のみが相続人の場合は被相続人の財産の3分の1、それ以外の場合は2分の1です。

 

この総体的遺留分を、遺留分を持つ相続人同士の法定相続分割合で配分したものが、各相続人の個別の遺留分(「個別的遺留分」といいますが、単に「遺留分」という場合これを指していることが多いです)となります。

 

言い換えると、兄弟姉妹と配偶者が相続人の場合は「総体的遺留分=配偶者の個別的遺留分=2分の1」となり、これ以外の場合は「個別的遺留分=総体的遺留分×法定相続分」となります。

 

冒頭の例では、総体的遺留分は2分の1、各相続人の個別的遺留分は配偶者のPは4分の1(総体的遺留分2分の1×法定相続分2分の1)、子A・Bは各8分の1(総体的遺留分2分の1×法定相続分4分の1)となります。

本連載は、2016年5月20日刊行の書籍『相続・遺言のポイント50』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

相続・遺言のポイント50

相続・遺言のポイント50

山下 江 編著

南々社

相続に関する法律は少々複雑であり、これらを直接読んで理解するのは困難です。しかし、相続は誰にでも発生する問題であり、誰もが理解しておくべき事柄だといえます。 相続の本の中で、一番わかりやすい内容を目指した本書は…

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