開業して20年以上経つ医師は、将来の希望を叶えるために「リタイアへ向けた準備」をする必要があります。今回は、個人のリタイアの準備について見ていきます。

まずは生命保険など「現在の資産」を整理する

【相談時の状況】

埼玉県さいたま市 歯科医療法人理事長(開業30年目)Yさん 58歳

家族構成:妻(理事)43歳、子供(一般企業勤務)23歳

世帯年収:2500万円

資産:時価総額2億円

 

世帯年収が2500万円のYさん、税務調査で約75万円の追徴課税を受けて相談にいらっしゃいました。そのなかでお話を伺うと、リタイア後はマレーシアに移住して、奥様との共通の趣味であるゴルフ三昧の生活をしたいという夢をお持ちであることが分かりました。

 

Yさんはその時50代後半、リタイア後の収入は月額60万円を希望されていましたが、35万円しか用意できていない状況でした。さらに、奥様とは15歳離れていたため、現在の年金では65歳からの15年間しか受取期間がなく、将来的な不安もお持ちでした。

 

預貯金などは多額にありましたが、自分ではできるだけ使わずに奥様とお子様に残し、それ以外での収入を確保したいとの希望がありました。

 

Yさんへの提案は個人のリタイアの準備と、医院のリタイアの準備を同時に行うことでした。まず個人のリタイアの準備については、支出の見直しと個人的な借入(住宅ローンなど)の完済、リタイア後の収入の確保、現在の資産整理をご提案しました。

 

心配性でご家族思いのYさんでしたので生命保険はかなり加入されていました。ところが、加入されている生命保険は資産が約2億円あるYさんにとって全く必要のないものでした。そこでYさんと相談のうえ、貯蓄性の高い保険以外はすべて解約し、支払保険料を半分にしました。

不動産投資とPBの開設でリタイア後の収入源を確保

リタイア後の収入の確保については、大きく2つの提案をさせていただきました。

 

ひとつ目は70歳までに完済できるローンを組んで、収益用不動産に投資すること。ただしフルローンではなく、減価償却できない(経費計上できない部分)土地代の約30%は初期投資し、残りの70%はローンを組むことにします。これにはYさんの資産のうち、あまり活用されていない定期預金と生命保険の解約金の一部を充てることにしました。

 

連載第4回で述べたように、自己資金の額によって条件付きで金融機関の金利が下がるという優遇金利(1.95%→1.75%)を活用すれば、毎月の収支をプラスにできるためです。また、賃貸収入をリタイア後の不労収入のメインにすると同時に、本人のご希望で不動産ローンに付帯している「介護保険付き団信保険」もオプションで付けることにしました。

 

2つ目はリタイアまでにプライベートバンク口座を開設し、資産の大部分を一元管理してもらうこと。今まで自身で細かく資産管理していた煩わしさから解放されると共に、資産を切り崩さず運用益のみ使っていく――。そうすることで奥様とお子様に資産を残すこともできるので、希望に沿うご提案だと自信を持ってお伝えしました。

 

移住に向けては、マレーシアのロングステイに必要な「MM2HP(マレーシア・マイ・セカンドホーム・プログラム)」の夫婦での取得方法など、Yさん自身も個人的に情報収集し、すでに準備を進めていたので特に問題はありませんでした。

 

この話は次回に続きます。

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    本連載は、2015年8月4日刊行の書籍『開業医のための資産形成術』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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