前回は、物件の「過去の売却事例」を知り過ぎてしまうことによる弊害を紹介しました。今回は、物件へ過度な愛着を持たないほうが良い理由と、売却目標を設定することの重要性について見ていきます。

不動産投資の成功を妨げる物件への「愛着」

物件を長く所有するうちに愛着が湧いて、感情的に「売りたくない!」と考えている人もいます。「売却を見据えて買いなさい!」とはよく言われることですが、それでも売却できずに持ち続けている人が多いのは、この感情による部分も大きいのです。

 

株やファンドといった有価証券と異なり、不動産投資の対象になるのは、実際に人が住んでいる建物です。売買が可能とはいえ、ネット証券のようにクリックひとつで売却することはできません。投資対象に形があるのですから、愛着が湧いてしまうというのも無理からぬことです。

 

しかし過度な「愛着」は、不動産投資の成功を妨げます。

 

なぜなら多くの物件は、買った金額よりも下げて売却することになるからです。現物があるからこそ、物件購入時から年数が経てば、その資産価値も下がっていくというのが不動産投資の大原則です。

 

基本的に、物件の価値は購入時が最高値で、後は下がっていくのが基本なのです。その認識に立って、冷静に売却を決断することが成功の秘訣です。

「売った後どうするのか」という視点が大切に

筆者のもとへは、売却の相談が多く寄せられます。そういったお客様にはまず、売却理由を聞くようにしています。

 

ご事情は様々です。「高く売れそうだから」「入居率が悪くなってきたから」「修繕にお金がかかりそうだから」など・・・。中には、知り合いの不動産オーナーが売却に成功してもうけた話を耳にして、なんとなく「売ろう!」と考える方もいらっしゃるようです。

 

そういった方は生半可な気持ちで売却に臨みますから、的確な売値を理解していません。売却に対する明確な行動指針もありません。そもそも自分の物件の状況・程度さえ把握していないこともあります。明確な売却目的を持たない場合、いざ売ろうとしても踏ん切りが付かないことが多くなります。

 

売却を決める際には、「売った後どうするのか」といった視点が大切です。売却によって前向きに投資ができる、もしくは円満に投資家生活に幕を引きたいなど・・・目的が明確な場合には、売却は成功しやすくなるはずです。

 

売却に向けて実際に動き出す前に、是非一度、ご自身のスタンスを見直し、目標設定をしていただきたいと思います。

本連載は、2015年10月26日刊行の書籍『万年赤字物件を驚異の高値で売る方法』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

万年赤字物件を 驚異の高値で売る方法

万年赤字物件を 驚異の高値で売る方法

新川 義忠

幻冬舎メディアコンサルティング

不動産投資ブームが過熱する中、多くのサラリーマン投資家が誕生しています。家賃収入で不労所得を得たい・・・皆、そんな夢を描いて収益不動産を購入するのですが、誰もが成功しているわけではありません。 そもそも、全国の…

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