前回は、不動産の初期投資を回収するまでの期間を計算する方法を説明しました。今回は、新築物件と築10年未満の物件を比較し、不動産投資に向いているのはどちらなのかを見ていきます。

新築物件は家賃の下落率が高く、利益に影響を与える

次は、物件の築年数、保有年数ごとの購入と売却についてみてみます。

 

●新築の物件新築

 

プレミアム家賃(相場家賃より1割から2割アップ)での入居となるので、運用する中で家賃の下落幅が大きくなり、築10年までで家賃が1割ほど低下します。そのため、その下落幅を見越して出口を選定する必要があります。

 

例を挙げてみましょう。

 

利回り7.5%、家賃8万円、年収576万円、練馬の6世帯木造アパートを金利1.5%の30年ローン、7680万円で購入したお客様がいました。5年後に売却しようとしたときに、家賃が7万5000円に下がっていると想定すると(新築の約6%下落)、年収540万円となります。

 

一方、返済は月21万3333円ずつ、60カ月では1280万円進むものの家賃下落が大きく、購入金額と同額で売却したとしても540万円÷7680万円=7.03%となり、利回りは低下しています。

 

さらに、取得経費と売却経費と元本返済を加味して利回りを計算すると、540万円÷(7680万円+768万円〈取得費〉+230万円〈売却経費〉-1280万円)=7.3%となります。多少売却利回りは上がりましたが、5年では購入時と同じ7.5%の利回りで売却できないということになります。

 

10年後の売却を考えた場合、家賃は7万2000円まで下がっている(新築時の10%減)と考えられますので、518万4000円の年収とします。120カ月時点では、元本返済は2187万2194円進んでいます。

 

利回り7.5%で売却する場合は、518万4000円÷7.5%=6912万円となります。このとき残債は5492万7806円ですので、売却益は6912万円-768万円(取得費)+230万円(売却経費)-5492万7806円=421万2194円となります。

 

10年後に売却しようとした場合、利益は出ますが、投資総額に対して約5%の利益にすぎません。

 

原因として、新築は建物工事業者の利益が上乗せされていることと、新築プレミアム賃料の下落率に影響されることが挙げられます。そのため、あまりお薦めできません。

家賃の下落が小さく売却もしやすい築10年未満の物件

●築10年未満の物件

 

この築年数では、新築プレミアム家賃から1割ほど低下しています。

 

新築で購入した大家さんは、最大でも25~30%程度しかローン返済できていないということが多く、そのため、売却利回りは低めに設定されているケースが大半です。ただし中古とはいえ、まだまだ修繕も少なくて済むため、安く買える可能性があります。

 

また、木造であれば耐用年数22年に対して残12年、RC造であれば30年やそれ以上での融資が可能ですので購入がしやすく、金利の安い金融機関を選択できるというメリットがあります。

 

ただ、現在の入居者の家賃が新築プレミアム並みである場合、家賃下落が大きいため、退去の際に募集家賃が5~10%下がってしまったということがないように注意が必要です。

 

ただし通常の相場家賃である場合は、年間の家賃下落は1%程度みておけば問題ないでしょう。

 

新築の項で解説した練馬の物件が築10年と想定すると、利回り7.5%、家賃7万2000円、年収518万円、練馬の6世帯アパートを金利1.5%の25年ローン、6900万円で調達したとします。

 

5年後に売却しようとしたときに、築10年~15年の場合、家賃下落はほとんどないため518万円の年収で計算をしてみます。

 

返済は月19万7337円進み、60カ月では1219万6387円返済。購入金額と同額にて売却をした場合、賃料は下がらないので利回りは低下せず、1219万6387円(元本返済金額)-取得経費+売却経費(6900万円×13%=897万円)=322万6387円がそのまま売却利益となり、60カ月の保有期間中のキャッシュフローもまたそのまま利益となります。

 

また、築10年までの物件は大規模修繕を実施せずに済むことも多く、売却がしやすいというメリットがあります。

本連載は、2016年5月31日刊行の書籍『不動産投資は「土地値物件」ではじめなさい』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

不動産投資は「土地値物件」で はじめなさい

不動産投資は「土地値物件」で はじめなさい

菅谷 太一

幻冬舎メディアコンサルティング

「区分マンションは初期投資が少ない=ローリスク」 「都心の新築物件は空室率が低い=ローリスク」 そう思い込んでいませんか? 不動産投資成功の必須条件はきちんとした投資目線を持つことです。 本書では“儲かる”物件…

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