相続対策として「養子制度」を活用する際の注意点とは?

「養子制度」の活用は相続対策として有効的ですが、注意すべき点が数多くあります。今回は、「養子制度」活用のリスクについて、筆者が経験した事例を交えながら見ていきましょう。

「養子縁組」が原因で資産を失うこともある

計算上は大きな節税効果が期待できる養子縁組ですが、現実はなかなか計算通りにはいきません。筆者が相談を受けたなかにも「相続税対策のために孫を養子にしたところ、逆に資産を失うことになった」という悲しいケースがありました。

 

相談にいらしたのは、代々農業を営んでいる地主の方でした。古くから持っていた広い田畑が、行政の方針もあって宅地化されていったため、相続税評価額が大きくなることを心配し、金融機関に相談をしたところアドバイザーを紹介されたとのこと。そこで、そのアドバイザーの方から、「中学生の孫に、毎年少しずつ土地を贈与する」という方法を提案されたそうです。

 

ところが大変不幸なことに、その孫が成人して事業に失敗、さらに他人の保証人になるなどしたため、借金を重ねる事態になりました。祖父や父親が状況を知ったときには、負債は大きくふくれあがっており、孫が自力で解決できる額ではありませんでした。

 

そうなると贈与された土地を負債の返済にあてなければなりません。土地は祖父との共有名義になっていたため、「孫名義の分だけを手放して解決」というわけにもいかず、結局は大きな面積の土地を失うことになってしまいました。

 

もちろんこんなことはそうそう起きませんが、「無視していいリスク」とはいえません。養子縁組をしたときは学生や未成年者だった孫も、やがては成長して社会人になります。祖父母にとって、法律上は「子」なので子としての権利や義務も生じます。

 

孫を養子にするのであれば、そういったことを考えた上で、「何歳になったときが最適か」「将来にわたって贈与された不動産を適切に管理する能力があるか」客観的に判断しながら進めてください。

 

相続税の節税だけに目を奪われていると、かえって大事な財産を失うことになりかねない、ということを意識しておく必要があります。

「節税だけ」が目的なら養子縁組はしないほうが良い

その他にも、孫を養子にする際には、次のようなことも頭に置いておくとよいでしょう。

 

子どもが複数いて、それぞれの家庭に孫がいる場合は、ひとつの家庭の孫だけを養子にすると、「不公平」と受け取られることがあります。不和の原因にならないよう、子どもたち全員とよく話し合ってください。

 

養子が幼い間は、両親や祖父母の意向に従ってくれますが、成人して社会人になると、自分の権利を自覚し主張するようになります。

 

養子というと一般的に孫を想定しますが、子どもの配偶者(婿・嫁)を養子にすることも検討してみるとよいでしょう。これにより夫婦間の財産が一方に片寄らないので、子どもや子どもの配偶者が被相続人となるとき、相続税の負担が軽くなるケースが多いのです。日本では、女性の方が蓄財する機会が少ないのですが、高齢になった妻に経済的な裏付けがあれば、老後の安心感につながります。長年家庭を守ってくれた「嫁」に、感謝の思いを表す意味でも、価値のある選択だと思います。

 

節税という面ばかりが強調されている養子縁組ですが、「それだけが目的ならおすすめできない」というのが私たちの実感です。

 

孫や、子どもの配偶者を養子にする際には、「どうしてもその養子の方にこの財産を渡してやりたい」と願う事情や思いを前提に考えるべきではないでしょうか。養子縁組を活用することで、その家族にとって「家族の絆」を確認する面でもメリットが生まれるのではないでしょうか。

本連載は、2014年3月20日刊行の書籍『家族と会社を守る「不動産」「自社株」の相続対策』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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連載家族と会社を守る「不動産」の正しい節税法と残し方

税理士法人さくら会計 所長

1970年に事務所を設立し、大阪・京都・兵庫を中心に活動。豊富な税務知識と遺産分割・事業承継等の専門知識をもとに、顧客の資産を総合的に分析し、それぞれに適した資産分割・活用の提案を行っている。

著者紹介

家族と会社を守る 「不動産」「自社株」の相続対策

家族と会社を守る 「不動産」「自社株」の相続対策

貝原 富美子・澤田 美智

幻冬舎メディアコンサルティング

相続において、トラブルになりやすい二大財産である「不動産」と「自社株」。 税理士として長年、不動産・自社株の相続を専門的に解決してきた著者だからこそいえる、実際にあった事例を交えわかりやすく解決策を提示します。…

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