前回に引き続き、カナダの不動産がテーマです。今回は、カナダでの一般的な相続の手続きについて見ていきましょう。

すべての税金を払った証明としてCertificateが必要に

カナダに相続税・贈与税はありませんが、それに代替するものとしてDeath Taxと呼ばれるものがあります。以下では、カナダでの一般的な相続の手続きについて概説します。

 

多くのカナダ人は遺言を作成して、どの財産がどの相続人にいくのかを明らかにします。もしも遺言がない場合は相続手続きを規定した法律がありますが、弁護士費用が高額で時間もかかるため、遺言作成が一般的です。

 

相続が起きた場合、被相続人が所有していたすべての財産は相続時点の公正市場価格(時価と同じ)で処分されたと見なされます。この際の税金がDeath Taxといわれています。事実上、この手続きにより株式、信託、不動産等の被相続人が所有していた財産にキャピタル・ゲインやキャピタル・ロスが発生します。

 

このみなしキャピタル・ゲインやキャピタル・ロスは、被相続人の最終確定申告で申告しなければなりません。これらゲインやロスは他のすべての所得と合算して申告されます。

 

キャピタル・ゲインとロスを相殺した結果、ゲインが多い場合(純キャピタル・ゲイン)、ゲインの半額について他の所得と合算して課税が行われます。カナダの所得税の最高税率は46%(2014年)なので、この純キャピタル・ゲインに対する最高税率は23%になります。

 

逆にロスが多い場合(純キャピタル・ロス)は他の所得との相殺はできませんが、もしも前3年内にキャピタル・ゲインがあればそのゲインと相殺できます。

 

このようなみなしルール(相続時点に時価で処分したとするルール)には例外があり、もしも配偶者が相続財産を引き継ぐ場合には、その財産の取得価額で引き継ぐことが可能です。この場合にはキャピタル・ゲインは発生しません。

 

もちろん配偶者は時価で引き継ぐことも可能です。例えば、配偶者が過去から引き継いだキャピタル・ロスがある場合に、このような選択を行うことが考えられます。

 

もう一つの例外は居住用家屋です。納税者が主たる居住用家屋としていた住居のキャピタル・ゲインは非課税とされます。被相続人が亡くなると、法律によっても遺言でも、相続人に財産が分配されるまで、いったんは遺産財団が相続財産を保有しているものとされます。

 

被相続人のみなし売却価額は、遺産財団のみなし取得価額となります。財団はしばしば相続財産を売却して、相続人への現金配当を可能にします。

 

従って、遺産財団のみなし取得価額と、その財産が最終的に外部の第三者に売却された場合の最終売却価額との間で、キャピタル・ゲインやロスが発生することがあります。ゲインは遺産財団の所得として、遺産財団が保有している金融資産から生じた利子や配当があれば、それらと合わせて、所得税の確定申告をしなければなりません。

 

遺産財団の申告時期は相続開始から1年とされており、すべての財産が相続人に分配されるまで、毎年確定申告しなければなりません。

 

通常は遺産財団の受託者がカナダ税務当局(CRA)から、「Clearance Certificate」を入手します。Clearance Certificateは、すべての税金が支払われたことを証明する証書です。

 

Certificateが入手できない場合、受託者は被相続人の過去の未払い税金についても負担しなければなりません。つまり、相続財産が最終的に分配されるには、Certificateが入手されていなければなりません。通常、この手続き終了までに2〜3年かかります。

相続財産の分配までに必要な3つの税務手順とは?

ここまでの説明をまとめると、相続財産が分配されるまでには、3つの税務手順が必要になります。

 

①被相続人の確定申告

②遺産財団の確定申告

③受託者がClearance Certificateを入手すること

 

この他に、法律上の手続きとして、受託者が裁判所からプロベート手続きを受けなければなりません。

 

相続した資産の種類によっては、プロベートの手続きが不要となることもあります。例えば、ジョイント・タイトルあるいはジョイント・テナンシーと呼ばれる形式で銀行預金や不動産を保有している場合には、一方の名義人が死去した場合、遺産財団の管理下となることなしに、直接に他方の名義人の保有となります。

 

ここまで触れてきたように、日本では贈与税の対象となる可能性がありますので、その点については注意が必要です。

 

遺産財団の受託者は裁判所に検認手続交付書を申請し、前述した費用を支払って検認手続きを受けなければなりません。

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    本連載は、2014年9月18日刊行の書籍『海外資産の相続』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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    永峰潤・三島浩光

    幻冬舎メディアコンサルティング

    金融商品や不動産など、海外資産の相続は、手続きが面倒なため、家族の誰も欲しがらないお荷物になってしまうことが多い。ただでさえ複雑な日本の相続税に、国や地域によって異なる税制が絡んでくるため、その処理にも煩わされ…

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