前回は、財務3表の基本的な知識及び、銀行側の重視するポイントについて説明しました。今回は、貸借対照表の概要と、銀行員はどこに着目して企業の資金をチェックするのかを見ていきましょう。

「貸借対照表」はいわば会社経営の通知表

貸借対照表(BS)は、企業の資産と負債、純資産の状態を示すものだ。会社として資金をどこからいくら集め、現在それをどこに投資しているのかを表しているといっていいだろう。

 

BSは大きく左右に分かれた表になっており、右側(「負債の部」及び「純資産の部」)と左側(「資産の部」)との合計が一致する。

 

右側には、お金を集めた方法が書いてある。ひとつは銀行からの借り入れなど「負債」であり、もうひとつは資本金や利益剰余金(内部留保)などの「純資産」だ。

 

左側にはそのお金をどのような「資産」に投資したかが書いてある。例えば、商品(在庫)、建物、土地などだ。

 

BSはこれまでの会社経営の成果、通知表でもある。すなわち、左側の「資産の部」から右側の上の「負債の部」を差し引くと、「純資産の部」になる。これが会社における現在の正味の財産である。

 

[図表]貸借対照表の構成例

銀行員は2期分を比較して資金の流れをチェックする

銀行員は必ず、連続する2期の貸借対照表を比較し、1年間に貸借対照表のどの項目がいくら増減したかをまとめた「資金運用表」を作成する。これによって資金の流れをチェックするのだ。

 

真っ先に見るのは「純資産の部」の中の利益剰余金だ。業績や業歴から見て、適正な額かどうかを見る。もし、これが減ってきているようだと要注意とみなされ、またマイナスとなって資本金の額を上回っていれば、債務超過とみなされる。

 

「負債の部」の短期借入金、長期借入金の合計額も重視する。総資産に対する比率、自己資本(純資産)との比率などがポイントとなる。また、短期借入金と長期借入金の合計額が増えていれば、その増えた分が「資産の部」のどこへ流れたか、また増えた資産がきちんと利益を生んでいるのかを、損益計算書に戻って確認する。

 

さらに、「資産の部」の現預金だ。これがキャッシュフローの目安となり、月商の何カ月分が手元にあるのかチェックされる。また、借入金とバランスがとれていることが重要である。現預金が多すぎると経営者の個人資金との混同や粉飾決算が疑われやすい。

 

そのほか、「資産の部」における売掛金や商品(在庫)の金額も必ずチェックされる。

 

売掛金については、何カ月も変化がなく焦げ付いていないか、過度に長い売掛期間になっていないか、売り上げを前倒しで計上していないかなどがポイントである。「負債の部」における買掛金とのバランスも大切だ。いずれも将来、現金の受け取りと支払いが発生し、資金繰りに大きく関係するからである。

 

「資産の部」における商品は在庫にあたり、同業他社と比較して過度に多い場合は「不良在庫」として資産から除外される。そのため、余分な在庫は持たないほうがいいといわれる。

 

また、商品の金額が数年にわたりほぼ一定の場合、二重帳簿の可能性があるとみなされる。二重帳簿では売り上げをごまかす手口が一般的で、実際の売り上げとの差を在庫で調整するためだ。

本連載は、2016年3月2日刊行の書籍『赤字会社を完全復活させる 逆転の融資交渉術』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

赤字会社を完全復活させる 逆転の融資交渉術

赤字会社を完全復活させる 逆転の融資交渉術

久松 潤一

幻冬舎メディアコンサルティング

苦しい経営を続ける中小企業も依然として多い中、企業にトドメを刺すのは資金供給のストップ、すなわち銀行の融資がおりなくなることです。バブル期のように、銀行が「借りてください」と頭を下げるような状況が再び訪れること…

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