米国での相続トラブルに備える「リビングトラスト」とは?

前回は、トヨタ自動車の米国拠点が移転し、大変革が起こる街「プレイノ」の不動産市況について説明しました。今回は、米国不動産の相続時におけるトラブルを防ぐための「リビングトラスト」について見ていきます。

検認裁判(プロベート)になれば手間も時間もかかる

信託というのは文字通り「信じて託する」という意味です。日本の銀行や証券会社で「投資信託」という金融商品が販売されていますが、まさにここに用いられている信託と同じ意味を持っています。

 

さて、ここでは米国で「living trust(リビングトラスト)」と称されている信託について説明しておきましょう。リビングというのはそこに住んでいる、生きていることを意味し、トラストは信頼、信用を意味しています。これを日本語に訳すと「生前信託」です。つまり生きている間に開設する信託口座のことで、自分が亡くなった後の財産管理に用いられます。

 

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日本人で海外不動産を保有している人、もしくはこれから海外不動産を保有しようと考えている人は、必ずこのリビングトラストを利用することをお勧めします。

 

例えば、日本人であるAさんがハワイでコンドミニアムを買い、誰かに貸していたとしましょう。ところがAさんがある日突然、日本で亡くなられました。そうすると、ハワイのコンドミニアムはどうなると思いますか。もちろん、最終的には奥さんや子どもに相続されます。ただ、それまでに最低1~2年はかかります。持ち主が亡くなった場合、その子どもや妻である相続人が米国の検認裁判所まで出向き、私は妻です、あるいは子どもですということを、証明しなければならないからです。

 

これを「検認裁判(プロベート)」といいます。検認裁判とは、裁判所が相続手続きを実施する「管財人」を任命し、その人が裁判所の監督の下、財産や相続人の調査・確定作業、米国財産にかかる負債や費用の支払い、米国遺産税などの申告などを行います。すべての項目が解決した後、裁判所から相続財産の分配許可が出され、相続人が全財産を受け取ることができるというプロセスです。

 

この手続きが結構、手間も時間もかかって、ややこしいのです。1回では終わりませんから、必要が生じるたびにハワイまで行かなければなりません。当然、旅費などのお金もかかります。

 

しかもその間、Aさんが保有していた不動産は裁判所の管理の下、完全に凍結されます。売りたくても売れません。まごまごしているうちに、相続税を支払わなければならない期日が到来してしまう恐れがあります。現金が十分手元にあれば、それで相続税の対応をすればよいのですが、なかには不動産を売却して対応しようと考えている人もいるでしょう。しかし、米国不動産の場合、このような形で裁判所の管理下に置かれてしまったら、売却することもままならなくなります。

検認裁判の手続きを簡素化できる「リビングトラスト」

検認裁判の主な留意点は、次の通りです。


(1)資産内容の一般告知
(2)プロベート期間中の資産凍結
(3)平均1~2年半以上、多くの場合は数年を必要とする
(4)資産のある州ごとに同様のプロベートを経る
(5)弁護士、会計士、不動産鑑定士、裁判所への多額の費用

 

このように手続きに手間がかかり、資産内容が広く公開されてしまううえ、資産凍結が行われてしまいます。それも、短期間ならまだしも、手続きを完了するのに長期間かかるうえ、複数の州に資産が分散されていたりしたら、同じ手続きを複数の州で行わなければなりません。

 

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何よりも、この手続きにかかるコストが莫大です。個人で、かつ何も知らない人がいきなり米国の不動産を相続しても、この手続きをクリアすること自体が、非常に高いハードルです。しかも、永遠に生きられる人はいませんから、どこかの段階で、この手続きが発生してきます。このような、煩雑かつ高コストの手続きをせずに済むのが、リビングトラストの最大のメリットです。

本連載は、2014年10月3日刊行の書籍『本命 米国不動産投資』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。
本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は著者の個人的な見解を示したものであり、著者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、出版社、著者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

リーバンズコーポレーション 会長

1953年生まれ。米国在住35年。カリフォルニア州を拠点に保険・証券・不動産・ファイナンシャルアドバイザーとしてキャリアを積み、2002年、ロサンゼルス郊外のトーランスにリーバンズコーポレーションを設立。豊富な不動産の販売・仲介・管理実績を持ち、米国居住者以外の信託活用法など、不動産保有にかかる関連アドバイスにも強みがある。

著者紹介

連載米国不動産投資が「本命」といえる理由

本命 米国不動産投資

本命 米国不動産投資

ニック 市丸

幻冬舎メディアコンサルティング

成熟経済であり、人口も減少フェーズに入った日本では、国内市場のパイは縮小を続け、不動産マーケットの未来も決して明るくはない。さらに1000兆円を超える財政赤字、超高齢化社会における社会保障費の増大、特に富裕層をター…

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