相続財産を守るために必要なのは、「土地を持つこと」でも「多くの土地を持つこと」でもありません。「価値のある良い土地」だけを持つことです。本連載では、そのために必要な作業を具体的にどのように行っていけばよいのか、ポイントを絞って詳しく解説していきます。

「悪い土地」はどんどん損切りする

「良い土地」だけを残すということは、「悪い土地」をどんどん処分していくことを意味します。低利回りの貸宅地や赤字のアパート、マンションを持ち続けていれば、子どもたちにせっかく残した財産が相続税で失われることになりかねません。

 

たとえば、株価の上がる気配のない、それどころか逆に下がっていきそうな株式を持っていれば、後生大事に持つような真似はせず、〝損切り〞する――すなわち損が出ると分かっていても売るはずです。それと同じように、この先地価が上がりそうにない土地、あるいは貸宅地のように低収益の土地は、潔く〝損切り〞しましょう。

 

そして、損切りした土地の売却代金を、より高収益の土地を購入するための資金に回していく、つまりは資産の組み替えを積極的に行っていくのです。

 

土地を持っていれば持っているほど、「すごい!」と感心されるような時代はもう二度と訪れることはないはずです。ですから、土地を手放すことを躊躇する必要はありません。そもそも、農業を営んでいる人など一部の人を除いては、自宅として使う土地にしても100坪程度あれば十分のはずです。

 

「自宅用の土地100坪と本当に価値のある土地だけを厳選して残す」――そのような覚悟をもって、不要な土地をきちんと整理処分していきましょう。

いま求められるのは「積極的な防衛」

利益を生まないような土地をそのまま持ち続けていれば、相続した財産のほとんどを失ってしまうおそれがあります。それを避けるためには、守るべき土地を守り、片付けるべき土地を処分することが必要になります。その前提としては、当然、どの土地を守るべきか、どの土地を片付けるべきかを明らかにし、選別していく「見える化」の作業を行わなければなりません。

 

その選別の際に求められるのは、「土地そのものを守る」というよりも、「土地の持つ価値を守る」という視点です。そしてこのような視点に立った場合、「守る」とは「専守防衛」ではなく、「積極的な防衛」を意味することになります。

 

たとえば、人口が減っており成長が期待できないような地域、いわば波が引いたままで戻ってくることが期待できないような場所に居続けて、ただひたすら土地を売らないで守った気になっている。これは、「専守防衛」です。


 
そうではなく、人口がどんどん増えており今後の発展が見込まれる地域、波がどんどん押し寄せている場所を見つけて積極的に移転する、つまりは価値の低い場所の土地を売り払い、その代金で価値の高い場所の土地を購入する。このように資産の組み替えを前向きに行っていくのが、「積極的な防衛」です。

 

ことに農家の人たちは、変化を望まず現状のままで居続ける、あるいは土地を愛するあまりじっとして動かない傾向が見られます。確かに、それも生き方の一つかもしれませんが、それでは本当に守らなければならないものを守ることはできません。相続した財産を、先祖から受け継いできた「家」を守るためには、柔軟に変化を受け入れ、波の引いた場所から、波の向かう場所へ果敢に移りゆく心構えが必要となるのです。

土地を四つの種類に分ける

では、「守るべき土地」とそうではない土地、すなわち「片付けるべき土地」を分けるためには、具体的に、どのようにすればよいのでしょうか。

 

一つの選択肢としてお勧めしたいのは、①絶対に守りたい「死守地」と、②金銭的なゆとりをもつための「有効活用地」、③有効活用が困難な「問題地」、④納税資金の準備に役立てる「納税用地」に分ける方法があり、その有効性は広く認識されているところです。

 

まず、絶対に守りたい「死守地」には、自宅の土地のほか、農業を営んでいるような場合には、実際に耕作をしている田畑や果樹園なども含まれるでしょう。この「死守地」は、当然のことながら、処分せず持ち続けることになります。また、「有効活用地」は、まさに稼ぐための土地ですからもちろん処分しません。一方、「問題地」と「納税用地」については時期やタイミングを見計らって処分することになります。

 

次回以降、「有効活用地」「問題地」「納税用地」それぞれの具体的な中身と、その活用方法やあるいは処分の際の留意点などについて、順に解説していきます。

 

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