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連載ビルオーナーのための「生前の財産承継」をスムーズに進める方法【第1回】

相続対策のために「ビルを売却する」メリットとは?

譲渡所得税登録免許税不動産取得税概算取得費新連載

相続対策のために「ビルを売却する」メリットとは?

ビルを所有しているような資産家であっても、きちんと相続対策を講じている人は実は少ないのが現状です。連載第1回目は、財産承継のために「ビルを売却する」メリットなどを見ていきます。

円滑な財産承継のためには「売却」も重要な選択肢

本連載では、相続が発生する前にできること、しておかなければならないことなどに絞って紹介していきたいと思います。もちろん税金を減らすだけでなく、円滑な財産承継をするためのポイントや売却時の手残りを増やすための対策などもここでは解説していきます。

 

生前対策にはいろいろな方法がありますが、シンプルに財産承継を行うための究極の切り札ともいえるのが「現金化=売却」です。相続税対策には不動産で評価を下げる、というイメージをお持ちの方にとっては、びっくりされるかもしれませんが、これも円滑な財産承継のための重要な選択肢の一つなのです。

 

現金化することに抵抗がある人が多いのも事実ですが、相続人のことを考えると、流動性の低いビルを生前に現金化しておくのも一つの選択肢であることを念頭に置いておきましょう。

 

現金化することで得られるメリットには、次のようなものがあります。

 

●相続争いを防げる可能性が高い

 

自由に分けられない不動産が、自由に分けられる現金に変わることで遺産分割がかなり簡便になります。不動産は一物多価の資産であり、相続人によって資産価値の判断が大きく変わります。財産価値がいくらなのか全員にとって明確とならない不動産を分けることは非常に苦労が伴うものです。

 

●生前贈与が簡単に行える

 

不動産を贈与すると、登録免許税や不動産取得税といった諸費用がかかります。現金の贈与であれば諸費用もかからず手続きは簡単で、今すぐにでも行うことができます。

現金化すると「譲渡所得税」がかかる点に注意

ただし、現金化の際には必ず考慮すべきことがあります。それは不動産を現金化する場合には譲渡した個人に対し「譲渡所得税」がかかってくるということです。

 

そもそも譲渡所得税というのは、次のような計算式で求めることができます。

 

■譲渡所得=売却価格(譲渡収入)-(取得費+譲渡費用)

 

取得費というのは、購入代金に購入時の経費などを加算した「取得価額」から、物件を取得した日から譲渡した日までの「減価償却費」を差し引いて算出します。譲渡費用には不動産会社への仲介手数料、建物の解体費用などが該当します。

 

取得価額には、不動産を購入した金額、購入したときの仲介手数料や整地費用などの改良費、さらに登記や登録費用、不動産取得税、売買契約書の印紙代、借家人などの立ち退き料、その他、この物件を取得するのに要した費用などを計上することが可能です。

 

ちなみに、先祖代々から相続した土地の場合では、現在の地価に比べかなり低い金額で取得していたり、あるいは購入金額がわからないケースが一般的です。

 

そんなときには「概算取得費」といって、実際の取得費の代わりに売却価格の5%を取得費とすることができます。

 

取得した日から売却した日までの減額償却費というのは、建物の構造や材質などによって「法定耐用年数」が定められており、建物の取得からその建物の法律上の寿命まで、建物の額を徐々に減額していく方法で計算されます。

 

なお、シンプルかつ円滑な相続を求めて、生前に売却してしまうのも一つの方法にはなりますが、相続で取得した土地建物に対し相続税が発生している場合には、相続税の申告期限の翌日から3年を経過する日までに売却することで、支払った相続税を取得費に組み入れて、譲渡税の節税を図ることができます。

 

長いスパンで考えるときには、こうした特例の活用なども考慮に入れておくとよいでしょう。

 

税率については、所有期間に応じて税率が変化する仕組みを取っています。バブル期のような短期的な不動産売買を制約する目的から、所有期間が短い場合にはかなり高い税率が課税されます。

 

なお所有期間については、譲渡した年の1月1日時点で5年を経過しているか否かを判断するため、実際の譲渡日で判断すると所有期間を間違えることになるのでご注意ください。

 

短期譲渡所得(所有期間5年以下)・・・所得税30%、住民税9%

長期譲渡所得(所有期間5年超)・・・所得税率15%、住民税5%

 

※この他に平成25年から平成49年の各年分において、2.1%の復興特別所得税がかかります。

 

この話は次回に続きます。

本連載は、2013年7月29日刊行の書籍『ビルオーナーの相続対策』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

川合 宏一

マックス総合税理士法人 代表社員 税理士

昭和46年横浜市生まれ。平成10年税理士試験合格。平成11年東京税理士会に税理士登録。都内の不動産所有者を多く扱う会計事務所に勤務した後、東証一部上場の情報通信系ベンチャー企業に社内税理士として勤務。法務部、主計部に在籍。
その後、平成13年に川合総合会計事務所を開業し、独立。平成21年にはマックス総合税理士法人に組織変更して現在に至る。資産家に対し、財産に関するコンサルティング業務や講演を行うなど幅広く活躍している。また、国内外に不動産を所有する投資家でもある。

著者紹介

連載ビルオーナーのための「生前の財産承継」をスムーズに進める方法

ビルオーナーの相続対策

ビルオーナーの相続対策

川合 宏一

幻冬舎メディアコンサルティング

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