決算書の数字を前提として「原価」の検討をすることは適切とはいえません。今回は、決算書に示されている原価が持つ大きな問題について見ていきます。

製品の原価を計算する方法は2つある

前回に引き続き、儲け上手社長が実践している、儲からない原因を突き止め高収益体質に変える「数字の読み方」を見ていきます。

 

その3 決算書上の原価を再計算する

利益を上げるためには、「原価を下げる」ことが大切といわれています。しかし、製造業では原価の低減と利益アップは必ずしも連動するとは限らないことに注意を要します。とりわけ、決算書の数字を前提として原価を下げることを検討することは適切とはいえません。決算書に示されている原価には大きな問題があるからです。

 

そもそも、製品の原価を計算する方法は1つだけではありません。原価計算の主な方法としては、①全部原価計算と、②直接原価計算の2種類があり、それぞれの中身は以下のような形となっています。

 

①全部原価計算

材料費のほかに人件費、製造費用などの経費を加えたものを原価として計算する方法。

 

②直接原価計算

経費を固定費と変動費に分ける考え方を前提として、変動費を中心に原価を計算する方法。

 

ひと口に原価といっても、①と②のいずれの方法で計算するかによって、その額は大きく変わる可能性があるのです。

材料費だけでなく労務費も原価に含めるのは問題

以上の2つのうち、決算書上では①全部原価計算に基づいて計算された原価が示されています。つまり、材料費だけでなく、労務費と経費を加えたものが原価として示されていることになります。

 

実は、このように全部原価計算に基づく原価を決算書に記載することは、昔から問題視されてきました。たとえば、経営コンサルタントの第一人者として知られる一倉定氏は次のように述べています。

 

「原価計算(注:全部原価計算のこと)は、事業の実態を全くしらない観念論者のつくりあげたものであって、真実の姿とは似ても似つかない数字をつくりあげるという危険極まりないものである。それにもかかわらず、深く広く企業に浸透して、大きな害毒を流し続けているのである。われわれは、まず企業の凶器というべき原価計算を捨てなければならない」(日本経営合理化協会出版局『一倉定の社長学 増収増益戦略篇』まえがきより)

 

危険極まりない”“大きな害毒を流し続けている”――全部原価計算に対してこうした痛烈な批判が浴びせられているのは、その計算方法によって導かれた原価からは企業経営にとって重要な利益に関するデータを正しくとらえることができないためです。たとえば、一冊の本を製造して販売する場合、全部原価計算では、紙代だけでなく、社員の給料も原価に上乗せされることになります。

 

このように、人件費までも原価に含めてしまうと、「一冊の本を売っていくらの利益が出るのか」が全くわからなくなってしまいます。

 

したがって、「儲けるためにはどれだけの利益をあげるべきか、またそのためにはどのようなビジネスモデルを構築すべきか」を考えるためには、全部原価計算の考えから離れて、直接原価計算など他の方法で原価を求めることが不可欠となるのです。必要に応じて、過去の決算書を見直して原価を計算してみてください。

本連載は、2015年11月12日刊行の書籍『「儲かる」社長がやっている30のこと』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

「儲かる」社長がやっている30のこと

「儲かる」社長がやっている30のこと

小川 正人

幻冬舎メディアコンサルティング

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