今回は、アパート事業の展開をよりスムーズにする「資産管理会社(法人)」の設立方法について見ていきます。

資産管理会社を利用する最大のメリットは「税率」

物件を取得する際の仕組み構築において、重要な役割を果たすのが資産管理会社です。資産管理会社を設立し、その会社を利用することで、アパート事業の展開をよりスムーズに行うことができます。そのため、資産管理会社の設立および運用に関するノウハウは重要です。

 

資産管理会社を利用するメリットについては、ひとえに税率の問題です。本業での所得が高額な方(限界税率まで達している)の場合は、基本的には資産を管理するための法人設立をお勧めします。

 

一方で、資産管理会社を設立・運用するにあたっては、デメリットもあります。それは、主にコスト面に関することです。

 

まず、設立に費用がかかります。株式会社を設立する場合にかかる費用は、30万円程度です。また、運用においてもランニングコストがかかります。具体的には、税理士への報酬(決算費用)が50万円前後、均等割り(赤字でもかかる)といわれる税金が7万円です。年間に50~60万円が余分な費用となるため、そのコスト以上の税効果が発揮できる方にのみ有効な方法となります。

 

次に、アパート事業における資産管理会社には、3つの利用形態があります。それぞれのメリット・デメリットを理解し、自分に合った方法で、法人を設立・運営しましょう。基本的には取り組みの難易度と税効果は比例します。

 

なお、法人の種類としては、株式会社が主となります。最近は、米国のLLCに似た合同会社という簡易な形態の法人も認められています。それぞれにメリット・デメリットがありますので、専門家と協議し、必要に応じて最適な形態の法人を設立してください。

 

3つの利用形態におけるメリット・デメリットとは?

①設立した法人を使って物件を取得する(アパートの名義は法人)

 

この方法はとてもシンプルです。設立した資産管理会社名義で金融機関からお金を借りて、アパートを購入・経営していきます。

 

報酬は、役員報酬というかたちで、あなた、もしくは奥様の、本業の所得の低いほうが取得するか、会社の利益(内部留保)としてそのままプールしていく方法です。

 

この方法のメリットは、①~③のなかで税効果が最も高いことです。個人所得がかなりの額に達していて、その税率が法人税よりも高い場合に効果を発揮します。デメリットは、金融機関が法人名義への融資を認めない場合があるため、取り組みの難易度が高い点です。

 

②設立した法人にサブリースを行う(アパートの名義は個人)

 

個人が取得したアパートを設立した資産管理会社に一括貸しをし、その賃貸料を個人が受け取るという形式です。金融機関で法人での不動産取得を認めてもらえず、やむを得ず個人で取得した場合にとるスキームです。①よりも手軽に行えるメリットがあります。個人で取得する利益の一部を法人に移転させ、税金の額を圧縮するのが目的です。

 

入居者からの家賃は、一度、管理法人に入ります。そこから再び賃借料として個人に払われるので「サブリース方式」と呼ばれています。

 

この方法では、どの程度のサブリース料を得られるかがポイントになります。一般的に、そのパーセンテージは20%前後といわれています。これに関しては、専門家である税理士に相談してください。ただし、税効果は①よりも低くなります。

 

③設立した法人を管理会社として機能させる(アパートの名義は個人)

 

設立した法人にアパートの管理を委託する形式です。管理の委託というかたちのため、②よりもさらに簡単に取り組めるメリットがあります。この方式もサブリース方式と同様、利益の一部を個人から法人へ移転するのが目的です。

 

しかし、この場合には、その設立した会社がきちんと管理業務を行っていることが条件となります。かたちだけの管理委託は認められません。

 

具体的には、入居者からの家賃集金業務をその法人に委託し、実際に行う必要があります。形式だけの場合は、税務署から否認される可能性があります。また、税効果は①~③のなかでは一番低くなります。

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    本連載は、2012年6月27日刊行の書籍『年収1000万円から始める「アパート事業」による資産形成入門 [改訂版] 』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。
    本書は情報の提供及び学習を主な目的としたものであり、著者独自の調査に基づいて執筆されています。実際の投資の成功を保証するものではなく、本書を用いた運用は必ずご自身の責任と判断によって行ってください。本書の内容に関して運用した結果については、著者及び幻冬舎グループはいかなる責任も負いかねます。

    年収1000万円から始める  「アパート事業」による 資産形成入門

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    大谷 義武

    幻冬舎メディアコンサルティング

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