今回は、遺産分割を「公平」に行うための具体的な方法をみていきます。 ※本連載は、不動産コンサルタントとして活躍し、自身も賃貸経営を行っている山口智輝氏の新刊で、2015年11月に刊行された『大家業を引き継ぐあなたへ』(セルバ出版)の中から一部を抜粋し、大家業の引き継ぎを成功させるノウハウなどをご紹介します。

遺言書を活用して公平な分割方法を明示する

相続財産を分けるときには、「平等」ではなく、「公平」に分けなさいといわれます。相続財産がすべて現金であれば、単純に等分することができますが、相続財産に対する不動産の割合が高い場合、単純に等分することが難しくなります。平等を追求すると、すべての不動産を共有名義にすれば解決するのでしょうが、不動産の共有は先ほども書いたとおり、百害あって一利なし、争続のもとです。

 

「平等」ではなく、「公平」を意識した分け方を意識し、その分け方を遺言書で残しておくことが大事です。その遺言書には、3種類あります。

 

①自筆証書遺言

文字どおり、遺言者本人が自分で書いた遺言書のことです。自筆証書遺言では、遺言書の全文と日付・氏名をすべて自分の手で書き、押印する必要があります。費用もかからず、立会人も必要ありません。

 

また、内容を誰にも知らせずにすみます。しかし、自筆証書遺言は、書き方や内容に問題があり、法的な効力がなかったり、それが本人の直筆なのかをめぐって争いになったりと、トラブルになることが多いです。

 

保管場所についても、わかりにくい場所だと、発見されない可能性があります。逆に、誰にでもわかりやすい場所に保管してあると、勝手に開けられてしまい、自分に都合の悪ことが書いてあった場合、誰にも気づかれないように捨ててしまう可能性もあります。加えて、相続発生後には、開封せず、それを家庭裁判所に持って行き、「検認」の申立てを受けなければいけません。

 

②公正証書遺言

「公証人」と呼ばれる専門家が作成する遺言書のことです。公証役場において、遺言者と立会人2人同席のもと、遺言者が口述した内容を公証人が筆記して遺言書を作成します。原本は、公証役場で保管されるので、紛失することはありません。費用と手間がかかりますが、安全確実なのは公正証書遺言です。

 

③秘密証書遺言

公証人や立会人にも内容を知らせずに、遺言書の所在だけを明らかにする遺言書のことです。遺言書の内容は、自筆でも代筆でもかまいませんが、署名だけは自筆でないといけません。必ず封をし、公証役場に持っていき、2人以上の立会人のもと、提出します。誰にも内容を知られず遺言書の場所を確実にできますが、自筆証書遺言と同じように、書き方や内容に問題があると法的な効力がなかったり、開封する場合、家庭裁判所の検認が必要になります。

遺言書の作成では「遺留分」にも配慮

ただし、法定相続人が最低限、相続を受ける権利として「遺留分」を認めているので、遺言をしていても、相続争いを完全に防ぐことはできません。配偶者と子が相続人の場合、それぞれ本来の法定相続分の2分の1が「遺留分」となります。直系尊属である父母は3分の1、第三順位の兄弟姉妹には認められていません。

 

遺留分を侵害した配分の場合に、納得できない法定相続人は、遺留分の割合に足りない金額をもらえるように、請求することができます。これを「遺留分減殺請求」といいます。「遺留分減殺請求」があると、遺産の配分をやり直すことになり、話合いがまとまらないと家庭裁判所で争うことになります。

 

こうならないためにも、基本的には、法定相続人に遺留分を侵害しない遺言書を書くことが大事です。もし、遺留分を侵害する内容の遺言書を書くのであれば、遺留分を侵害される法定相続人と話をし、納得していただく必要があります。また、不動産を相続しない人には、不動産の価値に見合った現金を用意しなければならない場合もあります。

 

相続するほとんどの資産を事業に活用している場合、平等に(均等に)分けてしまうと事業に支障が出てしまいます。株式会社の場合も、株を均等に分ければいいように感じるかもしれませんが、株が分散し、経営の意思決定がスムーズに行うことができなくなります。

 

【遺言書が必要な人】

●遺言が絶対に必要な人は

・事実婚、孫など、相続人以外に財産を渡したい人

 

●遺言が必要な人

・子供がいない配偶者

・自宅で稼業を営んでいる人

・親の介護をしている人

・行方不明の推定相続人がいる人

・二世帯住宅に住んでいる人

・異母(父)兄弟姉妹がいる人

・推定相続人に多重債務者がいる人

・相続税の申告が必要な人

 

●遺言があったほうがいい人

・事業承継者になる人

・家系を維持したい人

・姉多くして長男末っ子の人

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    本連載は、2015年11月20日刊行の書籍『大家業を引き継ぐあなたへ』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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