アメリカ不動産における「ジョイント・テナンシー」とは?

前回に引き続き、アメリカで不動産を相続する際の注意点を見ていきましょう。今回は、日本にはない「ジョイント・テナンシー」という制度について説明します。

ジョイント・テナンシーならプロベート手続きが不要!?

前回までは相続に関するお話でしたが、ここからはその他の問題点について説明します。

 

アメリカでは銀行預金や不動産等を対象に、日本にはない合有所有権(Joint Tenancy)という制度が存在します。

 

Joint Tenancyは2人以上の個人(誰とでも可)が不動産を所有する形態で、各所有者はそれぞれ所有権を等分に持ちます。連載第10回で記述した夫婦合有所有権(Tenants by the Entirety)の場合は、夫婦の場合に限り登記できるタイトルです。この後の説明では、両方を合わせて「ジョイント・テナンシー」として表記します。

 

この聞き慣れないジョイント・テナンシーと、日本でも使われる共有の大きな違いについて説明しましょう。

 

例えば、兄弟3名で不動産を購入し共有名義にした場合、もし、長男が亡くなったときは長男の家族が相続権を持ちます。一方、ジョイント・テナンシーで登記されていれば、長男の持ち分は家族ではなく次男、三男に等分に移転します。その後、次男が亡くなれば、すべての所有権は三男のものになります。

 

このように、ジョイント・テナンシーの場合は誰に相続されるか検討する余地はなく、生き残っている方へ自動的に所有権が移転するため、プロベート手続きも不要となります。

日本人が利用する場合は「贈与税」の扱いに注意

この点だけに注目して、ハワイの不動産業者は「アメリカではプロベートを避けるために、一人の名義ではなくご夫婦の名義で登記するのが一般的ですよ」と勧めている方が多いようです。

 

「プロベートのこともよく分からないし、不動産業者が勧めるのであれば、それでお願いします」と軽い気持ちでジョイント・テナンシーを選択している投資家の方々がいらっしゃいますが、実は思わぬ「落とし穴」があります。

 

アメリカ市民権を持つ夫婦の場合、配偶者への贈与及び相続に関しては制限がありません。つまり生前中に100万ドル贈与しても、相続財産を1000万ドル残しても配偶者が受け取る場合、税金はかかりません。

 

従って、夫だけがお金を出して100万ドルの不動産を購入しジョイント・テナンシーで登記した場合、50万ドルを妻に贈与したことになりますが、贈与税はかからないことになります。

 

一方、日本人がハワイで1億円の不動産を購入し、夫だけが資金負担をしてジョイント・テナンシーでの所有とした場合は、配偶者への贈与には金額の制限がありますので、日本でもアメリカでも5000万円が贈与されたと見なされ、贈与税が課されます(最近、このようなジョイント・テナンシーに対する日本の税務上の取り扱いを肯定する判例も現れました)。

 

ハワイで不動産を手に入れ「ジョイント・テナンシーにしたから、相続の手続きは楽になる」と安心していたら、いきなり税務署に贈与税の申告漏れを指摘され、多額の税金を支払うよう求められることもあり得ます。

 

実際にここ数年、「夫婦の名義でハワイの不動産を購入したら贈与税の指摘をされたので何とかなりませんか」と相談に来られる人が増えています。

 

なお、不動産同様、銀行口座のジョイント・アカウントについても同様の問題が生じる可能性があります。

本連載は、2014年9月18日刊行の書籍『海外資産の相続』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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永峰・三島会計事務所  パートナー

公認会計士・税理士。 東京大学文学部西洋史学科卒業。米国ペンシルヴァニア大学ウォートンスクール卒業(MBA)。等松青木監査法人(現監査法人 トーマツ)、バンカーズ・トラスト銀行(現ドイツ銀行)を経て、現在、永峰・三島会計事務所パートナー。

著者紹介

永峰・三島会計事務所 パートナー

税理士。
中央大学大学院商学研究科修了。BDO三優監査法人税務部門を経て、現在、永峰・三島会計事務所パートナー。

著者紹介

海外資産の相続

海外資産の相続

永峰潤・三島浩光

幻冬舎メディアコンサルティング

金融商品や不動産など、海外資産の相続は、手続きが面倒なため、家族の誰も欲しがらないお荷物になってしまうことが多い。ただでさえ複雑な日本の相続税に、国や地域によって異なる税制が絡んでくるため、その処理にも煩わされ…

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