米国不動産の相続における大問題「プロベート」を避ける方法

前回は、ハワイ不動産の「相続手続き」について説明しました。今回は、「遺産税」の概要やプロベート(遺産整理の手続き)を避ける方法を見ていきます。

「遺産税」の納税資金を用意しておくことも大切

相続の際の注意点については、ハワイであろうとアメリカ本土であろうと、相続財産に単独所有権(Severalty)や共有所有権(Tenants in Common)のように、被相続人の財産が誰に引き継がれるか特定できない不動産が含まれている場合、プロベートが最も大きな問題となります。

 

従って、アメリカで不動産を所有したり、銀行口座を持っている場合には、プロベートを避けるための対策をとっておくことが不可欠となります。

 

それからもう一つ、遺産税のために納税資金を用意しておくことも大切です。

 

日本では相続人に分配した相続財産に課税を行う相続税がありますが、アメリカでは被相続人の分配前の総遺産に対して課税する遺産税が存在します。日本では財産をもらった相続人それぞれが納税義務者であるのに対して、アメリカでは亡くなった人、被相続人が納税義務者です。

 

そのため、私はハワイの不動産をもらうわけではないので、ハワイの税金は関係ない、というわけにはいきません。もらう、もらわないにかかわらず、遺産税の支払いは発生します。

 

連邦の遺産税は金額に応じて税率の異なる超過累進率(2014年は18〜40%)により課税され、原則として亡くなった日から9カ月以内に申告及び納税を済ませる必要があります。

 

アメリカ市民権を持つ人、あるいはアメリカに住んでいる人の基礎控除額は2014年は534万ドルですので、ほとんどの人は納税義務は生じないでしょうが、日本に住んでいる日本人が亡くなった場合のその金額はたった6万ドルですので、ハワイの場合、小さなコンドミニアム一つ持っているだけで、遺産税の支払いの対象になります。

 

さらに、ハワイ州では2010年より遺産税が復活したため、その納税資金も準備しておかなければなりません。2013年のハワイ州の遺産税は10〜15.7%ですので、もし、最高税率の場合は、連邦とハワイ州の合計で55%以上になり、遺産の半分以上の納税資金が必要です。

 

また、日本の相続財産の評価は、原則、実際の取引価格より低めに評価されますが、アメリカの場合は亡くなった日の時価ですので、そのときの取引価格で評価します。仮に、トランプタワーの2ベッドルームのような、現在の評価額で3億円くらいの財産を持っている人が亡くなった場合、約1億4000万円以上の遺産税を9カ月後に支払う必要があります。

 

アメリカには日本と違って相続財産である不動産や株式そのものを税務署へ差し出す物納という制度がありません。つまり、遺産税は現金で全額納めなければならないのです。遺産である不動産を売却し、その資金を充てることもできますが、すぐに売れる保証もありません。

 

また、万が一プロベートになってしまった場合は、その期間中は財産を処分することはできませんので、アメリカの銀行口座に十分な預金がなければ、日本から納税資金を送金する必要も出てくるでしょう。

まずは日米の法務・税務が分かる専門家に相談する

まず、プロベートを避ける方法ですが、簡単なところでは、贈与税がかからないように持ち分に見合う金額を出資し、夫婦合有所有権(Tenants by the Entirety)や合有所有権(Joint Tenancy)で購入することです。

 

また日本ではなじみのない言葉ですが、トラスト(Trust)を設定し、その信託名義で不動産を所有することも、プロベートを避けるのには有効な方法です。

 

ただし、アメリカのトラストは日本とは比べものにならないほど発達していて、エステート・プランニングによく使われます。しかし、日本の信託法や税法の取り扱いとは異なることもあり、現地の弁護士や会計士だけの判断でトラストを設定するのは危険ですので、注意してください。

 

また、既に単独所有権(Severalty)や共有所有権(Tenants in Common)で登記されている人の中には、プロベートを避けるために、単独名義からジョイント・テナンシーや会社名義に変更することを考える人もいるでしょう。

 

しかし、贈与税や譲渡所得税を指摘されますので、安易に名義を書き換えないでください。このようなケースの場合でも、一昨年よりハワイ州では権利証書(Deed)に一定の条件を加え登記することにより、プロベートを避ける方法も認められましたので、この方法の検討をお勧めします。

 

また、銀行口座も一人の名義になっている人はプロベートの対象になりますので、不動産同様、いきなりジョイント・アカウントに変更するのではなく、「亡くなった場合は誰々に名義を変更します」と条件をつけるような契約をするなど、対策をとっておくことが不可欠となります。いずれにしても、一度、日米の法務・税務が分かる専門家に相談することをお勧めします。

 

一方、プロベートは避けられても、不動産を所有している場合、遺産税は基本的にはどのような所有形態でもかかりますので、米ドルでの納税資金を用意しておくことが必要となります。アメリカの銀行預金の他、その他金融資産で換金性のある商品の購入も一つの選択肢です。

 

なお、預金口座は単独名義ではプロベートの対象にはなりますが、アメリカでの遺産税の対象にはなりませんので、納税資金の備えとしては適しているでしょう。

本連載は、2014年9月18日刊行の書籍『海外資産の相続』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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永峰・三島会計事務所  パートナー

公認会計士・税理士。 東京大学文学部西洋史学科卒業。米国ペンシルヴァニア大学ウォートンスクール卒業(MBA)。等松青木監査法人(現監査法人 トーマツ)、バンカーズ・トラスト銀行(現ドイツ銀行)を経て、現在、永峰・三島会計事務所パートナー。

著者紹介

永峰・三島会計事務所 パートナー

税理士。
中央大学大学院商学研究科修了。BDO三優監査法人税務部門を経て、現在、永峰・三島会計事務所パートナー。

著者紹介

海外資産の相続

海外資産の相続

永峰潤・三島浩光

幻冬舎メディアコンサルティング

金融商品や不動産など、海外資産の相続は、手続きが面倒なため、家族の誰も欲しがらないお荷物になってしまうことが多い。ただでさえ複雑な日本の相続税に、国や地域によって異なる税制が絡んでくるため、その処理にも煩わされ…

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