世界経済が不透明になるなかでは、各国は自国通貨の切り下げにつながるような政策を採りやすくなりますが、スリランカでも同じくルピーの下落が問題視されています。 ※本連載では、内戦の終結以降、高い経済成長を誇ってきたスリランカですが、歪な経済構造を背景にして、昨今、表面化してきた様々な問題について見ていきます。

通貨切り下げは「経済ナショナリズム」の表れ!?

理想を言えば、付加価値税(消費税)を20%に引き上げる一方で、他の問題ある税を廃止し、また輸入関税を下げるべきだろう。全世界的にコモディティ価格が安定している現在は、付加価値税を上げるに良いタイミングにある。

 

実際、スリランカ・ルピーを切り下げるのではなく、付加価値税を全体的に20%に増やすべきであった。そうすれば、より多くの税収が入り、国民の貯蓄や給与が損なわれることはなかっただろう。しかし、公務員の賃金の大幅に上げたため、スリランカ・ルピーが下落してしまい、実質賃金が損なわれてしまったのだ。

 

これは、政治家と公務員の浪費と貪欲のために、貧困層や民間の労働者が耐えなければならない「緊縮」であるが、スリランカではたやすく行われてしまう。なぜなら、生まれながら新重商主義に染まっているエコノミストやアナリストなどの都市のインテリ層は、通貨価値の維持という概念を信じていないからである。通貨下落の要因は、誤った政策ではなく、決まって外部的なものであって、通貨安はむしろアドバンテージがあるとされた。

 

「為替の安定こそが望ましいことだと考える権力者がいなくなってから久しい。現在、国の通貨の切り下げは、輸入を制限し、外国資本を取り上げる常套手段となっている。これは、経済ナショナリズムの一つだ」と1944年に哲学者でありエコノミストであるルートヴィヒ・フォン・ミーゼスは言っている。

 

通貨安は外部要因であり、かつアドバンテージでもあるという考え方は、ソフトペッグ制により通貨の崩壊が避けられなくなった第2次世界大戦後のブレトン・ウッズ体制において強くなった。また、このような考えはおしなべて、計量経済学に基づいており、通貨切り下げの発生に対するソフトペッグ制の支持者の言い訳として、通貨が「過大評価」されていたためと主張した。

 

しかし興味深いことに、スリランカの多くの知識人が、スリランカ・ルピーは「過大評価」されており、下落しなければならないと主張していたとき、同じ計量経済学に基づいて行われたIMFの調査では、スリランカ・ルピーの過大評価はないことを示したのだった。

民主主義の要である「租税平等主義」

燃料や電力により多くの付加価値税を課税することには、別の利点もある。それは、輸出業者が税金を回収することができるようになり、競争力のある輸出を可能にするということである。実際、電気料金を毎月毎(または3ヶ月毎)に設定し、燃料価格の競争を可能にすることで、為替レートを安定的に維持するのに役立たせているシンガポールの事例もある。

 

付加価値税は全消費者に課税すべきである。現在、一般人は付加価値税を払っておらず、国の隠れた負担となっている。平等に負担することは民主主義のために重要でる。ソフトウェアと会計帳簿の操作によって、付加価値税はごまかされており、企業は二重帳簿を用いて不正を行うのが一般的になっている。

 

次回は、金融政策の見通しと改善策についてご説明します。

この連載は、GTACが提携するスリランカのメディア「ECHELON」が2016年3月に掲載した記事「THE ECONOMY IN 2016: LIMPING TO STABILITY FROM A RUNAWAY BUDGET」を、翻訳・編集したものです。

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