「在庫管理」の慣習が引き起こす棚卸にまつわる問題点とは?

会社の利益を増やすには、まず会計を知ることが大切です。本連載は、2015年12月に刊行された公認会計士・吉川武文氏の著書、『技術屋が書いた会計の本』(秀和システム)の中から一部を抜粋し、会計の基礎知識をわかりやすく解説します。

 

「棚卸をしろ、在庫回転期間を改善しろ、在庫金利も減らせ、いや弾が足りない・・・、現場は対応に追われて混乱していた。活動がバラバラで目標を見失っているようだ」

 

 

吉田:現場では大変だったみたいだね。

 

高杉:まるで戦場のようでした。生産の停止のための人の手配、停止期間中の余剰人員の処置、棚卸作業の準備、製品の移動・・・。

 

吉田:製品はどこに移動していたかな?

 

高杉:値引きして代理店さんに引き取ってもらっているようです。期首には逆に弾不足になるので、少し割高で買い戻すこともあると聞きました。現場の混乱は期末日の前後3日、全体で1週間くらいにはなるようです。

 

吉田:実はそれを心配していたんだ。今、本社ではさらなる在庫削減を計画していて、その徹底のために毎月実地棚卸をしようという話が出ている。

 

高杉:それでは1か月(30日)のうちの7日も混乱することになります。今さらなのですが、そもそも何で在庫を減らさなければいけないのでしょうか?いろいろ説明を聞いたのですが、やっぱり腑に落ちません。

 

吉田:なるほど。それでどんなことが腑に落ちないんだい?

 

高杉:たとえば、在庫があると保管費が発生すると言われます。在庫がお金の塊だから金利を発生させるという話もあります。金利は先般学んだWACCだと思うのですが、棚卸日だけ在庫を減らしても意味がないと思います(図1)。本当は期間全体の在庫を減らさなければいけないのではないでしょうか(図2)。

 

[図1]棚卸日の在庫高

 

[図2]期間全体の在庫高

 

吉田:まったくその通りだね。期間全体の在庫を減らさなければ、在庫費用は節減できない。それなのに棚卸日だけ騒ぎになるのは、在庫水準を判断する「在庫回転期間」を棚卸日(つまり期末日)の在庫高で計算するという財務会計の慣行があるからだ。

 

高杉:なぜ、棚卸日の在庫高で計算するのですか?

 

吉田:この計算慣行ができた100年前には、それしかやりようがなかったからだよ。

 

高杉:在庫管理にはとても深い問題がありそうですね。

 

 まとめ  
在庫回転期間を期末日在庫で計算するのは、100年前にできた計算慣行。 

イラスト(登場人物):土屋 巌

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連載会社のコスト削減・利益向上を目指す「会計入門」

横河ソリューションサービス株式会社 公認会計士

東京工業大学工学部修士。約20年間エンジニアとして技術革新やコストダウンで成果を挙げ、三菱化学プレジデント表彰等を受賞、特許出願多数。その過程で製造業の原価管理について徹底研究した後、監査法人トーマツにて財務監査や内部統制監査にも従事した異色の経歴を有す。
技術と会計を融合した新しい視点に立ち、製造業の抜本的な競争力回復に資する設備投資、コストマネージメント、在庫管理、研究開発の管理などの分野でコンサルティングやセミナーを実施するとともに、会計士有志とプロジェクトを組み、経営判断に真に役立つ会計のあるべき形について提案を行っている。

著者紹介

技術屋が書いた会計の本

技術屋が書いた会計の本

吉川 武文

秀和システム

製造現場の技術者は、開発もそっちのけで日々コストダウンに取り組んでいます。しかし、会計の知識がなければ努力の成果が目に見えず、コストダウンも迷走します。 本書は、製造業の技術者向けに、会社の利益を増やす会計の知…

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