ニュージーランドにおけるNZドル安政策の影響と政界等の反応

ニュージーランド準備銀行は、政策金利の緩和によってNZドル安を図ろうとしています。ニュージーランド不動産には、どのような影響がもたらされるのでしょうか? 各界の反応をもとに見ていきましょう。

追加緩和に踏み切らない準備銀行の事情とは?

「ニュージーランド準備銀行は政策金利を2.25%に抑え、さらなる緩和が必要であるとした。また、オークランドの住宅価格のインフレ再燃の可能性を示唆し、NZドル安を望むも、今回の決定を受けNZドルは1米セントから69.2米セントに上昇」

 

 

準備銀行は政策金利を予想されていたように2.25%としましたが、今年の終わりにも追加緩和の可能性を示唆しました。

 

 

しかし同行は、自国通貨安(NZドル安)を望んでいることについて再び言及し、オークランドの住宅価格の上昇を示す兆候があると述べました。

 

17人のエコノミストの内、3人(BNZ、キーウィ銀行、AMP)だけが今回切り下げが実施されると予想していたのに対し、多くのエコノミストは、新たな予測発表が含まれる6月9日の金融政策文書(四半期報)が発行されるまで、準備銀行は2.0%への切り下げを実施しないだろうと予想しています。

 

大半のエコノミストは、1.75%までのさらなる切り下げが年の終盤にあるだろうと予想する一方で、準備銀行は2.0%への追加緩和を想定しており、今日の声明書は2度目の追加緩和を予想している向きと異なるものでした。

 

エコノミストが期待する以上に今日の切り下げ実施に対する金融市場の期待が高かったため、切り下げを実施しないとする今回の決定が今朝の為替取引で10カ月連続のNZドル高(市場)に急激な上昇をもたらしました。

 

エコノミストらは政策発表が予想していたよりも穏健派寄りではなかったとする中、2年間の大口金利が7ベーシス・ポイント上げて2.26%になりました。

 

オーストラリアのインフレが予想以上に弱かったことを受け、金融市場による切り下げ実施への予想値は最終的に30%近くからほぼ50%へ増加しました。

 

NZドルは今回の決定を受けて1豪セント以上上げて、最高値を2ヵ月連続で更新し91豪セントとなり、水曜日には1豪セント上昇しました。こうした上昇は、準備銀行が6月期(四半期)に予想している貿易加重指数である70.9を超えて押し上げることになると思われます。

 

同指標が示す平均値は72.7、または予想値の2.5%増しであり、同行の昨日までの6月期の予想値を超えており、経済の非貿易財に対しデフレ圧力を加えることとなるでしょう。

 

 

ウェストパック・シニアエコノミストは以下のように発言しています。

 

「今日の声明書は、準備銀行が6月の金融政策文書で金融緩和の波に待ったをかけようとしていることを示唆しています」

 

「グレーム・ウィーラー総裁は切り下げを実施しない確たる理由を示していませんが、加熱する住宅インフレについて触れています」

貿易財部門を支えるために、自国通貨安を望む総裁

一方、ウィーラー総裁は決定事項と9項からなる声明書の中で「住宅価格は依然高く、追加の住宅供給が必要です。そしてその他の一部の地域においても住宅市場の圧力が高まっています」と述べています。

 

ウィーラー総裁は、乳業不振、インフレ予想の低下、高い移住率の維持、そして住宅市場で高まる(需要)圧力を含めた、世界および国内の不確定要因についても言及し、世界成長の見通しは中国および他の新興国の経済の減速によりここ数カ月悪化し、一部の物価が上がったものの依然低いままであると述べており、以下のようにも発言しています。

 

「通貨状況は、一部の国々による思慮深い量的緩和とマイナス金利政策により、国際的に極めて協調的にあります。金融市場の乱高下はここ数週間の間落ち着いていますが、各市場は主要な中央銀行の政策立案に注視しています」

 

「国内経済は、移住による人口増、建設事業、観光事業、協調的な金融政策に支えられています。乳製品の輸出価格は僅かに改善しましたが、大半の酪農家にとっては損益分岐点を下回っています」

 

[図表1]ニュージーランド準備銀行による金利引き下げ推移

 

さらに、ウィーラー総裁は自国通貨安を望む発言を再度しています。

 

「為替レートは、適切に設定されたニュージーランドの農産物の低い輸出価格に対し、依然高いままです。貿易財インフレを押し上げ、貿易財部門を支えるためには、NZドル安が望ましいのです」

 

NZドルは今回の決定を受け、最初の10分間でほぼ1米セント上げて69.2米セントとなりました。

 

[図表2]NZドル/米ドルの為替レート(2012年〜2016年)

[図表3]NZドル/対円の為替レート(2012年〜2016年)

期待外れとなった「短期インフレ予想」

ウィーラー総裁は、年間のコア・インフレ率が目標幅の1〜3%内に留まり、長期インフレ予想は2%に落ち着いたとしながらも、短期インフレ予想の材料が不足していると述べたほか、以下のようにも発言しています。

 

「原油安の影響から抜け出し、住居市場で高まる圧力に対応するため、インフレ率が高まることを期待しています」

 

「金融政策は協調的な状況が続くでしょう。将来的に平均インフレ率を目標範囲の中央値付近となるよう、さらなる緩和措置が必要になるかもしれません。今後の経済データを注視していきます」

 

<エコノミストの反応>

 

ウエストパック準備銀行は、以下のように述べています。

 

「さらなる金融政策緩和が必要とした、同行の3月の発表を踏襲したものです」

 

「このさらなる金融政策緩和が必要という表現が、さらなる政策緩和の可能性があると強化されることを予想していました。これは、準備銀行がこの緩和の波の中で頻繁に使用する表現であり、金利切り下げが差し迫っていることを示唆しています」

 

「NZドルが準備銀行の前回の予想を約3%超えて取引され、そしてより高い銀行の資金調達コストと、3月の政策金利切り下げが、住宅ローン金利に完全に落とし込めなかったことを意味しているという2つの要因から、今日の声明書からより強い緩和バイアスが予想できます」

 

「しかし、今日の声明書でのNZドルに関する表現は3月のものと変わりはなく、住宅ローン金利に至っては数値の記載がなかったため、返って目立ちました」

 

「結局のところ、今でももう一度25ベーシス・ポイントの政策金利切り下げが6月に実施されると予想していますが、実際のところは市場が準備銀行にそうするよう圧力を強めているのです」

 

ANZのチーフエコノミストは、今回の声明が誰にとっても意味のあるものだったと述べています。以下ANZチーフエコノミストの発言内容です。

 

「極端に言えば、今回の声明のトーンは3月のものに比べて、わずかに穏健派寄りのものではなくなりましたが、公正を期す為にもそうせざるを得なかったでしょう(=やや穏健派離れすること)」

 

「6月に政策金利の切り下げをする可能性はありますし、私たちの予想が的中する可能性もあります。しかし、これは判断の難しいところです。切り下げ実施の可能性は約60%とみています」

 

 

「乳業不振、他国の中央銀行が仕掛ける通貨ゲームによるNZドル高、低インフレ予想、資金調達コストへの圧力、世界金融市場の乱高下の煽りなど、切り下げを行う理由はいくらでもあるのです」

 

「しかし、未だに線形傾向で回っている自国経済が一方的に不利になった時や、コア・インフレの定着化、住宅市場の圧力上昇、輸出の実証分析への再てこ入れ、そして住宅市場ブームを考慮すると、追加緩和が経済にとって最善ではないという私たちの見解が変わることはありません」

 

ASBチーフエコノミストは、準備銀行の予想を元に、同行が6月に金利切り下げを行うと予想しています。以下ASBチーフエコノミストの発言内容です。

 

「今回の声明書は3月のものに比べわずかに性急性を増していますが、準備銀行による最新予想が示すように、同行が政策金利を2%以下の水準に引き下げられると予想しているかは不明です」

 

「しかしながら、私たちはインフレ見通しへのダウンサイド・リスクがあるとみており、準備銀行が政策金利を8月までに1.75%まで下げると予想しています」

 

「今ますます明らかになってきていることは、3月の政策金利切り下げ実施前から住宅市場が勢いを増していたということです。政策金利の追加緩和は住宅市場にさらなる勢いを与え、準備銀行が掲げる物価安定という目標を伴った金融の安定化が一層困難となるでしょう」

 

「準備銀行が政策金利の追加切り下げを実施すれば、今の貸し出し規制もまた拡大されるでしょう。しかし過去数年の実績を見る限り、需要と供給のバランスが失われた際には、そうした規制は一時的な効果しかもたらしません」

 

「これはいつも準備銀行が使う論調の強弱の切り替えに過ぎず、歯がゆい状態が続きます」

 

「今直面している問題に今まで以上にバランスのとれた見解を持って、準備銀行が今回の声明でわずかに緩和の流れから後退したことは評価に値します」

 

今日の政策金利切り下げ実施を予想していたBNZは、準備銀行が切り下げを実施せず、3月の声明程には穏健派寄りでない声明を出したことを歓迎するとしています。

 

<政界の反応>

 

レイバー・ファイナンスのスポークスマン、グラント・ロバートソン氏は、政府が現状に満足しているために準備銀行は身動きが取れない状況にあると述べています。以下グラント・ロバートソン氏の発言内容です。

 

 

「グレーム・ウィーラー総裁は、世界経済、オークランドおよびその他の地域での住宅価値の上昇、乳価不振について憂慮していると明言しています。しかし、これら問題に対する政府の対応はなく、そのため準備銀行は打つ手がないまま、ただ現状に甘んじるしかないのです」

 

「ビル・イングリッシュ氏の現状への満足が、経済を待機状態に押しやっています。インフレは存在せず、為替レートは依然高く、一人当たりの生産性の伸び率は【不活性】とエコノミストらに評されています」

 

 

「一方で住宅価格は再び青天井な状況を迎え、ウィーラー総裁は住宅ブームがオークランドから他の地域へ拡大していると警告しています。住宅の高騰は、ビジネスを奨励し、労働者を呼び込もうとする地域にとって打撃となるでしょう」

 

「ウィーラー総裁が一人で全てできるわけではありません。政府が前面に立って動かなければなりません。そうすることで、準備銀行がやるべきことがし易くなるのです。酪農依存の経済に多様性を与える施策と、住宅市場を統制する抜本的な政策が必要なのです」

 

グリーン・ファイナンスのスポークスウーマン、ジュリー・アン・ジェンター氏は、政府がオークランドの住宅市場改善に失敗したことが原因で、準備銀行が政策金利を維持せざるを得ない状況を作り出し、その結果、輸出業者と業界が打撃を受けていると述べています。以下ジュリー・アン・ジェンター氏の発言内容です。

 

 

「準備銀行は、手に負えないオークランドの住宅価格と、適切な住宅供給が行われていないことが、今回政策金利の切り下げを行わなかった主な理由の1つだとはっきりと述べています」

 

「国は、オークランドの住宅価格インフレ対策を金利政策の一手しか持たない準備銀行任せにするのではなく、強力な方策を導入して住宅価格インフレを抑え込む必要があります」

 

「より高い金利がNZドル高状態を長引かせて輸出を圧迫し、2009年4月以来最大の年間貿易赤字に転落しました」

 

「不動産投資での不公平な税制上の優遇措置を撤廃するために政府がとるべき責任ある政策は、包括的なキャピタルゲイン税(家族向け住宅を除く)の導入でしょう。もし政府が真剣にオークランドの住宅供給に取り組むつもりならば、もっと住宅を建てるべきです。特に手頃な住宅を建てることで、不動産投資家ではなく初回住宅購入者を支援するのです」

 

エコノミスト及び政界は、依然、政策金利低下と住宅価格の上昇を予想しており、移民政策による経済成長を続ける限り、住宅供給の改善には多くの時間がかかると予想されています。

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Goo Property JP(TERRY’s WAY株式会社) 代表取締役社長

1992年、奈良県天理大学中退。1993年、個人輸入代理店を起業。ITシステム開発会社のジョイントベンチャー設立などを経て、2003年、グルメデリバリーシステム株式会社(現:Terry’s Way株式会社)を創業。自ら開発した富良野メロンパンの移動販売を手掛け、2004年よりフランチャイズ募集を開始(2007年、100加盟店を達成)。現在は、Terry’s Way株式会社 FOOD事業部として展開中。

2009年、富裕層向け国際会計サービス HENRY INVESTMENT SERVICES pte.ltdを元PWC国際会計士と共同設立(本社:シンガポール)。海外金融サービスや投資スキームのコンサルティングサービス、富裕層開発のマーケッターとして、顧問社数は現在200社を超える。2014年より、海外投資サービスの一環として海外不動産投資のリサーチを開始。2015年、ニュージーランド不動産投資コンサルティングサービスを開始し、GOO Property NZ LimitedをNZ不動産エージェントと共同設立。GOO Property ジャパン (Terry’s Way株式会社)と共に不動産投資コンサルティングサービスを行う。
WEBサイト http://gooproperty.com/

著者紹介

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