前回は、売り手の都合が如実に現れる「モデルルーム」の見方について説明しました。今回は、「不動産パンフレット」の見方を取り上げます。

大事なのはパンフレットの「見た目」ではない

大規模マンションや、周辺相場に比べて少し価格が高いマンションに多いのですが、パンフレット一式の豪華さに目を奪われることがあります。

 

空撮写真や、イメージCGを何点も制作し、規格外の用紙サイズで紙も上質です。表紙には浮き上がる文字など、凝ったデザインにもお金がかかっていると見受けられます。もっとも、非常に高価な商品ですから、多少の気遣いは必要です。

 

ただ、マンションに限らず、商品のパンフレットとは、その商品の特徴、アイデンティティやセールスポイントを説明するものですから、大事なことは見た目ではありません。購入を検討する人が、パンフレットに書かれた特徴を他社商品と比べられるよう、商品特徴の違いを明確にすることの方が優先順位は高いのです。

 

パンフレットの見た目や印象でマンションを比較していては、売主の土俵に引きずり込まれてしまいます。

他社物件との違いが明記されない不動産パンフレット

たとえば、筆者が10年ほど前に見て、いいパンフレットだなあと感心したのは、「プレジデント」と「シーマ」という2車種のパンフレットです。

 

どちらも企業経営者をターゲットにした車ですが、プレジデントは運転手に運転してもらい、本人は後部座席で仕事をしながら移動する車で、シーマは自ら運転するアクティブな経営者に対象を絞り込んでいます。そのため、この2車種のパンフレットには大きな違いがありました。

 

それはパンフレットの写真にあります。いずれのパンフレットでもまずは車全体のフォルムを写し出したものが掲載されていましたが、プレジデントではその次のページに後部座席、シーマでは運転席の写真が取り上げられていたのです。

 

さらにプレジデントなら後部座席で仕事をしながら移動する経営者を支援する設計がいかに組み込まれているか、つまりターゲットに向けた「商品設計の明確な方針」が詳細に記述されていました。

 

これでどちらの車が購入者にとって最適かを決定できるわけですが、このパンフレットは、その明確な違いを自社商品のみならず、他社商品とも比較させるように主張しているのです。

 

ところが、数あるマンションのパンフレットで、このような明確な設計方針の違いを見つけるのは難しいと言えます。一般的なパンフレットは外観、立地の写真から始まり、続いて室内写真、その後に構造、仕様、設備と展開していき、内容や順序はほぼ同じです。

 

日本を代表する大手であっても、マンションの選択軸とすべき住み心地を左右する最も重要な間取りの設計方針について、他社との明確な違いはほとんど明記されていません。

 

この話は次回に続きます。

本連載は、2011年3月23日刊行の書籍『本物マンション購入計画』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

本物マンション購入計画

本物マンション購入計画

鈴木 雄二

幻冬舎メディアコンサルティング

人生最大の買い物を間違えたくないと、慎重に選ぶマンション。しかし、誰もがマンション選びの常識と思っている情報が、実は売り手の都合に塗り固められたものだとしたら…。本書の前半では、住み心地よりも効率優先で作られる…

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