今回は、遺産分割の優先順位について見ていきます。※本連載は、弁護士・叶幸夫氏と、税理士・山下薫氏の監修書籍、『マイナンバーでこう変わる!遺産相続:遺言書の書き方から節税対策まで』(徳間書店)の中から一部を抜粋し、今から心得ておきたい新時代の相続・贈与の基礎知識を紹介します。

通常は遺言書に基づいて財産分与されるが・・・

たとえば親が死亡したとき、その財産を誰と誰が引き継ぐかは、民法で決められた相続順位があるほか、遺言書があれば、遺言書に基づいて財産分与が行われます。

 

もちろん、遺言書のとおりにしなければいけないということはなく、「遺留分」という配慮などがあります。「遺留分」とは、理不尽な遺言書が遺された場合などに、それを是正するために相続人の立場に応じた相続を保証するものです。

 

たとえば、何度も映画化された『犬神家の一族』では、故人が赤の他人である恩人の娘に遺産を譲るという遺言書を書いたことが騒動のきっかけになりました。しかも、その娘が、自分の3人の腹違いの娘が生んだそれぞれの息子である孫の誰かと結婚することという条件をつけたために、陰惨な殺人事件にまで発展しました。

 

[ここがポイント]

財産分与は、遺言書があるとないとにかかわらず、話し合いによって皆が納得できる決着になることが望ましいでしょう。これを「遺産分割協議」と言います。

 

遺留分を定めた法律が定められたのは昭和22年ですから、最初に映画化されたとき、昭和22年とテロップがはいっています。民法が定まるまえのお話にしているのです。

 

それはともあれ、遺言書があっても、相続人全員で話し合いがつけば、どのように分けても構いません。遺言書がない場合でも、相続人同士の話し合いで決まればそれに越したことはありません。

 

しかし、遺言書がなく、相続人同士の間で話し合いがつかなかった場合のために、民法はそれぞれの〝分け前〟を定めています。これを「法定相続分」と言います。

 

[ここがポイント]

遺言書もなく、相談の結果互いの意見が一致しなかったときのために、民法では「法定相続分」を定めて、それに従っての財産分与を勧めています。

相続の「分け前」は常に配偶者が優遇されている

そしてこの〝分け前〟は、生前の夫婦仲が悪くて離婚寸前だったとしても、つねに配偶者が優遇されているのです。

 

<配偶者と第一順位の子どもが相続人だった場合>

 

配偶者が2分の1で、子どもは残りの2分の1を人数分で分けます。つまり、子どもが1人ならば2分の1、2人ならば2分の1の2分の1で4分の1、3人ならば、2分の1の3分の1で6分の1になります。

 

<配偶者と第二順位の故人の親が相続人だった場合>

 

配偶者が3分の2で、故人の親が3分の1です。親が両親とも健在だったら、3分の1を2人で分けることになります。

 

<配偶者と第三順位のきょうだいが相続人だった場合>

 

配偶者が4分の3で、きょうだいは、残りの4分の1を分けることになります。したがって、きょうだいが多い場合は、1人の取り分ははるかに少ないことになります。

 

[ここがポイント]

配偶者と子どもで分ける場合の法定相続分は、配偶者が2分の1と定められ、配偶者と親とで分ける場合の法定相続分は、配偶者が3分の2と定められています。

 

<代襲相続人の場合>

 

祖父の財産を受け継ぐのは、その子どもですが、その子どもがすでに死亡していた場合、子どもの子ども、すなわち孫が、父親が受け取るべき相続分をそっくり受け継ぐことになります。

 

すなわち、父が一人息子だった場合ならば、配偶者である祖母が2分の1、孫である代襲相続人は2分の1。父親にきょうだいがいた場合は、この2分の1をきょうだいと分け合うことになります。

 

本連載は、2016年2月29日刊行の書籍『マイナンバーでこう変わる!遺産相続:遺言書の書き方から節税対策まで』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

マイナンバーでこう変わる! 遺産相続:遺言書の書き方から 節税対策まで

マイナンバーでこう変わる! 遺産相続:遺言書の書き方から 節税対策まで

叶 幸夫・山下 薫

徳間書店

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