「アップル」の投資活動とサンフランシスコ不動産市場への影響

今回は、グーグルと双璧を成す巨大IT企業「アップル」の不動産投資活動と、それに伴うシリコンバレー不動産全体への影響を見ていきます。

年間約1兆円もの大金を不動産に投資する「アップル」

前回はグーグルのシリコンバレー不動産投資活動について説明しました。今回はグーグルと双璧をなすアップルの動きについて説明していきます。

 

アップルはご存知の通り、1974年故・ステーブジョブズによって創業され、パーソナルコンピュータのMac・iMac、携帯音楽プレーヤーiPod、2007年にはiPhone等のヒット作を世に送り出しています。

 

 

まずは下記のアップルの財務データをご覧ください。引き続き世界第一の時価総額となっています。今年に入り、一旦はグーグルに抜かれたものの、現在はトップに返り咲いています。

 

[図表1]アップルの財務データ

 

売上高の68%がiPhoneであることに加え、売り上げの24%が中国からとなっている点が特徴的です。

 

中国の売り上げ伸び率は2016年第1四半期ベースでは14%増加しましたが、4月26日に発表された2016年第2四半期ベースでは前年同期比26%の減少となりました。中国およびその周辺国の景気減速が影響しており、投資家の注目が集まっています。

 

そのせいか、EBITDA倍率は他社と比べて低めとなっています。4月27日終値ベースで時価総額も大きく下げ、5424億米ドル(1ドル=111.50円=60.5兆円)となりました。

 

グーグル同様、アップルによる不動産投資を含めた設備投資額は、この4年間で平均年間約1兆円となっています。

 

これは、以下に紹介するような新社屋を中心とした不動産投資だけではないものの、ある一定の規模は確認できます。自社株による役員・従業員に対する報酬支払はグーグルほどではありませんが、数千億円程度は含まれているでしょう。

 

さて、アップルの現在のキャンパス(本社事務所ビル20棟超、下記図表2参照)は、I-280号線の南、クパチーノに位置します。

 

[図表2]アップルの現在のキャンパス

 

ここでは、1万人弱の従業員が就業しています。現在、クパチーノ市内のI-280北側(現本社の東側)に、市より2013年開発許認可を取得したキャンパス2(HP本社跡・新本社屋、下記図表3が完成予想図)の建設が進んでおり、2016年末に竣工予定となっています。

 

[図表3]キャンパス2完成予定図

 

キャンパス2の広さが延べ面積280万SF(=25万2000平米)で、総工費が50億米ドルといわれています。スペースシップの呼び名通り大変奇抜なデザインとなっており、この施設によって従業員を40%増の1万4000人まで収容することが可能になります。

 

[図表4]キャンパス2のデザイン

 

故・スティーブジョブズがスタンフォード大学の「メイン・クワッド」いう建物にインプレッションを受けたとされており、キャンパス2はその規模感からきています。

 

[図表5]スタンフォード大学「メイン・クワッド」

 

クパチーノ市公聴会(2011年6月)にて、新しいアップルオフィスの提案をする故・スティーブジョブズの様子を、こちらの動画で確認することができます。
https://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=gqn43gmeA3w

居住する「従業員」が不動産価格を下支えしている

アップルは現在、本社も含め2万5000人の従業員がシリコンバレーに100棟以上の事務所ビルを占有しています。それでは、新社屋以外の不動産に関わる活動を見ていきます。

 

[北サンノゼ地区]

 

①「ミネタ・サンノゼ国際空港」北側

2016年1月、サンノゼ市がアップルに対して、今後15年にわたって延べ415万SF(=37万4000平米、土地面積86エーカー[=34万8000平米])のR&Dおよび事務所スペースの開発許可を承認しました。そのうち61エーカー[=24万7000平米]は3億400万米ドルで、昨年買収したもの。

 

[図表6]ミネタ・サンノゼ国際空港北側の開発の様子

 

②2015年12月、サムスン米国本社横に位置する半導体工場(7万SF)をマキシム・インテグレイテド・ピロダクツ社より1800万米ドルで買収。

 

[サニーベール]

 

①「セントラル&ウルフ」

2015年Jay Paul社より事務所ビル(建設中)77万7000SFを賃借。J社はすでに土地代に2億米ドルを投資。

 

[図表7]セントラル&ウルフのデザイン

 

②「マチルダテックセンター」

クリステンセン・ホールディング社が所有する事務所ビル2棟21万5000SFを賃借。

 

③「(カルトレイン)ローレンス駅」前

リアリティ・アソシエイツ社が所有する事務所ビル2棟8万SFを賃借。

 

④「ノース・メアリー」

ロックウッド・キャピタル社が所有する事務所ビル15万SFを賃借。

 

⑤「スチュワート」

ハインズ社が所有する事務所ビル7万5000SFを賃借。

 

⑥「イースト・アーキーズ」

①のそば、トラマーク・コマーシャル社が所有する事務所ビル6万5000SFを賃借。

 

[サンタクララ]

 

①「(カルトレイン)ローレンス駅」前

レナー・コマーシャル社が所有する事務所ビル18万9000SFを賃借。

 

②「リーバイス・スタジアム」そば

フォスター・エンタープライズ社が2013年から保有するR&Dビル18万9000SFを賃借。インサイト・リアリティ社他が所有する事務所ビル12万9000SFを賃借。

 

③「ミネタ・サンノゼ国際空港」南側

物流センター15万1000SF

 

[図表8]サンタクララの開発の様子

 

[サンフランシスコ]

 

SOMA地区

JPモルガンが所有する事務所ビルに7万6000SFを賃借。

 

[サクラメント]

 

エルクグローブ地区

物流センターの賃借

 

 

以上、グーグルと同様、アップルもシリコンバレーを中心に自社施設を確保していることから、従業員はこの周辺に住居を確保せざるを得ない状況となっています。これらがSFベイエリアの不動産市況の下支えになっていることが分かります。

 

 

昨年10月25日付けのウォール・ストリート・ジャーナル紙では、2007年iPhoneの売り出しからアップルの株価が上昇すると同時に、SFベイエリアの住宅市場も急騰していることを指摘しています。

 

[図表9]アップルの株価・SFベイエリア不動産価格の比較図

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連載集積するイノベーション産業と頭脳――米国シリコンバレー不動産投資の最新事情

クラウドクレジット株式会社 商品部 商品組成担当マネージャー

北海道出身、一橋大学経済学部卒業。UCLA不動産関連科目履修。
東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)開発金融部海外不動産グループ(米国担当2年半)、ユニオンバンク(7年加州駐在)にて、不動産を中心とした開発金融・アドバイザリー業務を経験。2000年に退職後、ローンスターファンド・ラサールインベストメント等の外資系投資ファンド・日系投資会社、ブルックス・グループで、不良債権・再生・不動産・未公開企業等のオルタナ投融資の実績と経験。2017年7月より、クラウドクレジット商品部にてソーシャルレンディング関連販売ファンド組成業務に就き、現在に至る。

著者紹介

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