自分の想いを残す「遺言」は時に、その実行に不安が残る場合があります。遺言の内容がきちんと実行されるための方法の一つである「遺言信託」について見ていきます。

遺言内容の実現に不安があれば「遺言信託」も選択肢に

遺産相続において被相続人が書き残す「遺言」の存在は非常に重要です。ここでは、遺言を残す際の選択肢の一つになる「遺言信託」について解説します。


遺言信託とは、信託銀行に遺言書の作成の相談や遺言書保管の依頼をしたり、実際に相続が発生したときは、遺言執行者として遺言の実現などをフォローしてもらうサービスのことを指します。


財産目録の作成なども行ってくれますので、相続人に障害者や年の離れた幼い子どもがいるなど、遺言内容の実現に不安が残る場合に効果が望めます。

所有不動産が多ければ費用は膨れることも・・・

まずは、代表的な信託銀行と遺言信託の費用の目安を参考資料として図1にまとめてみましたので、ご覧ください。

 

ほとんどの銀行が行っているサービスですが、その料金設定相場はどこも、基本手数料として遺言作成に30万円前後かかります。さらに「遺言執行報酬」というものがついてきます。遺言執行報酬は、遺産の額(通常は相続税評価額)によって計算されます。ただし、遺言執行者である信託銀行の預かり資産については軽減されます。

 

次に、各銀行の遺言執行報酬の料率をまとめた図2をご覧ください。このように遺産の額によって遺言執行報酬の料率は変わってきます。

 


遺言執行報酬には、遺産の額による料率とは別に、司法書士や税理士等への報酬などの費用も加わります。最低報酬額は大体どこの銀行も100万円ほどですが、遺産の総額が高いほど、遺言執行報酬の額も上がるので、最低報酬額からさらに加算される方もいらっしゃいます。


また、遺言信託は一度支払えば完了するものではなく、サービスを開始してから実際に相続が開始するまで毎年遺言書の保管料がかかります。さらに、遺言内容を変更した際にも5万円以上の変更手数料がかかります。特に多くの不動産を所有する地主の場合、登記変更費用などが通常よりも多くかかるため、遺言執行報酬の別料金も高額になりますので、総額で数百万円に上る可能性も大いにあります。


実際のところ、不動産の名義変更くらいであれば、銀行でなくても司法書士に依頼することができます。わざわざ高いお金を払って遺言信託を利用するよりは、そちらのほうが、一件につき5万~10万円(目安)で済みますので、費用を大幅に節約することができます。

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    本連載は、2015年9月1日刊行の書籍『得する相続、損する相続』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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