管理会計上の「電子棚卸」を毎日やるべき理由とは?

会社の利益を増やすには、まず会計を知ることが大切です。本連載は、2015年12月に刊行された公認会計士・吉川武文氏の著書、『技術屋が書いた会計の本』(秀和システム)の中から一部を抜粋し、会計の基礎知識をわかりやすく解説します。

 

「棚卸は紙と鉛筆でやるのだと聞いた。でも今時、紙と鉛筆でやる作業って珍しいと思う。情報機器が発達した今日、なんでこんな古めかしい作業が残っているのだろう?」

 

 

吉田:今日の財務会計の基礎ができたのは、おおむね100年前だったと言われている。今では考えられないような様々な制約が100年前にはあったんだ。

 

高杉:100年前って凄いですね。当然パソコンなんかなかったわけですから。

 

吉田:パソコンどころか電卓もなかった(電卓の登場は1964年)。だからすべての在庫管理は紙と鉛筆でやっていた。当然、棚卸も同じで、紙と鉛筆を持った担当者が現場を走り回って在庫を手で数えていたんだ。

 

高杉:でも今では在庫管理システムにデータが入力されているのですから、現場で数える必要なんかないように思います。

 

吉田:まあ、入力ミスや紛失、盗難なんかもあるから、実地で製品を数えるという作業をすっかり止めてしまうわけにもいかないのさ。これを「実地棚卸」と呼ぶ。

 

高杉:在庫回転期間を期末日在庫で計算するのも、実地棚卸の慣行が前提だからですね。

 

吉田:そうだね。それに対してシステム上で在庫の在り高をチェックする方法を「電子棚卸」と呼ぶ。電子棚卸はボタン1つでできるから毎日だって簡単だ。本気で在庫金利の管理をするなら、管理会計上は電子棚卸を毎日やるべきだろう。そして期間全体での平均在庫をしっかり管理しなければならない(図1)。

 

[図1]在庫管理のあるべき姿

 

高杉:毎日棚卸をしていれば、「在庫を減らすためだ~」と言って期末日だけ大騒ぎする必要はなくなりますね。

 

吉田:期末に在庫の評価損を多めに出しておいて、翌期首に評価を戻すという操作もあるようだ。恐らく期末日だけ騒ぎになるのは、あるべき在庫水準が日頃からきちんと議論されていないからだ。現実の在庫水準と、見せかけの在庫水準が大きく乖離しているから急場しのぎするのだろう。本来はきちんと在庫費用を計算し、トレードオフになっている他の条件と比較して正しい在庫水準を決めなければならない。

 

高杉:「ゼロ在庫」というスローガンがありますけど、私達は利益を出すために頑張るのであって、ゼロ在庫そのものが事業の目的じゃありません!

 

 まとめ  
管理会計では、電子棚卸を毎日やる。 

イラスト(登場人物):土屋 巌

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連載会社のコスト削減・利益向上を目指す「会計入門」

横河ソリューションサービス株式会社 公認会計士

東京工業大学工学部修士。約20年間エンジニアとして技術革新やコストダウンで成果を挙げ、三菱化学プレジデント表彰等を受賞、特許出願多数。その過程で製造業の原価管理について徹底研究した後、監査法人トーマツにて財務監査や内部統制監査にも従事した異色の経歴を有す。
技術と会計を融合した新しい視点に立ち、製造業の抜本的な競争力回復に資する設備投資、コストマネージメント、在庫管理、研究開発の管理などの分野でコンサルティングやセミナーを実施するとともに、会計士有志とプロジェクトを組み、経営判断に真に役立つ会計のあるべき形について提案を行っている。

著者紹介

技術屋が書いた会計の本

技術屋が書いた会計の本

吉川 武文

秀和システム

製造現場の技術者は、開発もそっちのけで日々コストダウンに取り組んでいます。しかし、会計の知識がなければ努力の成果が目に見えず、コストダウンも迷走します。 本書は、製造業の技術者向けに、会社の利益を増やす会計の知…

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