中小企業のオーナー社長のなかには、会社を継いでくれる適任者が見つからず、後継問題に頭を悩ませている人も少なくありません。本連載では、事業承継の悩みを解決する「M&A」という選択肢について紹介していきます。

中小企業の約3分の2が後継者不在の問題を抱えている

「社長に定年はない」という言葉どおり、中小企業のオーナー社長は、意欲と丈夫な身体がある限り、何歳まででも社長を続けることが可能です。事実、70歳を過ぎても「まだまだ元気。若いものには負けん」と意気軒昂なオーナー社長も多いものです。けれども、どんなに元気で経営の才や人望がある人でも、いつかはリタイアするときがやってきます。

 

子どもや親族など、後継の意思を示してくれる人物が社内外にいて、次の社長となる日のために経験を積み、社長業の修業を熱心にしてくれている。そんな理想的な姿ももちろんありますが、割合としては少数です。現実は、下記の図表1にも示したように、現在、国内の中小企業では、約3分の2で後継者が不在なのです。

 

【図表1 企業の3分の2が後継者不在という現状】

 

さらに問題なのが、当のオーナー社長自身が高齢化してきているという現実です。下記の図表2にあるとおり、60代になっても実に6割弱の会社では後継者が不在のままです。さすがに70代、80代では後継者不在の比率は下がっていきますが、80代でも3分の1以上の中小企業では後継者が不在のままなのです。

 

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【図表2 年代別に見る事業後継者の有無】

 

もう少し詳しくデータを見てみましょう。帝国データバンクが2011年にまとめた「後継者不在企業の実態調査」によれば、地域別では北海道、中国地方がいずれも不在率が7割を超えて高くなっています(全国平均65.9%)。

 

同調査の売り上げ規模別の分析では、年商で100億~1000億円未満では不在率が40.5%なのに対し、1億~10億円では66.5%、1億円未満では76.3%と、年商が少ないほど後継者不在率は高くなっています。さらに、業種別ではサービス業が72.1%、建設業が69.6%と後継者不在率の上位を占めています。

 

これは、あくまでデータ上の数字ですが、自身が経営する会社の規模や業種なども思い起こし、早めの承継準備を意識してみてはいかがでしょう。

 

仮に親族や従業員の中に後継者候補が見つかったとしても、経営に必要な心構えや社業に必要な知識や人脈を引き継ぐ準備には相応の時間が必要です。まして、思い切って株式公開を目指す、M&A(本連載では、第三者への事業承継と定義します)といった別の着地点を探るのなら、専門のコンサルティング会社に相談する時間も含めて、十分な準備期間が必要となります。

経営者が余裕を持って事業承継に取り組むことが重要

自身の体調が思わしくなくなった、経営への意欲が薄れてきた、そんなタイミングから後継問題を考え始めるのでは遅すぎます。例えば、社長の突然の死によって会社経営の経験がない妻や子どもが相続でオーナー(株主)となり、生前のような会社経営が継続できなくなる・・・。最悪の場合、会社は倒産し、従業員は路頭に迷う・・・。オーナー社長であるならば、そんなシナリオもあり得るのだと、肝に銘じておくべきです。

 

オーナー社長としての最後の、そして最大の仕事こそが事業承継です。そして事業承継の手法と、いつ行うかというタイミングは、自身が元気なうちから余裕を持って取り組むことが必須なのです。

 

前出の調査によれば、社長の平均年齢は59.7歳と実に30年連続で上昇。また、後継者が不在などの理由から、社長交代率は過去最低の2.47%(2010年数値)に留まっています。調査の数値からは、後継者不足に加えて、事業の不振がダブルパンチとなり、後継者問題どころか、目先の対応で手一杯という姿が透けて見えます。

 

日々の社長業務が大変なのはわかりますが、そんなときこそ目を背けずに事業承継のことを考えておくべきでしょう。自社の強みや魅力を客観的な視点で把握し、どのような承継方法が適切なのか、第三者も交えて検討・準備する。そんな姿勢が求められます。

 

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本連載は、2013年7月2日刊行の書籍『オーナー社長のための会社の売り方』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

オーナー社長のための会社の売り方

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編著 GTAC

幻冬舎メディアコンサルティング

オーナー社長にとって、会社人生の最後で最大の仕事こそが事業承継。 創業以来、長年に渡って経営してきた会社を次代に残す。また、従業員の雇用を守りつつ、買い手企業の新たな資本の元で、会社の価値をさらに高めていくこと…

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