前回は、動物病院の開業資金の調達方法を説明しました。今回は、医療機器の購入にあたっての留意点や、動物病院のお金の管理方法などを見ていきます。

新品や中古、リースなど機器入手の選択肢は複数

医療機器の入手方法としては、大きくわけて以下の三つの選択肢が考えられます。

 

①新品を購入する

②中古を購入する

③リースを利用する

 

また、①、②については、さらに現金一括購入、ローン購入という選択肢があります。これらのうち、最も理想的な方法は新品を現金で一括購入するというやり方でしょう。

 

しかし、価格が安いものであればともかく、高額な製品は数千万円になるものもあるため、一括購入はなかなか難しいというのが実情でしょう。あるいは、医療機器の定価は実際にはあってないようなものなので、業者との交渉によって値段を下げてもらったり、もしくは獣医師仲間などに同時期に開業する者がいれば、示し合わせて一緒に購入するという手段も考えられます(個別に購入するよりはいくらか安くなる可能性があります)。

 

このような方法を使ったとしても現金で購入するのが難しいようであれば、次にローンでの支払いを検討することになるでしょう。もっとも、ローンは金利がかかるので、後々その負担が重くのしかかってくるおそれがあります。

 

一方、中古の購入は、新品の場合に比べて導入コストを大きく下げることが可能となりますが、求めている製品が都合よく中古市場で見つかるとは限りません。どうしても必要な機械が開業前までに見つからず、「結局、新品で購入せざるを得なくなった」ということにもなりかねません。したがって、中古の購入を選択するのであれば、あわてずにすむよう、早急に製品探しに着手することをおすすめします。

 

リースに関しては、リース料という形で月々の支払いとなるので、現金一括購入の場合に比べて、初期コストの負担を大きく減らすことができます。また、機械を所有しているわけではないので、固定資産税の負担もなくなります。

 

業者はメンテナンスサービスも込みでリースする場合が多いでしょうから、故障や不具合などを直すために予期していなかった出費が生じるようなこともありません。もっとも、リース料は月々のローンの支払いと変わらない金額になることもあるので、そのような場合には「同じ金額を支払うのなら、機械が自分のものになるローンのほうがよかった」と後悔を残す可能性もあります。

 

このように、新品、中古、リース、現金一括払い、ローン払いいずれについても、一長一短があるといえますので、開業時に用意できる資金や開業後の予想収益などをふまえて、どの手段を選択するのかを慎重に決めることが望ましいでしょう。

「事業用のお金」と「個人用のお金」は必ず分けて管理

動物病院の経営を開始したら、「事業用のお金」と「個人用のお金」をしっかりと分けて管理することを心がけるようにしましょう。特に、法人ではなく個人経営の場合には両者を一緒くたにしてしまう過ちを犯しがちです。

 

たとえば、事業用の口座から日々の生活費を引き出したり、逆に個人用の口座から事業に使う費用などを引き出したりなどしていては、事業にいくら使ったのかを把握することができなくなります。しかし、それでは、会計帳簿を適正に作成することが困難になりますし、将来的な事業計画を立てることも難しくなります。

 

また、両者が混在した状態では、万が一、税務署の調査が入ったときに「お金の管理がルーズだ」とみなされ、税務上の不正を疑われることにもなりかねません。銀行口座はもちろん、普段使う財布についても個人用、事業用それぞれ別々に用意するようにしましょう。

本連載は、2014年8月27日刊行の書籍『どうぶつ病院を繁盛させる50の方法』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

どうぶつ病院を繁盛させる50の方法

どうぶつ病院を繁盛させる50の方法

百瀬 弘之

幻冬舎メディアコンサルティング

勤務医の時代はたとえ給料は安くても、独立して動物病院を開業すれば十中八九成功が約束されていた獣医師。 ペットブームの恩恵を受けて市場を拡大し続けてきた獣医師業界ですが、近年の動物病院の増加により飽和状態に。さら…

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