前回に引き続き、「生前贈与」を活用した相続対策について見ていきましょう。今回は、「生前贈与」を効率的に活用するための基本戦略をご紹介します。

なるべく早く、多人数に対して贈与を始める

贈与による相続税節税にも、もちろん押さえておくべきポイントがあります。効率的に節税するためには、次の4つの基本的な戦略を頭に置いてください。

 

●毎年贈与と申告を実行する

●早めに実行する

●なるべく多人数に贈与する

●収入の伴う財産(賃貸用不動産など)を贈与するとメリットが多い

 

相続に対して税金がかかってくるのと同じく、贈与に対しても贈与税が課税されます。この贈与税は、相続税に比べると基礎控除額が小さく、税率も高く設定されています。

 

ただ、相続は一生に一度きりですが、贈与は毎年行えます。ですから1年あたりの贈与額を小さめに抑えて長期にわたり毎年行うことで、非課税、もしくは少額の課税で財産を移していくことができるのです。

 

非課税枠は贈与を受ける人ごとに設定されていますから、受贈者が多いほど、贈与税の総額は低く抑えられます。こういったことから、なるべく早く、なるべく多人数に対して贈与を始めることで、相続税を節税する効果が高まるのです。

相続開始3年以内の贈与は、相続財産となる点に注意

気をつけたいのが、相続開始3年以内の贈与については、相続財産とみなされることです。前回ご紹介したGさんのケースでも、90歳で亡くなる直前まで贈与を続けていましたが、88歳以降の贈与については、相続財産とみなされました。

 

なお、お気づきの方もいると思いますが、本連載ではたびたび、「相続の際には、なるべく土地を分けない方がいい」とアドバイスしてきました。にもかかわらず、生前贈与では「なるべくたくさんの方に贈与するのがコツ」と語っています。

 

「矛盾しているのでは?」と思われるかもしれませんので、補足しておきます。土地を分けない方がいい、というのはその通りで、ひとかたまりとなっている土地(一筆の土地)を数人に分け与えることはおすすめできません。

 

例として挙げたGさんのケースでは、妻、息子、息子の配偶者、孫に土地を分け与えていますが、さらに相続を重ねていくと、最終的には妻や子ども、子どもの配偶者が相続した分は孫に集約されることになります。

 

相続計画を練る際には、このように先々を見越して、考えることが大切です。

本連載は、2014年3月20日刊行の書籍『家族と会社を守る「不動産」「自社株」の相続対策』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

家族と会社を守る 「不動産」「自社株」の相続対策

家族と会社を守る 「不動産」「自社株」の相続対策

貝原 富美子・澤田 美智

幻冬舎メディアコンサルティング

相続において、トラブルになりやすい二大財産である「不動産」と「自社株」。 税理士として長年、不動産・自社株の相続を専門的に解決してきた著者だからこそいえる、実際にあった事例を交えわかりやすく解決策を提示します…

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