今回は、法定相続分に加算される「寄与分」について見ていきます。※本連載は、弁護士・山下江氏の著書、『相続・遺言のポイント50』南々社)の中から一部を抜粋し、相続・遺言書の意外に知られていない、財産分与に関連のある法律についてわかりやすく解説します。

期待以上の貢献をした相続人に加算される「寄与分」

寄与分(きよぶん)とは、被相続人の財産の維持または増加に特別の寄与(通常期待される程度を越える貢献)をした相続人がいる場合、遺産から寄与分を控除して相続分を算定し、寄与相続人の相続分に寄与分を加算する制度です。

 

特定の相続人が、被相続人の財産の維持または増加に特別の貢献をした場合、遺産を単純に法定相続分に従って分割すると、不公平になってしまいます。これを是正しようとするのが寄与分の制度です。

 

寄与分を主張できるのは相続人に限られます。したがって、相続人の配偶者(例:被相続人父の面倒を妻がみてくれていた場合の妻)、相続人の子、内縁の妻や事実上の養子などは相続人ではないので、寄与分の主張はできません。

 

ただし、相続人の配偶者や子に被相続人に対する特別の貢献があり、その貢献を相続人自身の貢献とみなすことができる場合には、その相続人の寄与分として主張することができます。

寄与分があると認められる場合とは?

寄与分は、被相続人の事業に関する労務の提供(家業従事型)または財産の給付(金銭等出資型)、被相続人の療養看護(療養看護型)そのほかの方法により被相続人の財産の維持または増加に特別の寄与をした場合に認められます。重要なことは、単なる寄与ではなく特別の寄与であることです。

 

①家業従事型

 

家業である農業や商工業などに従事した場合です。家族が家業を手伝うことは通常見られることから、家業に従事すればそれだけで寄与分があると認められるわけではありません。提供した労務の対価としては著しく不十分な報酬しか得ていない、労務の提供が相当期間に及んでいる(個別具体的な判断が必要ですが、少なくとも3、4年程度)などの事情が必要です。

 

被相続人が経営する会社に対して労務を提供しても、あくまで会社に対する貢献なので、原則として、寄与分があるとは認められません。ただし、会社と被相続人とが経済的に極めて密着した関係にあったと言える場合には、被相続人に対する寄与と見る余地があります。

 

②金銭等出資型

 

家業や被相続人に対する財産的援助をした場合です。不動産の贈与・購入資金援助・無償使用、事業への資金援助などが考えられます。

 

③療養看護型

 

病気療養中の被相続人の療養看護に従事した場合です。夫婦間には協力扶助義務、親族間には扶養義務・互助義務があるので、単に被相続人と同居してお世話をしたという程度では認められません。

 

被相続人が親族による療養看護を必要としていた、著しく不十分な報酬しか得ていない、相当期間に及んだ(個別具体的な判断が必要ですが、実務上は1年以上が必要とされることが多いです)、多大な負担を負った(例えば、仕事を辞めて療養看護に専念した)といった事情が必要です。

 

④その他

 

被相続人の扶養を行い、被相続人が生活費などの支出を免れた場合(扶養型)、被相続人の財産管理を行い、被相続人が財産管理費用などの支出を免れた場合(財産管理型)などがあります。

 

 

寄与分(家業従事型)の例

イラスト/momonga

本連載は、2016年5月20日刊行の書籍『相続・遺言のポイント50』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

相続・遺言のポイント50

相続・遺言のポイント50

山下 江 編著

南々社

相続に関する法律は少々複雑であり、これらを直接読んで理解するのは困難です。しかし、相続は誰にでも発生する問題であり、誰もが理解しておくべき事柄だといえます。 相続の本の中で、一番わかりやすい内容を目指した本書は…

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