前回は、信頼できる不動産会社を選ぶために、どのような点に注目すべきかを説明しました。今回は、不動産会社の信用性を測ることができる「自己資本比率」について見ていきます。

経営の安全性を測る代表的な指標「自己資本比率」

不動産会社の社員が自社物件を買わない理由には、物件への評価が低い以外に、自社の経営状態に不安を感じていることもあり得ます。倒産するかもしれないような会社の商品を買うのはこれまた馬鹿な話です。

 

そんな失敗をしないためには、買う相手の経営状態はしっかりとチェックすべきです。そのための指標のひとつとなるのが自己資本比率です。

 

これは経営の安全性を見る代表的な指標で、企業が事業に使う資金のうち、負債に頼らない自己資本がどのくらい占めているのかを表します。銀行から融資を受ける必要のあるデベロッパーを選ぶには特に重要な指標です。

 

[図表]会社の安全性を見る自己資本比率

 

簡単に言うと、会社の資産のうち、借金でないものの割合がどの程度あるのかという意味で、自己資本比率が高いほど安定性が高く、低くなるほど借り入れに依存した経営ということになります。一般的に40%以上であれば倒産しにくいと言われています。

 

借金に依存した経営には、いくつかの問題があります。ひとつは倒産リスクが高くなること。借金が多いのですから当然ですが、経営がうまくいっていても、外的な経済環境の変化により銀行が融資をストップするとそれだけで倒産してしまう可能性も出てきます。

 

実際、リーマンショック以降のデベロッパーの倒産の中には黒字倒産と呼ばれるものがいくつかあります。

 

代表的な事例は、2008年8月に民事再生法を申請したアーバンコーポレイションです。企業としての規模が大きく、事業も比較的順調でしたが、銀行の融資が受けられず資金繰りが行き詰まりました。つまり、借り入れ依存度が高すぎたということでしょう。

 

もうひとつ、たくさん借金をしている会社は銀行の顔色を見る経営になりがちです。デベロッパーはよい住宅を作ることが仕事ですが、銀行は企業に投下した資金を回収することが仕事です。

 

デベロッパーが銀行の顔色を見すぎると、よい住宅を作るよりも、利益の高い住宅、回収期限の早い事業を優先するようになります。つまり、長く、満足して住める住まい作りよりも、短期的に利益の上がる方向へ走るのです。

 

また、すぐに利益につながらない新技術の開発やライフスタイルなどの研究への費用を惜しむようになり、最新設備のような、セールストークになりやすいものにコストをかけるようにもなります。

 

本来住宅が大事にしなくてはいけない住み心地を高めるための開発や研究よりも、味付け的な設備が重視されるのです。

 

不動産業界は、上場、非上場を問わず自己資本比率の低い会社が多い業界です。少し大袈裟ですが、事業資金は全部借り入れで賄わなければ事業が進められないという会社もあるほどです。

自己資本比率が低い会社、それを教えない会社は避ける

では、自己資本比率はどうやれば知ることができるのでしょう。上場企業であれば、インターネットで日本経済新聞社の株式情報などを見れば掲出されています。

 

業界大手と言われる会社でも20%台、中には20%を切るような会社もあり、安定ラインの40%を越すような会社はあまりありません。

 

上場していない会社はどうして調べればいいのか? これはなかなか難しい問題です。モデルルームにいる営業マンに直接聞いてみても、その場で答えは返ってこないことが大半でしょう。営業マンは商品情報に詳しくても、企業情報には疎いことが多いのです。

 

商品を作っている会社の経営状況も知らずに製品を売るのはずいぶん無責任なことに思えますが、現実はそうはなっていません。

 

ただ、その場では答えられないとしても、営業マンが調べたり、本社に問い合わせをしてくれるなどして、後日教えてもらえたりするようなら、誠実な会社と考えてもよいかもしれません。

 

しかし、中には知っていても答えられないということもあるかもしれません。あまりに比率が低すぎて、経営状況に不安を持たれてしまうという恐れがある場合は、教えてくれないかもしれません。

 

つまり、ブランドイメージが高いとか、上場しているとかではなく自己資本比率が低い会社や、教えてもらえないような会社は避けた方が無難だということです。

 

購入後、会社が倒産してしまった場合、メンテナンスや管理に不安がありますし、倒産企業のマンションというイメージがついてしまいます。マンションは買ってしまえば、それでおしまいという商品でもありません。

 

マンションは、財務体質が健全な会社か否かをヒアリングしてから買うことです。それが将来に不安を残さないことにつながるのです。

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