不動産関連の専門家の知識が「実は不足している」背景

前回は、土地の相続税評価額が税理士によって「ブレる」理由を説明しました。今回は、不動産関連の専門家の現状を見ていきます。

専門家と称する人も不動産を知らない!?

前回紹介したような国税庁、税理士の不動産に関する知識不足の背景には、世の中全般が不動産を知らないという点があります。

 

筆者は銀行出身なので、ときどき金融機関から相続税や不動産に関するセミナーの講師を仰せつかります。その際に、聴衆のレベルを判断するためにいつも持ち出す基本的な例題があります。それは次のようなものです。

 

大都市郊外の住宅地域に隣接するAとBの土地があります(下記図表1参照)。A地の面積は40坪で、B地の面積はその倍の80坪あります。A地とB地は面積以外の条件は同じです。そこで質問です。A地の時価が坪50万円であるとした場合に、B地の坪単価はいくらになるでしょうか。

 

[図表1]同じ土地に隣接する土地の価格は?

 

もちろん答えは「坪50万円」ではありません。それでは面白くも何ともないでしょう。正解は「坪35万〜40万円」といったところとなります。

 

理由は、A地の総額が2000万円(40坪×50万円)、建物を入れても4000万円以下程度と、一般のサラリーマンにも手が届く総額で収まっているからこその「A地が坪50万円」の評価になるのです。

 

ところが、B地も坪50万円なら、土地の総額は4000万円、建物まで含めれば6000万円にもなります。この金額では、一般のサラリーマンにはとても手が出ません。加えて言えば、今どきマイホームに80坪もの土地は必要ありません。

 

もちろん、中には土地代に4000万円を出せる人もいるでしょう。しかし、そのような資産家はこの土地のような郊外ではなく、もっと便利な場所にある土地を買うはずです。

 

したがって、80坪もあるB地はこのままでは売れません。つまり、2分割することにより、土地代の総額を下げる必要があります。すると間口がそう広くないため、下記の図表2のように路地状敷地を作らねばならなくなります。

 

このような路地状敷地は街のあちこちで目にされると思います。結局この土地は、2分割を前提に、建売事業者が坪35万〜40万円ぐらいで買うことになるのです。

 

[図表2]路上地敷地

実務的な知識・実力も養われていないのが現状

このように、土地の坪単価には、その土地代の総額が密接に関係します。そのため一般的に、土地面積が広くなるにつれてその単価は下がっていきます。これは鑑定評価用語で「面大減価」と呼ばれるもので、土地評価に関する基本的な考え方です。

 

しかし、金融機関の人で、これらの問題を理解している人はほとんどいません。彼らにとって不動産は、融資の担保等として絶対に必要な知識のはずです。しかし、実務的な知識・実力は養われていないのが現実のようです。

 

金融マンだけではありません。同じく不動産知識が必要なはずの弁護士といった実務家、さらにはマスコミや学者・評論家等も同様です。確かに例外の人もいますが、極めて限られています。そして税理士・会計事務所職員、さらには税務署職員も不動産をまったくの不得手にしているのです。

本連載は、2014年2月27日刊行の書籍『相続税を減らす不動産相続の極意』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

森田 義男

森田税務会計事務所 代表

税理士・不動産鑑定士。
昭和23年埼玉県生まれ。昭和47年東京教育大学卒業。同年三井信託銀行入社。16年間の在籍中10年間にわたって不動産業務を担当。その後、同社を昭和63年退社。同年森田税務会計事務所を開設する。資産税(特に不動産の評価・分割)を得意分野とし、二十数年にわたり数多くの相続税対策、申告を手掛ける。主な著書に『はじめての不動産実務入門』(近代セールス社)、『新・間違いだらけの土地評価』(週刊住宅新聞社)、『公示価格の破綻│驚くべき鑑定評価の実態』(水曜社)、『新・嘆きの「固定資産税」物語』『新・怒りの「路線価」物語』(ともにダイヤモンド社)、『相続力』(BKC)等がある。

著者紹介

連載不動産相続を成功に導く「税理士」の選び方

相続税を減らす不動産相続の極意

相続税を減らす不動産相続の極意

森田 義男

幻冬舎メディアコンサルティング

相続税対策の成否は「土地の相続税評価をいかに行うか」にかかっています。しかし、専門家であるはずの税理士や金融機関の担当者等が、まったくと言っていいほど不動産を知らない状況にあるとしたら…。 本書では二十数年にわ…

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