この低成長時代を生き残るために欠かせないのは、財務・会計の数字に基づいた自社の「強み」と「弱み」の客観分析です。連載第1回目は、会社における「決算書」の重要性を見ていきましょう。

経営力・資金調達力強化の武器となる「決算書」

会社における決算書は、人間でいえば「人間ドックの結果表」のようなものです。人間ドックでは全身を詳しく調べ、自らの健康状態を把握します。そして、病気の早期発見・早期治療をしたり、生活習慣を見直したりするでしょう。

 

会社における決算書では、自社の経営成績や財政状態が明らかになります。それを基に自身の経営を振り返って反省したり、経営課題を早期発見・早期改善したり、経営リスクを予防したりすることができます。

 

戦略的な経営で成功を勝ち取っている経営者たちは、自社の決算書はもちろん、取引先や投資先の決算書などにもきちんと目を通します。そして、取引先や投資先を判断・決定したり、経営戦略を立てたりするのに役立てています。

 

また、彼らは目標とする企業やライバル会社の経営状況を知るために、決算公告や3カ月ごとに発行される『会社四季報』(東洋経済新報社)などを日々読んで、経営分析力を磨くことにも余念がありません。

 

広くまた継続的に決算情報を得ることで、ライバル社がどういう状況にあり、これから何をしようとしているのかを知ることができるからです。

 

同じ土俵にいる相手会社の資本力や戦略を探ることで、それに負けない戦い方を練っているのです。あるいは、成功している企業の良いところを真似て、自社に取り入れることも積極的に行っています。

 

ですから、「決算書が読める」「会計の数字の意味が分かる」ということは、自社の舵取りをする経営者にとって必要不可欠なスキルなのです。決算書が読めてこそ、戦略的な経営は可能になるということを肝に銘じてください。

決算書が読めれば、金融機関等からの信頼性も高まる

決算書が読めるということは、適正な決算書を作れることも意味します。

 

計算をしたり書類を作ったりという実務は、実際には経理担当者や会計士などに任せることになるでしょう。それでも、決算書というのは経営者の責任で作るものです。「この決算書でOK」という最終判断を下すのは、経営者だからです。

 

自分のところに上がってきた会計書類に間違いや不備がないかどうかをチェックし、もしあれば正しく修正させることで、精度の高い決算書が出来上がります。

 

正確な決算書を作っておくと、金融機関に融資を頼むときなどに説明がしやすく、相手から得られる信頼性も高まります。結果として、融資が受けやすくなる効果が期待できるのです。それに、税金の申告漏れや過払いなどのトラブルも未然に防げます。

 

ちなみに、金融機関より融資を受ける際には、次回に説明する「中小企業会計要領」の適用状況について記載されたチェックリストの提出が求められます。このチェックリストは税理士または公認会計士等によって作成されなければなりません。

 

適用状況が適正であれば利子の低減が得られます。万一、会計士・税理士等による過大な見逃しや極端な過誤などがあった場合は、その会計士・税理士等の氏名が公開されるなどの処置が行われることがあります。

本連載は、2015年7月30日刊行の書籍『低成長時代を生き抜く中小企業経営9カ条』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

低成長時代を生き抜く 中小企業経営9カ条

低成長時代を生き抜く 中小企業経営9カ条

真下 和男

幻冬舎メディアコンサルティング

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