劇的な政権交代もあり、紆余曲折を経た財政運営によって、スリランカはいま国際収支の危機に立たされていると指摘されます。外貨準備金と国内のマネタリー・ベースの関係、為替介入と政策金利の操作などを中心に、近年のスリランカの経済財政状況を概観し、スリランカに課せられた問題を探ります。

多額の対外債務と売られるルピー債

スリランカは現在、国際収支危機に差しかかっており、100ベーシスポイントの利上げで問題を解決できる状況ではないと懸念されます。驚くほど忍耐強かったルピー債の保有者も、本格的に売り始める状況が生まれています。 多額の対外債務を抱えているスリランカは、過去の財政リスクをもはや冒すことはできないと、これまでも度々警告されてきました。

 

外国人投資家が動揺し資金を引き上げ始めれば、問題解決がはるかに困難になります。スリランカは財政の浪費と金融緩和政策という最悪のサイクルを動かし始めてしまったのかもしれません。

 

ここで、フロンティア市場や第3世界の中央銀行が国際収支危機をどのように作り出すのかを見てみましょう。 2008/2009年危機に続いて起きた、2011/2012年危機がここでは良い例となります。 2011/2012年の危機は、中央銀行が最終的に実施した、信用融資による燃料助成金によって引き起こされました。

 

危機の原因は、おそらく財務省と電力省が燃料価格を調節しないと決定した2011年度予算にあります。その結果、経済の悪化と通貨の下落を招き、ラージャパクサ政権が失脚しました。しかし、財政面での失敗は、金融政策の更なる引き締めにより相殺することができます。

国内オペレーションが諸悪の根源

通貨危機とインフレーションは、金融政策(インフレターゲット)の中心となる、中央銀行の国内オペレーションによって引き起こされます。 つまり流動性供給(お金の発行)が諸悪の根源となります。

 

国際収支危機に至るには、いくつかの条件が必要で、信用力が高く、経済が順調でなければなりません。そのため、東アジアの順調な国々が通貨危機の犠牲になったのです。「流動性の罠」があり信用力が低ければ、通貨危機に陥ることなく、借りるか発行するかして多額の資金を投じることができます。

 

 ケインズ理論に基づく景気刺激策を行うこともできます。ケインズが自身の理論を一般理論と呼んだのは正確ではないでしょう。彼は信用力が低く流動性の罠に陥っている時にだけに適用できる、特別な理論と呼ぶべきでした。信用力があり超過支出が始まると、経済の安定を維持するために、利子率を上げ個人消費を制限しなければなりません。 そうしないと、固定相場制の国は通貨危機に陥ってしまいます。

 

IS-LMモデルの批判を含む、新重商主義理論が「経済学」として学生に教えられました。 国際貿易を行わない自給自足経済は存在しません。国内でお金が発行されると、国際収支にまで影響を与えます。 IS-LM-BPモデルやマンデル・フレミング・モデルは現実に近いといえるでしょう。
 

次回は不胎化と呼ばれる為替介入の手法についてご説明をします。

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    この連載は、GTACが提携するスリランカのメディア「ECHELON」2015年7月号に連載された「Sri Lanka Knocks Hard at BOP Crisis Door」を、翻訳・編集したものです。

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