特集2016.4親族内の事業承継

相続・事業承継 事業承継
連載事業の早期継承を実現する「引継ぎマニュアル」の作り方【第8回】

右腕社員に任せる、後継者を育てるパターンの事業継承の事例

後継者中小企業

右腕社員に任せる、後継者を育てるパターンの事業継承の事例

今回は、自らの右腕といえる幹部社員に事業を継承する場合と、後継者が安定した経営ができるまで育てながら継承を行う場合の成功事例を見ていきます。

今までの路線をしっかり継承していく「匠型

前回に引き続き、経営者タイプと職種タイプが同じ場合の最適な継承パターンとその成功事例について見ていきます。

 

●匠型

大企業でよく見受けられる継承手法ですが、中小企業で選択されることもあります。自らの右腕といえる幹部社員に事業を継承し、今までの路線を継承していくという手法なので、経営者タイプと職種タイプが同じであれば申し分ありません。社内の根回しは必要になるでしょうが、後継者がすでに社内で跡継ぎと目されているような場合は、継承期間も短くて済みます。

 

<成功事例>

アパレルメーカーを営んできたK社。バブルで一気に事業を拡大し、デパートに商品を卸すほどに成長して直営店舗も20を超えました。バブル経済末期に、経営者であるY氏が一時体を壊して事業拡大を控えたことが功を奏し、バブル崩壊後のダメージは最小に抑えられました。昨今も経営は比較的順調に推移していましたが、Y氏は再び体調を崩したことで、経営者としての限界を感じ、事業継承の準備をはじめました。

 

Y氏には子どもがおらず、親族とのつき合いも良好とはいえませんでしたので、親族内継承は難しいところでした。

 

しかし、Y氏は事業継承を望み、あらかじめ自らの右腕といえる人材であったE氏を後継者にしたいと考えていました。現在取締役であるE氏は、起業当初からY氏を支えてきており、Y氏の経営を身近で学んできたとともに、デザインなど技術的なレベルも高く、社内での評判もかなりのものでした。ですから、Y氏が周囲に対し後継者の告知を行った際も、従業員に驚きはありませんでした。

 

Y氏は、株式などは保有したまま会長職となり、E氏の新体制が発足しました。引き継ぎにかかった期間は2か月と、社内調整に要する時間が必要な匠型では破格といえる短さでした。もともと経営者タイプも職種タイプも同じであったことから、意見が分かれることはほとんどありませんでした。現在も、従来の経営方針を堅持しつつ、自らの発案で新たなトライを行う際には会長であるY氏に相談するなど互いによい関係で会社を運営できています。

安定した経営ができるまで育てて継承する「後見型

●後見型

後継者が安定した経営ができるまで育てつつ事業継承を行う手法をとる場合も、経営者タイプと職種タイプは同じであることが望ましいといえます。後見型というのは、ただでさえ時間が必要なやり方です。もしどちらかのタイプが異なってしまうと、経営方針や業務内容が伝わりづらいため、その共有にさらなる時間を要してしまうことになります。可能な限り短期間で事業継承を行うには、やはりタイプがそろっている必要があります。

 

<成功事例>

工務店として地域に根差した経営を行ってきたD社。経営者であるO氏は、先代が興した材木会社を引き継いで工務店へと事業を拡げ、成功をおさめました。しかし、O氏は50代で体調を崩し、この先も経営者としての責務を果たせるかという不安を抱えました。そこで自分は一線からは退き、後継者に会社を託すことを考えはじめました。後継者選びに、迷うことはありませんでした。O氏にはU氏という30代の息子がおり、D社の取締役として勤務していたからです。

 

ただし、ひとつ問題がありました。U氏は大学院を卒業してから大手建設会社の営業部に就職し、その後にD社へ来たため社歴が浅いことです。まだまだ会社の実務に精通しているとはいえず、すべてを託すのは難しいと思われました。そこでO氏は、自らは会長職について権限を残しつつ、U氏の成長に合わせて少しずつ事業や人脈を引き継いでいくことにしました。社内からの信頼も、U氏が実績を上げるごとに少しずつついてくるだろうとも考えました。

 

経営以外の会社の業務でO氏が主に担ってきたのは営業であり、技術部門は職人たちに任せてありました。一方のU氏も、大手企業で営業スキルを磨いた経歴があり、職種タイプは一致していました。また、O氏とU氏は「似たもの親子」で、性格も心情も共通する部分が多くありました。結果的に、U氏は父の教えを余すところなく一気に吸収していき、事業継承自体は3か月で終了。その後もO氏は会長職にとどまりU氏と会社を見守っていますが、経営は安定し、現在ではほとんど口を出すことがなくなっています。

本連載は、2015年10月25日刊行の書籍『たった半年で次期社長を育てる方法』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

和田 哲幸

株式会社カメリアプランナー  代表取締役

1975年、岐阜県出身。バブル崩壊後の就職氷河期真っ只中に大学を卒業し、就職浪人の上やっとの思いでベンチャー企業に就職し同企業でフランチャイズ(FC)担当となり、以降FC新規開発営業、スーパーバイザーとして300名以上の個人事業主、中小企業の事業主と交流。業務を通して得た企業の創業や事業計画立案など経験を活かし、2010年、中小企業の創業や企業支援を目的とした株式会社カメリアプランナーを立ち上げ、代表取締役に就任。現在は広告物・販促物を活用した広告宣伝支援や、法人設立や新規事業設立プロジェクト支援などに携わる。現在は8種類の業種の異なる法人・団体の取締役や幹部を務める。

著者紹介

連載事業の早期継承を実現する「引継ぎマニュアル」の作り方

たった半年で次期社長を育てる方法

たった半年で次期社長を育てる方法

和田 哲幸

幻冬舎メディアコンサルティング

中小企業は今後10年間、本格的な代替わりの時期を迎えます。帝国データバンクによると、日本の社長の平均年齢は2013年で58.9歳、1990年と比べて約5歳上昇しました。今後こうした社長たちが引退適齢期に突入します。もっと平た…

Special Feature

2016.11

「法人保険」活用バイブル<書籍刊行>

決算対策、相続・事業承継、財産移転・・・企業とオーナー社長のさまざまな課題解決に、絶大な効果を発揮する「法人保険」の活用…

GGO編集部(保険取材班)

[連載]オーナー社長のための「法人保険」活用バイブル~決算対策編

【第19回】保険のための医的診査 結果が「少し悪い」ほうが社長が喜ぶ理由

GTAC(吉永 秀史)

[連載]法人保険を活用した資産移転の節税スキーム

【第15回】「逆ハーフタックスプラン」活用時の留意点

Seminar information

海外不動産セミナーのご案内

「ニューヨーク不動産」投資の最新事情

~世界の投資家が集まるニューヨークでの不動産投資とは?  現地日系の最大手不動産会社の担当者が語るNY不動産活用術

日時 2016年12月07日(水)
講師 川上恵里子

事業投資セミナーのご案内

いま最もアツい再生可能エネルギー「風力発電」投資を学ぶフェア

~2016年度の買取価格は55円。業界の最新事情と専門会社が取り扱う投資案件の実際

日時 2016年12月07日(水)
講師 近藤陽一

不動産活用セミナーのご案内

償却メリットを狙った「京都の町家」投資の魅力

~建物比率5割超&4年で減価償却も可能!独自の不動産マーケットを形成する京町家だから実現する投資法

日時 2016年12月10日(土)
講師 平野準

The Latest