事業環境により「材料のまとめ買い」の是非も変わってくる理由

会社の利益を増やすには、まず会計を知ることが大切です。本連載は、2015年12月に刊行された公認会計士・吉川武文氏の著書、『技術屋が書いた会計の本』(秀和システム)の中から一部を抜粋し、会計の基礎知識をわかりやすく解説します。

 

「使いもしない材料が工場に山積みになっているという状況は、カイゼン前の描写として典型的なものだ。本当に材料のまとめ買いをしてよいものなのだろうか?」

 

坂本:はは、確かに使いもしない材料が山積みになっていたら困るだろうね。でも使う材料なら、山積みになっていても悪いとは限らないんじゃない?

 

高杉:それはどういうことでしょう?

 

坂本:最近の当社の製造原価の内訳を見てごらん。

 

高杉:材料費が突出していますね。

 

坂本:80%――90%に達するケースも少なくない。これに対して労務費は10%以下だ(図2)。以前は労務費の比率がもっと高かったから(図1)、労務費の節減が最優先されていたんだ。すなわち作り方に合わせて材料を買っていた。でもこれだけ材料費が突出してくると、考え方を変えなければいけないと思う。つまり買い方に合わせて作るべきケースもあるってことだ。

 

[図1]以前の製造原価の構成

[図2]近年の製造原価の構成

 

高杉:でも、まとめ買いなどしてよいのでしょうか? 生産技術の教科書を見ると「まとめ買いは悪いことだ」とあちこちに書いてあります。

 

坂本:よいも悪いもないよ。事業の状況に合わせて有利か/不利かを考え、先日検討した5つの要因を比較して結論を出すだけさ。たとえば「毎日少しずつ発注している材料を月1回のまとめ発注に変更すれば、運賃分の値引きをしましょう」という提案があったとする。もし支払いが月末締め翌月払いなら、在庫金利はまったく変わらない。こんな時はまとめ買いを検討する価値があるのではないかな。

 

高杉:やはり「ゼロ在庫にしろ!」では実際の行動目標にならないのですね。状況に応じてもっときめ細かい対応が必要だと。

 

坂本:そう、気合いは大切だけど、気合いだけでは戦えない。「ゼロ在庫」と口では言いながら、期末日だけのつじつま合わせをしていたのでは何の意味もない。守れる目標を定め、それをきちんと守るのが経営の原則だ。

 

 まとめ  


事業環境が変われば、持つべき在庫の在り方も当然に変わる。 

イラスト(登場人物):土屋 巌

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連載会社のコスト削減・利益向上を目指す「会計入門」

横河ソリューションサービス株式会社 公認会計士

東京工業大学工学部修士。約20年間エンジニアとして技術革新やコストダウンで成果を挙げ、三菱化学プレジデント表彰等を受賞、特許出願多数。その過程で製造業の原価管理について徹底研究した後、監査法人トーマツにて財務監査や内部統制監査にも従事した異色の経歴を有す。
技術と会計を融合した新しい視点に立ち、製造業の抜本的な競争力回復に資する設備投資、コストマネージメント、在庫管理、研究開発の管理などの分野でコンサルティングやセミナーを実施するとともに、会計士有志とプロジェクトを組み、経営判断に真に役立つ会計のあるべき形について提案を行っている。

著者紹介

技術屋が書いた会計の本

技術屋が書いた会計の本

吉川 武文

秀和システム

製造現場の技術者は、開発もそっちのけで日々コストダウンに取り組んでいます。しかし、会計の知識がなければ努力の成果が目に見えず、コストダウンも迷走します。 本書は、製造業の技術者向けに、会社の利益を増やす会計の知…

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