実は販売側の都合で採用!? マンションの「フローリング」の真実

前回は、マンションのドアに採用されることが多い「開き戸」の使いにくさについて説明しました。今回は、マンションのセールスポイントとしても使われる「フローリング」の裏に隠された業界事情を見ていきましょう。

お手入れラクラク素材の使用は「クレーム対策」

室内の素材にも効率優先の思想が見え隠れします。効率とは事業原価を直接的に下げること以外に、社内の人件費を下げる手法もあるのです。

 

その手法を説明する前に、「お手入れラクラク」でセールスポイントにもなるフローリングについて説明します。

 

多くの人はフローリングとは木の床のことと思っているようですが、今どきのマンションのフローリングは木ではなく、表面の木目調シートに傷がつきにくいようコーティング材で塗り固めた人工素材です。

 

これはワックスがけをしなくても表面の光沢を保ち続ける特徴があります。手間要らずで新築時の美しさを保てるため、売る側はその側面をアピールし、主婦にうれしいラクラク素材と宣伝します。

 

実際、購入後数年間はこのラクチンな状態はキープされるので、その間はクレームが出ることはありません。

 

自然の木材は気候に合わせて伸縮するなど、施工の技術によっては多少の歪みが出たりすることがありますが、化学的に作られたフローリングではそのようなことも皆無であるため、クレームの数を減らす対策としては有効です。

 

もうひとつの理由は建築費の削減です。シート状になったフローリングなら、木の性質に合わせて、微妙なバランスを考えて施工するなどといった手間はありませんから、無垢材施工に熟練した職人にお願いする必要はありませんし、そもそも材料費が安いので、建築費の引き下げに有効となります。

 

さて、このようなお手入れラクラク素材を使用することで購入者からのクレーム件数を減らせば、対応窓口の人員を削減することが可能になります。

 

最近はほとんどの会社でお客様窓口を設けていますが、この部署は企業にとって義務ではないものの、利益を上げない部署ですので、銀行から出向してくるような財務担当役員が、損益計算書を基に経営状況を一元的に見てしまうと削減したくなる部署に見えるのです。

 

そこで企業はクレームが発生しにくく、かつ購入者にメリットがあるように思われる素材を選択するようになるのです。

 

しかも、この企業の効率優先である「お手入れラクラク」のスローガンは近年、「顧客満足度」という美しい言葉に置き換えられています。

 

言葉だけで見れば、消費者にとって望ましい商品を提供しているように思えますが、住宅の場合、数年間クレームがなければ顧客満足度が高いとするのは、筆者には正しいことのように思えません。

 

というのも、例に挙げたフローリングが美しく保たれるのは、購入後、数年間程度でしかないからです。

お手入れラクラクの「ツケ」は意外と早くやってくる

私自身、一般に言うフローリングが張られたマンションに住んだことがあります。確かに入居当初の床は美しかったし、手間も要りませんでした。

 

しかし、長年踏みしめているうちにシートははがれ、めくれてもきます。特にキッチンとリビングの間など、頻繁に家族が往復したり、重いものを落としたりするような場所では凹むなど磨耗が激しくなりました。

 

そのまま放置すれば、やがては内部の接着剤で固められていた合板がむき出しになり、見た目が悪いだけでなく、足にとげが刺さるなど実害も出てきます。応急処置であれば見た目はともかくテープで固定する方法もありますが、家族が歩き回る場所なら時間の問題で、いずれはめくれ上がって応急処置では済まなくなります。

 

つまり、将来的には床を張り替えることになるわけです。リビングだけ張り替えようと思っても、同じカラーの在庫がなかったり、住戸全体の調和が取れなかったりなど、多少美意識のある人であれば、全面張り替えということになるでしょう。

 

そのための出費はかなりの金額になりますし、作業期間中に仮住まいする、あるいは和室1室で家族全員が生活をすることにもなるでしょう。当初のラクラクのつけは意外に早くやってくるのです。

 

フローリングのコーティングは3~5年程度は保たれるようです。1年で汚くなればクレームになる可能性がありますが、5年以上住んでしまえば、たいていの人はこれだけ住んでいたのだから仕方ないと思うようです。

 

しかし、住宅は最初の数年間だけキレイで、お手入れラクラクであればよいものなのでしょうか。それは本当に顧客満足度につながるのでしょうか。住宅の場合は、いわゆる品質保証という概念とは別に、もっと長期的な視点で購入者に満足してもらえることを目標にすべきだと考えます。

本連載は、2011年3月23日刊行の書籍『本物マンション購入計画』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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連載マンション購入に潜む落とし穴――あなたを惑わす売り手の営業手法

株式会社リブラン 代表取締役

1967年、東京生まれ。株式会社大京にて分譲マンション事業用地の仕入を担当。その後、1992年、株式会社リブランへ入社し、2002年、同社代表取締役に就任する。マーケットシェアを奪い合う分譲マンション業界で、同業他社とは同じ土俵で勝負しない経営スタイルを堅持。24時間、音楽漬けを可能とするマンション「ミュージション」の分譲、賃貸事業を行い、新たなマーケットの創造を行う。

著者紹介

本物マンション購入計画

本物マンション購入計画

鈴木 雄二

幻冬舎メディアコンサルティング

人生最大の買い物を間違えたくないと、慎重に選ぶマンション。しかし、誰もがマンション選びの常識と思っている情報が、実は売り手の都合に塗り固められたものだとしたら・・・。本書の前半では、住み心地よりも効率優先で作ら…

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